第三の警官
- 作者: フランオブライエン,大澤正佳
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2013/12/10
- メディア: 新書
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あの老人を殺したのはぼくなのです―出版資金ほしさに雇人と共謀して金持の老人を殺害した主人公は、いつしか三人の警官が管轄し、自転車人間の住む奇妙な世界に迷い込んでしまう。20世紀文学の前衛的方法、神話とノンセンス、アイルランド的幻想が渾然となった奇想小説。
なんの予備知識もなく読んだので(古きよきミステリーかと思っていた…)、最初わけがわからなくて戸惑い道に迷い何度か挫折しそうになりながら我慢して(!)読んだ。
最後まで読んで面白かった!我慢して読んで(←何度も言う)良かった!
主人公の男は、物理学者でもあり哲学者でもあるド・セルヴィの研究をしていて、自分の研究成果の出版資金を得るために雇人ジョン・ディヴニィに唆されて、裕福な老人メイザーズを殺害する。メイザーズの金を独り占めしようとするディヴニィから、金はメイザーズ邸の床下に隠してあると聞いた主人公は夜中に屋敷に忍び込むのだが、そこには死んだはずのメイザーズが座っていて、彼と奇妙な問答を交わしているうちに、主人公の魂ジョーが現れ、主人公は次元が狂ったような世界を彷徨うことになる…。
妙にリアルなのに奇妙な理論や不条理がまかり通る異様な世界。逃げるチャンスはいくらでもありそうなのにわざわざ自分から窮地にはまりこんでいくようにさえ見える主人公。
これは夢の世界なのか?あるいは…?
小さい字で書いてあるド・セルヴィに関する脚注。最初は「なんじゃこれゃ?ここも読まないとダメ?飛ばしても問題ない?」と思っていたのだが、実はこれが物語を包括する物語になっている。ものすごく堅い文章で書かれているのだが、実はとてもバカバカしく面白くて、読み進めるうちにあれまた出てこないかな、と楽しみに。
警官が作った無限に続いていく箱細工のように、物語の中に物語、その物語の中にも物語…という仕掛けになっていて、最後まで読むと「うおっ」と驚かされる。
分からないで読んでると、なにこれ?どういうこと?どういう世界?と不安になるけど、それも含めて楽しい。かなり読むのに苦労したけれど、読み終わった時にそれなりの達成感があった。(でも私には正直難しかった)