りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

5/28(月)さん助ドッポ


・さん助「半分垢」
・さん助「五月幟
~仲入り~
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十九回「木更津海上決戦」


さん助師匠「半分垢」
実は5月の初めに手術を受けまして、とさん助師匠。
背中にできものがあって、それがこのところ大きくなってきたので切ることにした。
前にもそういうものができたことがあって、その時は近所の皮膚科でちょちょいと切ってもらったので、今回もその程度の考えていたのだが。
近所の皮膚科に行ったら「これはうちでは無理です。紹介状を書くので大病院に行ってください」。
それだけでもびびったのに、実際に大病院に行ってみたら、手術に耐えられるからだかどうかを検査されたり、麻酔を打つから麻酔医との面談があったりと思ってたよりずっとおおごと。

担当医はきれいな女医さんだったんだけど、できものの大きさや何かを調べる時に「動かないでください」と言われたのに、ちょっと触られただけで「ひゃっ!!」と変な声が出て体がびくっ!となってしまった。
「動くとデータがとれないので、動かないで」とまた注意され、動かない動かない…と思っていたのに、また「ひゃっ!!」。
その時女医さんに言われたのが「…まだ触ってません」。

…ぶわはははは。どんだけビビリやねん!
でも「うおっ!」と思ったのが、そのできもの名前が付いてて「粉瘤」と言うそうです、という言葉。
実はうちの次女ちゃんも粉瘤で手術をしたことがあるのだ。
小学一年生の時に、学童から学校へパートの先生が自転車の後ろに乗せて送ってくれたことがあったのだが、その時に足が車輪に巻き込まれてしまった。
血がどびゃーーっと出て足首のところを何針か縫うようなことになったのだが。
この縫ったところが、しばらくしてからぷくーっと腫れてきて、本人によれば痛くもなんともないらしいのだが、これはいったいなんなんだろうと心配になって大きな病院に行って調べてもらったら、「粉瘤」と診断されて切った方がいいと言うので手術したのだ。
やはり検査をして、全身麻酔をするから前の日から入院して次の日も様子見。しばらく通院して結構大変だった。
多分さん助師匠もそれと一緒だったんだろうな。

それから、実は前回のドッポが20回目でした、と。
それでお客さんに何かプレゼントしようと思ってビールを買ってきました。岡山のクラフトビールに「独歩」というのがありまして。
冷やしてあるけど、今飲まれると間違いなく「西海屋」で寝ちゃうと思うので、帰る時に配ります。

…おおおお、さっきから手に持ってるそれはなんだ?ビール?ビールなの?くれるの?ぬるくなるよ、そんな風に持ってたら、。くれるなら早くちょうだい!と思っていたのだー。ひゃっほいっ。(今すぐ飲ませろー)

そんな立ち話から、最近お相撲にはまってるというまくらから「半分垢」。
巨大なお相撲さんの小噺。
すごい巨大なお相撲さん同士の取り組み。二人が大きすぎて天気がいい日じゃないと雲に隠れちゃって上で何が行われてるか見えない…ってばかばかしい~。楽しい~。

3年の修行から戻ってきた力士の家に近所の人が訪ねてくる。
どんな様子だい?と尋ねられて、おかみさんがどんなに大きくなって帰ってきたか、大げさに話すんだけど、この大法螺がおかしい~。いちいち真に受けて驚く近所の若い人も楽しい。
それを聞いてた力士が「恥ずかしくて出ていけなかった」とおかみさんに小言を言う。
物事は「内に内に、小さく小さく」話したほうがいいのだ、とおかみさんにたとえ話をするのだが、それがちっともおかみさんい通じないのがおかしい。
さん助師匠の女の人ってなんか色気があってチャーミング。体をひゅっと引いて大げさに驚くしぐさがかわいい。
しかしあれだ。さん助師匠の説明下手が落語にも反映されていて、この力士の説明がおかみさんだけじゃなく我々にもイマイチ伝わってこないのはいかがなものか(笑)。

