あとは切手を、一枚貼るだけ
★★★★
かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話…そして二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密にどこであなたは気づくでしょうか。届くはずのない光を綴る、奇跡のような物語。
小鳥の羽音に耳をすませるような、暗闇の中で小さな光の粒を見つめるような、とてもひそやかな手紙のやりとり。
読んでる側も二人の男女の人物像や離れてしまった理由など何もわからない手探りの状態で、二人の静かな語りに身を任せるしかない。
まぶた、視力、切手、閉じ込められる人、アンネ、湖、ボート、小鳥…そして幼い人。
二人を分かつことになった出来事に胸が痛むが、そのことも超越した次元に二人がいるような印象も受ける。
お二人の作家がどういうふうにしてこの物語を書き進めていったのかも気になった。