りつこの読書と落語メモ

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瓦礫の死角

 

瓦礫の死角

瓦礫の死角

  • 作者:西村 賢太
  • 発売日: 2019/12/11
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

その逮捕を機に瓦解した家族。刑期を終えようとする父。出所後の夫の復讐に怯える母。家出し、消息不明となった姉。十七歳、無職の北町貫多は、如何なる行動に出るのか―。犯罪加害者家族の十字架を描く表題作と、その表裏をなすも“不”連作である「病院裏に埋める」の両篇に加え、快作「四冊目の『根津権現裏』」に、怪作「崩折れるにはまだ早い」(「乃東枯(なつかれくさかるる)」改題)の全四篇を収録。比類なき文学。 

貫多と久しぶりの再会。2019年に発表した作品だが、1,2話目は10代の頃の貫多。
服役中の父親が出所してくることに怯え、母親にたかり、そして逃げ出す。
劣等感と自惚れ、暴力性と小心さ。人間らしいといえば人間らしいが、お知り合いにはなりたくないタイプ。

私小説だから作者自身に重ねて読んでしまうわけだが、独特のユーモアについ笑ってしまう。

正直、初めて読んだ時の新鮮さはもうないんだけど、時々読みたくなる。なんて言ったら失礼か。初期の頃の内から沸々と煮えたぎるような感じはなくなって、その分貫多の孤立感や寄る辺なさが際立つ。

4話目の「崩折れるにはまだ早い」は今までの私小説とは毛色の違う作品で、新鮮な驚きがあった。