りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

サンセット・パーク

 

サンセット・パーク

サンセット・パーク

 

 ★★★★★

彼は28歳で、自ら知る限り何の野心もない。大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれの苦悩を抱えた男女4人は、見捨てられたこの小さな家から、不確かな未来へと歩み出す。不安の時代をシェアする若者たちのリアルを描く愛と葛藤と再生の物語。 

オースターは、内省的な作品よりこういう視点が変わって動きのある作品の方が好み。
という私はオースターの正しい読者ではないのかもしれないが。

主人公のマイルズは、ある出来事に対する罪の意識から家族の元を離れ連絡を絶ち、ブルックリンで死んだように生きていたのだが、ある時出会ったピラールという少女に恋をして彼女との将来を考えるようになる。

経済的に常に逼迫し将来に希望が持てずそれぞれの悩みや過去を抱えて生きている若者4人が、サンセットパークの霊園そばの廃墟に不法居住しどうにか人生を立て直そうとするのだが…。

2010年に書かれた作品だが今読んでもこの閉塞感は続いているどころかコロナ禍でさらに八方塞りになっていて、この世界でどうすれば羽を広げることができるのか、どんな未来を描けばいいのか…頭を抱えてしまう。

マイルズが最後に呟く言葉が胸に突き刺さるが、それでも生きていくしかないし、今を生きるためにはどうしたって希望は必要なのだ。
築き始めた小さな未来を自分で壊しても他人に壊されてもまた築いていくしかないように思う。

オースター作品の中でかなり好きな作品。(一番好きなのは「ブルックリン・フォリーズ」)