りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

7/23(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十一回「新右衛門と重右衛門」
~仲入り~
・さん助「代書屋」
・さん助「千両みかん」


さん助師匠 ご挨拶
埼玉県のなにかのフェス?で落語をやったというさん助師匠。
なんでも、フランスから来たコンクール受賞者(美しい女性二人)のクラシックコンサート、尺八の演奏など盛りだくさんのイベントでその中に落語と講談も入っていたらしい。
かなりの人数の出演者だったのだが、主催者側の手違いで楽屋が1つ。1部屋の中にそれだけの大勢が押し込められてあちらで歌、こちらで尺八の練習とカオス状態。
しかもここで着替えをしなければならず、あのフランス人のお嬢さん二人はいったい…と思っていると、全くなんのためらいもなくバーンと着替えをしていて、びっくり。
自分は着換えるとき隅の方でこそこそ着換えていたのに…。

そして落語は主催者から「この暑さですからお客様に涼をとっていただくという意味で”ちりとてちん”をお願いします」とリクエストされていた。
ちりとてちん」で涼をとれるのか?と思ったけど、わかりましたとやったのだが。
そのフランス人のお嬢さんたち、落語を見たことがないから見てみたいと客席の一番後ろで見てくれていた。
さん助師匠の落語に二人は大喜び。しかも終わるとその二人が立ち上がって「ブラボーーー!」とスタンディングオベーション
しかしその前に座っているお客さんたちはしーん。
この温度差がすごかった…。なんか恥ずかしくていたたまれなかった…。

…ぶわはははは。いろんな体験するね!さん助師匠。
それにしてもいいなーそのフランス人のお嬢さんたち。素敵。


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十一回「新右衛門と重右衛門」
お静を追い出し、お糸を迎え入れる前の晩。嬉しくて待ち遠しい義松。燕枝はそれを「一夜を千夜と待ちわびまして」と書いていて、もうそういう表現がたまらないんだというさん助師匠。
次の日、お糸は店の者に「浅草の観音様にお参りに行ってくる」とだけ言って店を出て、義松の元へ向かう。
一方義松の方は、子分たちに「お静のことはお糸には絶対に言わないように」と釘を刺す。

お糸が訪れると子分たちは大喜び。
今まで男所帯でむさくるしかったところに、こんなにきれいな…元芸者の姉さんが来てくれるなんて…と持ち上げ、先を競うように自己紹介をする。
そこへ現れた義松は、お糸が半人(遊女の見受けの証人)を介して店に話をすることなく黙って出てきたことを聞くと、「さてはここが気に入らなかったら店に戻るつもりか」と言う。
それを聞いたお糸は「17年間(義松に)会うことだけを夢見てきた私にそんなひどいことを言うなんて」と怒り、子分に「剃刀を持ってきてくれ」と言う。
驚く男たちに、店に戻るつもりがないことを示すために眉を落とすのだ、と告げて剃刀で眉を落とす。
それを見て義松は喜ぶのだが、お糸はめざとく部屋にあった鏡台に気が付き「男所帯だというがなぜ鏡台が?」。
子分を取りまとめる役の八五郎がそこはうまくお世辞を使って誤魔化す。

一方、弁吉(お糸)が行方不明になって店は大騒ぎ。お糸の面倒を見ていた新左衛門は、お糸が兄と生き別れになってそれを探しているとは聞いてはいたが…おそらく兄というのは嘘で情夫なのだろう、と店の主人に話す。
ああいう女だから仕方ないが、面倒を見た自分にあいさつもなく雲隠れされては自分の顔が立たない。かといって、ああいう世界の者に自分のような堅気の人間が行ってもどうすることもできない。誰か間に入ってくれる者はいないか?と言うと、主人は「それなら築地青柳丁で御用聞きをしている小松屋重右衛門に口をきいてもらったらいいのではないか」と言う。
こういう役にはぴったりな人間だ、と。