で、次に訪ねてきた近所の人に、おかみさんが今度は力士がどんなに小さいかを話すんだけど、いいわーこのおかみさん、楽しくて。
笑ったー。ばかばかしくて楽しい。「大安売り」よりこっちの方が断然面白いと思うんだけどなー。


さん助師匠「五月幟
ネタだしされてたこの噺。めったにやる人はいないらしい。
というのはサゲがイマイチ。
噺家っていうのはサゲを言ってお客さんがポカンとするとどうにも心持が悪い。だからサゲが通じにくいものはやられなくなってしまう。

この噺、私誰にも教わってません。
先代の柳枝師匠がやられていて、その音源があってそこからなんですが。なんたってほら私は、柳枝師匠のお弟子さんの栄枝師匠に「先代の噺、やっていいよ。どんどんやって」って許可をいただいてますから。(エヘン!)
でもやっぱりサゲがね…。なのでちょっと自分で作ってみました。これでお客様にお分かりいただけるかどうかを…。

そんなまくらから「五月幟」。
くまさんがおかみさんに文句を言われている。
「あたしは情けないよ。あんたが飲んでばかりいて家におあしがないから初節句だというのに坊に人形も買ってやれない」
そういわれたくまさん。「しょうがねぇじゃねぇか」「ないものはないんだから」とけろっとしている。
「それでね。今日おじさんが来たんだけど、坊に人形を買ってやりなって5円くれたんだよ。だけどこれはくまには渡しちゃいけないよ。くまに渡すと酒を買って全部使っちまうから。お前が使うんだよ。そういわれた。」
そう言われてくまさんは「そうなの?」
「そうだよ。おじさんが5円くれてね。でもこれはくまには渡しちゃいけないよ…」
「そうなの?」
何度も繰り返す会話。
で、おかみさんが人形を買いに行こうとすると、くまさんが「ああいう店は女が行くより男が行った方がいい。馬鹿にされて安いものを高く買わされるから」。
「でもお前に金を渡したら飲んできちゃうから」
「飲まないよ」
「飲むよ」
とうとうおかみさんが根負けしてお金を渡して人形を買ってきてもらうことに。

お金を持って外に出たくまさん。「いつもの俺ならこの金で酒を飲んじゃうところだけど今日は違うんだ。かわいい坊のためだからな。人形を買ってやろうじゃないか。ありがてぇなぁ」と独り言。
そこへ「あにぃー、こっちこっち」と近所の仲間から声がかかる。
今日は出かける用事があるから寄れないと言うのを「そんなこと言わずにあがってくれ」と言われ上がると今度は酒を注がれる。
今日は飲めないんだと言うくまさんに、仲間内のケンカが今おさまったところだから頼むから飲んでくれ、と言われ「じゃ一杯だけ」と飲むと、また注がれ…繰り返すうちにすっかりいい気分になり、懐に手をやると「あれ、金がある!」。
「じゃこの金で飲んでくれ」と仲間に差し出しいい気分で外へ出て、こいのぼりを見て「しまった!」と思いだす。

家に帰って、酔っ払ったくまさんをみて怒り狂うおかみさん。
くまさんは「飲んじゃった物はしょうがねぇじゃねぇか」と二階に上がって寝てしまう。
そこにお金をくれたおじさんがやってきて、おかみさんから話を聞いて、「あいつはほんとにしょうがないなぁ」と二階へ。
おじさんに責められるたびに、くまさんがそれをダジャレでかわすんだけど、面白いけどやっぱりなんか子どもとおかみさんがかわいそうだよー。だめだよーくまさんー。もやもや…。

そこへ近所の連中が訪ねてきて「家に帰ってさっきの話をしたらみんなかみさんに怒られた」「無理やり呼んで酒を飲ませて金まで払わせるなんて江戸っ子の面汚しと言われた」。
お金を返すといってもくまさんはきっと受け取らないだろうと思って、みんなで坊に人形を買ってきた、と。
そして買ってきた人形とのんべえのくまさんをかけた、わかりやすいサゲ。

