りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭6月上席昼の部

6/4(木)、末廣亭6月上席昼の部に行ってきた。
最後に落語会に行ったのが3/25(水)道楽亭の貞寿先生と小助六師匠の会、寄席が3/21(土)のいろは亭。それ以来の寄席。くぅーーー。
そんなに間空いてねぇじゃねぇかと言われそうだけど、週3、4ぐらいのペースで落語に行っていた身からすると、ようやく!の想いが強い。
この芝居、大好きな南喬師匠のトリだったのでなんとしても行きたかったのだけれど、混んでたら嫌だなぁと思い平日休みをとって。初日は夜の部の喬太郎師匠目当てで昼夜通しの人も多かったようだけど、2日目から入れ替え制にしたので混むこともなく。ありがたかった。


でももちろんまだまだ平常とは程遠い状態。
末廣亭でも人数は100名に限定。入り口でアルコール消毒&検温。
会場も3列目から。1列おき、一人おき。(今は布陣がまた変わってるらしい。確かに1列おきにすると椅子席だと後ろになりがちだから勿体ない気が)
トイレの洗面に自動ハンドソープの機械が設置。泣ける。「この量で充分です」と注意書きがしてあったけどものすごい少量だったので笑う。わははははは。


・市松「たらちね」
・扇「平林」
・正楽 紙切り(「線香花火」「東京アラート」「あずみさん」「あじさい」)
・彦三「初音の鼓」
・左橋「子ほめ」
・ホームラン 漫才
・扇好「のっぺらぼう」
正蔵「鼓ヶ滝」
~仲入り(換気)~
・夢葉 マジック
・白酒「権助魚」
・鉄平「大安売り」
・あずみ 俗曲
・扇遊「干物箱」
~仲入り(換気、消毒)~
・一之輔「真田小僧
ロケット団 漫才
・正朝「悋気の火の玉」
・朝馬「浮世床(夢)」
仙三郎社中 太神楽
・南喬「家見舞」

 

正楽師匠 紙切り(「線香花火」「東京アラート」「あずみさん」「あじさい」)
わーーい、正楽師匠!お元気そうでなにより。嬉しい。
そして今回あまり声をかける人がいなかったので私は初めて自分で声をかけて切っていただいてしまった。「あじさい」。
在宅勤務になって毎朝散歩をするようになった。今まで目が行かなかった道端に咲いてる花、どこかのお宅の玄関先の花、都営住宅の花壇、公園に咲いている木に心慰められることが多い。中でも好きなのがあじさい。梅雨に入る憂鬱な時期に、この花が徐々に花びらを咲かせ色を濃くしていくことに慰められる。
そんな気持ちから声をかけさせていただいたら「あじさいね。あじさい。…よかったですよ。何を隠そう私が一番得意にしているのがあじさい。…その次があずみさん」。
いつものセリフなんだけど、こんな時だけにとても嬉しかったな。

 

彦三さん「初音の鼓」
二ツ目昇進おめでとう!!な彦三さん。黒い羽織が初々しい。
こういう日に来てくれたお客さんへの感謝を一生懸命伝えようとしたあとで「お世辞もまだおぼつかないんですが」とぽつりと言うのがおかしい。
せっかくの昇進がこんな時期と重なってしまって可哀そうだけれど、緊急事態宣言が解除されて初めて行った寄席で昇進したばかりの彦三さんを見たことはきっとずっと忘れないと思う。

「初音の鼓」。道具屋とぐずぐずの仲(笑)の三太夫さんが一生懸命狐の物まね。最後に「すぽぽんすぽぽんすぽぽんぽん!」と息もつかずにやったら咳き込み「あ、コロナじゃないです」と言ったのがめちゃくちゃおかしかった。
清々しくて気持ちのいい高座だった。きれいな噺家さん。

 

ホームラン先生 漫才
わーーーホームラン先生もお久しぶり。病気で療養していたことは聞いていたけど、杖もつかずに元気に登場されて嬉しい。
寄席で漫才をできるのが嬉しい!という喜びに満ちていて、「いつもの」じゃない、雑談をそのまま漫才にしちゃったみたい。楽しかった!

