りつこの読書と落語メモ

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バーチウッド

バーチウッド (ハヤカワepi ブック・プラネット)

バーチウッド (ハヤカワepi ブック・プラネット)

★★★★

おお。想像通りの小説だった。物語全体の雰囲気も文体も、読んでいる間のもやもや感も想像通り…。でも読みづらいんだろうなぁ、頭がこんがらがるんだろうなぁ、いまいちかもなぁ、と覚悟していたせいか、意外にも(失礼!)面白いと思った。読みづらいところもあったけど、私は結構好きだった。こういう小説に昔より慣れてきたような気がする。

作家・佐藤亜紀の翻訳で贈る、ブッカー賞作家の野心的傑作ーー
優雅な屋敷だったバーチウッドは、諍いを愛すゴドキン一族のせいで、狂気の館に様変わりした。一族の生き残りガブリエルは、今や荒廃した屋敷で一人、記憶の断片の中を彷徨う。冷酷な父、正気でない母、爆発した祖母との生活。そして、サーカス団と共に各地を巡り、生き別れた双子の妹を探した自らの旅路のことを。やがて彼の追想は一族の秘密に辿りつくが……。
幻惑的な語りの技と、絶妙なブラック・ユーモアで綴る、アイルランドへの哀歌。

ゴドキン一族の生き残りであるガブリエルが故郷バーチウッドに戻ってくるところから物語は始まる。屋敷は荒れ果て、一族も死に絶えた。「語るために生き延びさせられた」ガブリエルが、バーチウッドで繰り広げられた物語を語り始める…。

堅苦しくもそっけない感じもある文章で(原文が?翻訳が?)、現実と幻想が綴られていく。おぞましい出来事が当たり前のように淡々と描かれるので、「え?なに?」と何度も文章を戻りつつ、時には何が起きたのかよくわからないまま、読み進める。
没落していく一族。貧困。荒れていく屋敷。寂寥。狂気。そして家族の秘密。
ああ、なんか前にもこういう小説を読んだことがあるような気がするんだけど、なんだったか。雰囲気は佐藤亜紀の「ミノタウロス」にも似ているような気がするのだが…。

物語がどんどん展開していってストーリーの奇抜さで読ませるというタイプの小説ではない。どちらかというと、のろのろと…しかし時々はっと目が覚めるような逸話や、何か意味深なセリフや出来事をはさみつつ、気付いたときには物語のクライマックスど真ん中に立っていた、という感じだ。そしてこのラストは…。ここからまた始めに戻って読め、ということなのだろうか。

それにしてもアイルランドという国はすごい…。 シェイマスディーン、ウィリアムトレヴァー、ジョン・マクガハン、 ロディドイル。どの作家の作品にも貧困と暴力が描かれている。この小説にも独特の静けさと迫力がある。