うおおおーー。いいじゃないのーーー。
しかもあとでUNAさまのtwitterを見たら、人形を買ってくるところからはさん助師匠の創作なのだとか。
すばらしいっ!いいよっ!その調子!(←何様)


さん助師匠「西海屋騒動」第十九回「木更津海上決戦」
蝶兵衛の子分で旅に出ていた常五郎が帰ってくる。常五郎は、色ボケの蝶兵衛に嫌気がさして旅に出ていたらしい。
久しぶりに木更津に戻り出会った近所の人に「変わりはないか」と尋ね、江戸から来た義松という男が親方を殺し、子分たちが義松に寝返ったことを知らされる。
一方義松は常五郎に手紙を出し、仲間に入ればそれなりの地位につかせてやると告げているのだが、常五郎はのらりくらりと約束を先延ばしにして屋敷を訪ねてこない。
そうこうしているうちに、常五郎が手下を集め、義松を襲撃しようとしているという情報が入る。
そのことを三蔵に告げるが、そのほかの子分には知らせないでくれという義松。
義松に付いた子分の中に、常五郎の密偵をやってる者がいると考えているからだった。

5/14に屋敷を襲いに来るという情報を仕入れた義松は子分ともども屋敷を逃げ出す。
大勢の子分を連れて常五郎が屋敷に乗り込むと、中はもぬけの殻。さては裏切り者がいたか!と常五郎が話していると、逃げ遅れた爺の姿が。
殺せと憤る子分たちを制し事情を聞くと、義松たちは海岸へ逃げたという。
それを聞いて海岸へ向かう常五郎と子分。
殺されずにすんだ爺が「両方の間に入ってうまい汁を吸い続けてやる」と独り言を言っているところへ後ろから斬りつけた者が。振り返ってみるとそこには義松の姿が。
子分のうち誰かが怪しい動きをしていると思ってはいたが、お前だったのか、と。
命乞いをする爺に「お雨は犬のように死ぬのがお似合いだ」と言って、一思いには殺さずに親指を切り落としたり、右の耳を切り落としたり…(ひぃーーーもうほんとにサイテー義松ってー)。

そして海岸での決戦。
なんだけどこれがもうなにがなんだか。
急に用意をしたはずの常五郎の方は20隻。多勢に無勢で義松の方が劣勢かと思いきや、終盤になると今度は常五郎たちの後ろから義松の子分の船がどどーっとまわりこむ。
じゃ義松勝つのかなーと思っていると、なんかごにょごにょあって(←ちょっと捨てた)自分たちの乗ってる大船から小舟をすーーっと出してそこに義松、お静、三蔵の3人だけ乗って逃げていく…。
そんで追手がもう少しで小舟に手が届く…というところで、おしまい。
速記本もいきなりそこで終わってるらしい。

…んもーーーー。なんなのさ。
談洲楼燕枝、ただ海のシーンを書いてみたかっただけじゃないの?
いる?船の上での決戦?必要?屋敷でよくね?屋敷で戦えば勝てたんじゃね?
あーでも義松にしたところで親分がお誕生会で油断してるところを奇襲して親分になっただけだからチーム力はないのか。
そんでもって決戦の日までわかってたのに、義松準備不足じゃね?
小舟に移る時に義松が「いい夢見させてもらったぜ」って言うんだけど、はぁ?なにそれ?なにかっこつけてんの?

もう話が破綻しすぎていて、ぶうぶうーー。
って、話の内容にぶうぶう言うのが最近のトレンドになりつつあるな…西海屋騒動…。
さすが誰もやってないだけのことはある!
圓朝ものもたいがいだと思うけど、これに比べればずいぶんまとまってるね!

前回、息もたえだえだったさん助師匠、今回は元気をとりもどしているようでほっとした。
ほんとにデリケートなのね…噺家さんって。
まぁこんな噺と真剣に向き合ってたらブルーにもなるよね!