きのこのなぐさめ
★★★★★
悲しみの淵にいた私を、そこから連れ出してくれたのは、きのこだった―。マレーシア人の著者は、文化人類学を学ぶ交換留学生としてやって来たノルウェーでエイオルフと出会い、恋に落ちた。夫婦となった二人は深く愛し合い、日々のささやかなことも人生の一大事についても、何でも話し合う仲だった。ある日、いつものように朝早く職場に向かったエイオルフが突然倒れ、そのまま帰らぬ人となる。最愛のパートナーを失った著者は、喪失の痛みのさなか、ふと参加したきのこ講座で、足下に広がるもうひとつの世界、きのこ王国に出会う。きのこたちの生態は、不可思議な魅力に満ち満ちていた。苔むす森でのきのこ狩りの効用と発見の喜び。きのこ愛好家間の奇妙な友情と不文律。専門家・鑑定士への「通過儀礼」。絶品きのこトガリアミガサタケ。悪名高いシャグマアミガサタケ。色・形・匂いの個性とその奥深さ。とっておきの、きのこレシピ。悲しみの心象風景をさまよう内面世界への旅と、驚きと神秘に満ちたきのこワンダーランドをめぐる旅をつづけ、魂の回復のときを迎える、再生の物語。約120種類のきのこが登場。
素敵なタイトルを目にした時から読もうと決めていたのだがてっきり小説だと思い込んでいた。
夫を急死で失った作者が、きのこ講座に通い森に入りきのこを探し勉強していく中で、きのこの魅力にとりつかれ、徐々に生きる目的を取り戻していく。
きのこの見分け方やフィールドワークのやり方からきのこ仲間との付き合い方まで…きのこに特に興味がなかった私も読んでいるうちにかごを持ってきのこを探しに森に入って行きたくなる。
何かに熱中している人がそのことを熱を持って語るのを聞くのは本当に楽しい。そして何かに夢中になることは生きる糧を与えてくれると教えてくれる。
とても良かった。