りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

突然ノックの音が

突然ノックの音が (新潮クレスト・ブックス)

突然ノックの音が (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

イスラエルを代表する人気作家による驚きと切なさとウィットに満ちた38篇。人の言葉をしゃべる金魚。疲れ果て た神様の本音。ままならぬセックスと愛犬の失踪。噓つき男が受けた報い。チーズ抜きのチーズバーガー。そして突然のテロ――。軽やかなユーモアと鋭い人間観察、そこはかとない悲しみが同居する、個性あふれる掌篇集。映画監督としても活躍する著者による、フランク・オコナー賞最終候補作。

「この国じゃ、なにかほしかったら、力ずくじゃないとダメなんだ」。
不穏な言葉で始まるが、全編通してとてもユーモラスで思わず笑ってしまう作品が多い。
意外な展開だったり、いきなり終わったり、予期してないようなグッとくる言葉があったりで、ほかに類を見ない作風がとても素敵だ。
遠く離れた国、よくわからないこわい国、そんなぐらいの感覚しかなかったけれど、でもそこに暮らす人は怖くもないし異常でもない。
自分たちと同じところ、また違うところがあって、それが楽しい。

瓜二つの双子(男)が、同じような瓜二つの双子(女)と知り合って結婚し、その片方の男がもう片方の女と不倫して、嫉妬からもう片方の女の夫のほうが双子の兄弟を殺す。
夫に不倫相手を殺された女が何年か後にまた不倫をし、その相手の男が言う一言。

だが、たいそうなラブストーリーなんかじゃなかった。二人とも、人生をもうちょっと得したい、という機会をつかんだに過ぎなかった。

これ、なんか、わかるなー。
まさかイスラエル人にそう言われるとは思わなかったし、自分がそこに共感するとも思わなかった。けど、これはなんかやられたなー。
いろんな意味で海外の小説を読む楽しさが詰まっている作品だった。ブラボー。