りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

十字屋落語会 馬治・さん助ふたり会

7/17(金)、「十字屋落語会 馬治・さん助ふたり会」に行ってきた。

・まめ菊「狸札」
・馬治「鮑のし」
・さん助「二十四孝」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・馬治「猫の災難」


馬治師匠「鮑のし」
数か月に及んで全く仕事がなくなって家にこもりっきりの生活。
師匠からは「とにかく今は歯を食いしばって耐えて落語の稽古をしろ」と言われたのでやってみたけど落語っていうのは本来歯を食いしばってやるものじゃないっすね、と言う言葉に笑う。噺家なんていうのは皆様方と違っていろんなことを考えたりしないもんですから。私なんか頭の中は競馬と落語のことだけ。それが競馬も落語もなくなっちゃうとほんとに何もなくなっちゃって退化する一方。

この間久しぶりに人前で落語をやる機会があって「紙入れ」をやることになっていたんです。
前日やってみたら大丈夫そうだったので、いけるだろうと思っていたんですが。
まくらの「町内で知らぬは亭主ばかりなり」の「町内」が出てこない。あれ、なんだったっけ、なんか他の言葉で同じ意味になるように…と考えた挙句「世界中で知らぬは亭主ばかりなり」。…なんだよ世界中でって。

…ぶわはははは。
噺家さんってみんなこのコロナ禍で同じような反応なのが面白いなぁと思う。
もちろん困ってないわけじゃないんだけど、まぁもとから仕事ない時は家にいたし…こういう時こそ稽古しろって言われるけど披露する場もないのに稽古って言われてもなかなかねぇ…。
寄席も人数を制限しなくちゃいけなくて大変っていうけど、俺らが前座の頃は10人入ってないなんてざらだったし…いまさら何を言う?
やせ我慢も入っているのかもしれないけど、でもぎゃあぎゃあ言ったりじたばたしないでぼんやりしているっていうところに、噺家の矜持を感じるのだった。

そんなまくらから「鮑のし」。
甚兵衛さんがぼんやりしていて呑気なんだけど真剣なのが独特ですごくおかしい。口上の稽古をして「これが言えねぇと持続性給付金がもらえねえんだな?」なんてセリフが出てくるのも馬治師匠らしくておかしい。
大家さんのところに行ってからのやりとりも、甚兵衛さんが大真面目なのがおかしくて笑った笑った。
楽しかった!

 

さん助師匠「二十四孝」
暇なもんですから映画を見に行きました、とさん助師匠。ハッピーエンドで見終わった後「明日もがんばるぞ」と前向きになるような映画は好きじゃない。
かといって人が死んで涙を流すような感動ものも嫌い。
私が好きなのは、黒板を爪でひっかくような…見終わっていや~な気持ちになるような…そんな映画です。今お客さんが引いて行くのをひしひしと感じましたけど。いいんです。
で、私が見ようと思ったのが「アングスト」です。これはもうあまりにも過激なので長年上映禁止になっていた…DVD化することもできない問題作ということで。いったいどんな残虐なシーンがあるのかと期待に胸をふくらませて見に行ったんですが…。おそらく劇場は映画マニアみたいのが来てるのかと思いきや、若いカップルが多い。
で、見てみた感想なんですが…。あの…。ええと…。予告編、うまく作りやがったな、です。今も見られると思うので見てみてください。そんなでもなかったです…。

…相変わらず説明下手なさん助師匠。いったいどういう映画なのか、どういう映画を期待して見に行ったのかイマイチ伝わってこない(笑)。
そもそもホラー映画好きとも思えないし…。
想像するに人間の残酷性とか人間性の破壊とかそういうものを描いた作品とかそういう後味の悪い…見終わってモヤモヤするような映画が好き、と言いたかったんだと思うんだけど…。

それから東京の感染者が毎日増えていることについて。ある人数を超えると母親から電話がかかってくる。「お前、大丈夫なのかい?」と。で、必ずその後に言う言葉が…いったい私を…芸人をどう思ってるんですかね。「お前も芸人だからしょうがないのかもしれないけど…でも今はホストクラブには行っちゃいけないよ」。…ホストクラブなんかに行くわけないのに。まぁ幾つになっても親にとっては子どもってことなんでしょうか。

そんなまくらから「二十四孝」。
大家さんを訪ねてきたくまさんが存外へらへらしていて大家さんにもペコペコしているのが独自。
でも二人の会話からくまが乱暴者で母親を「どこかのばばぁ」呼ばわりして蹴とばしていることがわかる。大家さんはそんなくまを諫める気持ちで「お前にいい話を聞かせてやろう」と二十四孝の話をするんだけど、これをまぜっかえすくまがおかしい。「またばばぁが何か食いたがるんだろう?!唐のばばぁは食いたがるねぇ!」
「わかった!孝行の徳で感ずったんだろ!またよく感ずりやがったな!」さんざんバカにしていたくまだけれど、親孝行したら小遣いをやると言われて「じゃ孝行するわ!」と家へ。

聞いてきたとおりに鯉が食いたいか?タケノコが食いたいか?と母親に聞くも「川魚は泥臭いから嫌い」「歯が悪いからタケノコは食べられない」。

訪ねてきた友だちに聞いてきた「二十四孝」の話をするけどこれもめちゃくちゃ。
最後は酒を自分の体に吹き付けて蚊を自分におびき寄せて母親に蚊が行かないようにしてやろうと思うんだけど、酒を注ぐとぐびぐび飲んでしまう。
この飲みっぷりが本当に美味しそう~。

どたばたしてるくまさんとさん助師匠が重なって面白かった!

 

さん助師匠「胴斬り」
胴斬りにあっても平然としているのもおかしいけど、そう聞いて「だからお前はいつも酒ばっか飲んでるから」と説教を始める兄貴分もおかみさんもおかしい。
こんな姿になっちゃって一人で帰れないから家まで連れて帰ってくれよと頼んだくまが「抱っこ」と腕を差し出すのも笑ってしまう。

下半分の働きぶりを見に蒟蒻屋に行って、話し出すときの指の動きが…(笑)。これほんとバカバカしくて好き。
サゲを2パターンやるっていうのもなんか面白かった。

 

馬治師匠「猫の災難」
お隣のおかみさんにもらった鯛のおあまり。3枚におろした後で頭と尻尾の間に骨がつながってる(?)って初めて聴いた!なるほど!!
あと兄貴が訪ねてきて「鯛があるじゃねぇか!」と喜んだ時に、くまが「いやこれは違うんだよ」「いやこれはさ」と言いかけるのも面白い。くまはだますつもりはなかったけど兄貴が早合点して言えなくなっちゃった、っていうのがわかりやすく伝わってくる。
兄貴が酒を置いていなくなちゃってから、酒の方をじーっと見るのが…酒飲みの卑しさが出ていておかしい!
それも一杯飲むとますます飲みたくなっちゃうの、わかるなぁー。飲んでいくうちにどんどん気が大きくなっていくのも、どうでもよくなってぐうぐう寝ちゃうのも、なんか憎めない。

めちゃくちゃお酒が飲みたくなる「猫の災難」だった。よかったー。