 

扇好師匠「のっぺらぼう」
まくらなしで「これは終わりのない永遠に続く落語です」とのっぺらぼう。
この繰り返しがバカバカしくて楽しいんだ。
落語にあまり慣れてない感じのお客様が「怪談」と聞いて最初はびくびく聴いていたのが徐々に「なんだ、こういうことか」と分かってほっとするのが伝わってきて嬉しくなる。
こういう客席の空気が大好き。だから何度も行きたくなるんだな。

 

白酒師匠「権助魚」
寄席も落語会も全部なくなって家にこもりっきりでいて、寄席が復活して噺家はみんな「寄席で喋ること」の幸せを噛みしめてます、と白酒師匠。
これからは一席一席大事にするぞ、という気持ちでいましたけどそろそろ今日あたりが限界です。明日からみんな手を抜き始めると思いますので、今日がぎりぎりセーフです、に笑う。

そんなまくらから「権助魚」。
おこづかいをやると言われたとたんに「おら、どっちかっていうとおかみさんの方が好きだ」とケロッという権助
「そこまで言われたら(場所を)言いますだ」とひそひそ声。
毒舌なのに意地悪さがない。白酒師匠にぴったりだ。
最初から最後まで楽しい「権助魚」だった。

 

鉄平師匠「大安売り」
お相撲さんと個人的に少し親しくさせていただいている、というまくら。
そんなまくらから「大安売り」。この噺って全然面白くないなーと思っていつも聴いているんだけど、これがすごく面白くて!なんでこんなに面白かったのか謎なんだけど。
負け続けの取り組みの6日目ぐらいで「ここらへんから危なくなる」、9日目で「ここまでくればもう安心」とちょいちょい入る心の声と、お世辞のきかない関取の語りがまじりあってすごくおかしい。
そして「大安売り」のタイトルの意味がわかるサゲまでやってくれたのも嬉しかった。

 

扇遊師匠「干物箱」
高座で落語を喋る喜びが溢れてくるような弾むような高座。
花魁に会いたい若旦那、お調子者の善公、頭の固い大旦那。
身代わりだからおとなしくしてないといけないのにすぐに我を忘れて大騒ぎしてしまう善公。
テンポの良さと展開のスピードの丁度よさ。こういうのはやっぱり生でないとねぇ。
大盛り上がりで仲入り。

 

一之輔師匠「真田小僧
こういう日に来てくださるのがほんとの落語好き、ほんとのお客さん。我慢できなかったんでしょうね。わかります。
でもそういうお客さんが良く笑ってくれるとは限らない。
わざわざこういう日に駆けつけてクスリともしないとはどういうこと?いったいなにしに来てるの?
と言いたくもなりますけど、それも楽しみ方の一つ…なんでしょうな。

そんなまくらから「真田小僧」。
金坊とおとっつぁんの攻防の楽しさ。金坊が実に言葉巧みではあるんだけど、子供らしくていやらしさがないのが不思議。
話にのめりこんだおとっつぁんが相手が「あんまさん」だったと分かった時の「あーーーよかったー。ほっとしたーーー」と心の底から安堵しているのがたまらなくおかしい。
笑った笑った。

 

ロケット団 漫才
例のマスクへのいじりはきっとあるだろうと思っていたけど、他の件についても毒を交えて笑いに変えてくれるの、ほんとに楽しい。
家でネットニュースやtwitterに流れてくるニュースを見ているとどんどん深刻になって鬱になっていくので、こうやって笑い飛ばせる幸せを噛みしめた。笑った笑った。

 

南喬師匠「家見舞」
まくらなしで「家見舞」。
この時節にこの噺を選んだのは、とことんバカバカしい噺で笑ってもらおうという気持ちだったんだろうな。
表情が豊かでしぐさが大きいから「ええええ?」って驚いただけでバカバカしくて大笑いしちゃう。
「お前、首をかしげるなよ。お前が首をかしげただけでこっちはぞっとしちゃうんだよ」。
ああ、こういうしょうもないことで笑えるの、ほんとに幸せだ。こういう時間がほんとに大切。そんな思いでいっぱいになった。

 

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正楽師匠「あじさい」