お糸の歓迎の酒宴を開いている義松の家にやくざ者が入ってきて自分は折助(下男)だと名乗り暇乞いに来たから餞別を寄こせと大声をあげる。
子分たちが叩きのめしてやれといきり立つと、お糸が現れて「祝いの席なのだから」とたしなめて金を渡してやる。
折助は礼を言って家を出るが、実はこれは重右衛門に頼まれて義松の家の様子をうかがいに行った男で、待ち合わせした重右衛門に「確かに二階で義松の声がした」と報告する。
重右衛門はそれを聞いて義松を訪ねる。

重右衛門が訪ねてきたと聞いた義松は「あれは兄だが子どものころはいじめられ、3年前にも人前で恥をかかされた。仕返しをしてやろうと思っていたところ向こうから訪ねてくるとはおあつらえだ」と喜ぶ。
義松は金ピカの豪華な衣装に身を包み子分を従えて重右衛門の前に現れる。

最初は重右衛門が「お前の兄だ」と言っても、自分に兄などいないとしらを切っていた義松だったが、お糸をいったん店に返して新右衛門の顔を立ててくれと言われると、長年の怨みを吐き出す。
自分は子どものころお前にさんざんいじめられた、お前の父親も血のつながらない自分をかわいがらなかった、その挙句売り飛ばされてそこでお糸と出会ったが、二人で駆け落ちしようとしたところお糸が山賊に連れ去られ、ようやく再会できたのだ。自分はこれまでの人生でどれだけの目にあってきたか。
しかしお前はうちの父に命を助けてもらった身ではないかと言う重右衛門に「あの時そのまま死なせてもらったらどれだけよかったか」とうそぶく義松。
敵意をむき出しにする義松に「お前がその気なら…」と言う重右衛門。
重右衛門が帰ってから「今から行ってあいつを刺しましょうか」と言う子分に、おれに考えがある、という義松。
二人の対決は次回に。

…あんまりよく覚えてないけど重右衛門の方はしっかりしていて剣術の稽古も一生懸命やってたんじゃなかったっけ?それでも結局はやくざになってるんだね…。
そして、いじめられたとか何の恩義も感じてないとか恨み節を言う義松が小せぇ…。小せぇ男だよ、ほんとに。こんな親分でいいんですかね。何もいいところが見つけられないんですけど…義松…。「八艘飛びの義松」言うけど八艘飛びエピソード出てきたっけ?木更津のあのしょーもない戦いの時に船をぴょんぴょん飛んだんだっけ?
金ピカの衣装をつけて登場っていうのも苦笑いしかないわ…。

それにしても新しい登場人物が出てきても、結局また殺して痛めつけるんでしょ?と思ってしまう。
なぜ現れた重右衛門よ…。またチミも拷問みたいな殺され方をするに決まってるよ…。
そんでお静よりお糸の方がきれいなのかね?お静も相当な美貌と言われていたけど、お静の方が年上なのかな。
いつまでも迎えに来ない義松を怪しんでお静が現れて義松をめった刺しにして殺して、お静とお糸が悪女対決して死んだ方が化けて出るとか…義松以外の人物にスポットが当たった方がまだ面白いような気がしないでもない。


さん助師匠「代書屋」
今度ラジオの「真打競演」に出ます、とさん助師匠。
子どものころ、生の落語を聴くのはこの番組ぐらいしかなかったからいつも楽しみに聞いていた。
じゃ青森のなんとかいうところで公開収録ですね!とウキウキしたら、そういうのは売れてる師匠の時だけで、それ以外の時はスタジオ収録らしい。
スタジオ録音となると結構長い時間楽屋にいないといけないんだけど今回は一緒に出るのが蝠丸師匠と〇〇師匠(聞き取れなかった)。
明日が収録?と言ってた気がするんだけど、競演するお二方も大好きな先輩なのでとても待ち遠しい。「一夜を千夜と待ちわびております」。

