りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

むらさきのスカートの女

 

むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女

 

 

★★★★

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。 

 本人にそんなつもりはないのだろうが世間からはみ出して人目を引いてしまうむらさきのスカートの女。
彼女から目が離せなくて執拗に観察して距離を縮めようとする黄色いカーディガンの女である「わたし」。
同じ職場で働きだしたむらさきの女が意外にも職場で信頼を得るようになり、上の人たちともうまくやり、果てには上司と不倫…?

むらさきの方がどんどん世間に寄せていくほどに黄色の方は疎外感を感じて裏切られたような気持になっていったのだろうか。

直接描かれているわけではないのに、黄色い方の生活の苦しさや孤独感、居場所のなさが伝わってきて身につまされる。

安全な場所から冷静に見ていたはずの自分がいつか、むらさきのスカートの女になっているかもしれない。
あるいはむらさきの女など最初からいなくてそこにいたのは孤独で誰からも顧みられない黄色いカーディガンの女だけだったのか?

淡々としているけれどどこか歪んでいて寂しくて怖い。
芥川賞受賞、おめでとうございます。