…ぶわははは。いいなぁ、そのフレーズ。
蝠丸師匠と一緒なんて羨ましすぎる。というか、うれしいんだね、蝠丸師匠だと。それもなんかうれしい。

それから今日はこれから「代書屋」をやります、と。
「代書屋」は今誰もが同じ形でやっていて、あれはもともと小南師匠が上方から持ってきてそれを喜多八師匠が今の形にした、とか。
みんなが同じ形でやってるので他の形はないのだろうかと探していたら、ありました。
〇〇(だれか忘れた…)の速記にあったのでそれでやってみます。ま、みんながやらないのはつまりはあまり面白くないから、なんですけど、こういう「代書屋」もあるんだな、と思って聞いていただければ、と。


代書屋にえらいなまった田舎の人が訪ねてくる。
「はい、いらっしゃいませ」と、この代書屋さん、愛想がいい。
田舎の人は江戸へ出てきたいきさつなどを長々と語りだし代書屋さんは「いったいなんの話ですか?」「あなたの身の上話はいいですから、私は何を書けば…」と言いながらも最後まで聞いてやる。
一旗揚げようと田舎から出てきて、地元でとれた野菜を使った野菜食堂を開こうと思うので、屋根のところに看板を書いてくれ、という。
「ここは代書屋ですよ。看板屋じゃないんですから」と代書屋さんが言うと、田舎の人はうぎゃうぎゃ言って怒って出て行ってしまう。

その後にやって来たのがきれいな女で代書屋さんは「いい女だなぁ」と大喜び。
「何を書きましょう」と聞くと「果たし状」(だったか?)を書いてくれ、と女。
「離縁状じゃなくて?」と聞くと、「だってひどいんですよ、あの男」と今度は女が亭主への恨み節を語り始める。この女の名前がベソ子。ベソ子って(笑)!
そして女の語りがなんともいえずヘンテコな調子(芝居調子とも違う、なんだったんだろうあれは)ですっごいおかしい。
どんどん興奮して激高していく女にたじたじの代書屋さん。
そこに亭主が飛び込んできて、「反省したから心を入れ替える」と言うと、「お前さん…ほんとかい?」と女。
二人は抱き合って出て行ってしまう。

その後に来たのがやたらと威勢のいい男。
出生届を書いてくれと言うのだが、妻の名前が思い出せない。
そして妻とのなれそめを語り始める男…。
代書屋さんは「いったいなんの話ですか?」と文句を言いながらも結局聞いてしまい…。

…楽しい~!私「代書屋」は嫌いな噺なんだけど、この「代書屋」は好き好き。
次々やってくるお客が自由気ままで、それに振り回される代書屋さんが偉そうでもなくて、とげとげしさがなくてただただた楽しい。
特に女とのやりとりがたまらなくおかしかった。なんかやけに古風で…時代はいつごろなんだろう?大正?昭和?古めかしい新しさがすごく面白い。楽しかった!


さん助師匠「千両みかん」
この噺に出てくる万惣というのは神田に本当にあったお店。池上正太郎のエッセイにここのお店で食べるホットケーキがどんなにおいしいか、という文章があって、それを読むともう食べたくてたまらなくなる。
耐震の問題で今はなくなっちゃいましたけど、私なくなる前に食べに行きました、ホットケーキ。
…期待が大きすぎたんでしょうね…。おいしかったですけど…ふつうでした。

…ぶわはははは。
黄金餅」もそうだけど、さん助師匠とスィーツって…なんか面白いぞ。
そんなまくらから「千両みかん」。
これがさん助師匠にしたら珍しくちゃんとした(←ひどい)「千両みかん」だった。
丁寧っていうか、抑え目っていうか。

番頭さんがいいなぁ。
お人好しでおっちょこちょいで…。旦那に脅されて三日かけてそこらじゅうの八百屋を訪ねて歩くんだけど見つからなくて…わけわからなくなって入った荒物屋の主人、心配してくれてお水を飲ませてやって「だったら八百屋に行くより万惣に行ってみなよ」と教えてくれる。
万惣でみかんを蔵から出すところも、ちゃんと蔵の冷たい空気がこちらにも感じられた。
若旦那がみかんを大事そうに手に持って食べるところも、とてもおいしそう。
それを見た番頭さんは本当に嬉しそうで、若旦那を思う気持ちが現れてる。

このサゲ…大好きだなー。落語って感じ。
楽しかった。