りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

一龍斎貞寿 真打昇進披露興行 三日目

4/22(土)、お江戸日本橋亭で行われた「一龍斎貞寿 真打昇進披露興行」に行ってきた。


・貞奈「三方ヶ原軍記」
・春陽「の海勇蔵出世相撲
・貞友「出世の大盃」
・南北「THE家族 津軽の恋」
・琴調「出世の春駒」
・貞水「王将」
~仲入り~
・口上(貞友:司会、琴調、貞寿、貞心、貞水)
・貞心「石川一夢」
・貞寿「赤穂義士外伝 忠僕勝助」

春陽先生「の海勇蔵出世相撲
初めて見る先生。
とても軽妙で楽しい。話もわかりやすくて面白いし、軽くてギャグも満載で緊張がほぐれる。
いやぁほんとにいろんな講談があるんだなぁ…。講談の世界も奥が深いなぁ。
落語ファンの方々が次々講談の方にも進出?していく気持ちがわかる。


貞友先生「出世の大盃」
いかにもお酒が好きそうな先生がそれはもう気持ちよさそうにお酒の話をされる楽しさよ。
落語の「備前徳利」みたいな話だなぁと思っていたんだけど、後半にはいかにも講談らしい展開になってそれがまた楽しい。


南北先生「THE家族 津軽の恋」
わーーなんか強烈な人が出てきたー(笑)。
しかも講談も「新作」で、強烈ー。うわーーー。
なんかいろんな意味でびっくり仰天。すごいな、講談の世界も。


琴調先生「出世の春駒」
寄席で見るたびに「好きだ」と思っていた琴調先生。
「出世の春駒」は何回か見たことがあったけれど、こういう会にぴったりだし、ほどよく軽くて笑えていいなぁ。
前から好きだったけど、こうやって見るとすごくかっこいいなぁ。すてき。

貞水先生「王将」
うわ、まさか人間国宝をこういうところでこんなに近くで見られるとは思ってなかった。
小三治師匠もそうだけど、全然えらぶるところがないというか、素のままっていうかべらんめぇっていうか子どものまま大人になったみたいな…とても魅力的な人だなぁ。
そして、こういうおめでたい席だから自分が得意としている怪談話をするわけにもいかないし、赤穂浪士はトリでやるらしいし、さてどうしようと思って…自分でもめったにやらないしおそらく講談好きな人もほとんど聞いたことがない話をやります、と言って「王将」。

阪田三吉というもとは職人だったけれど将棋好きが高じてプロになった男が主人公。
プロになって8年目、関根名人と戦って勝つのだが、この人こそ三吉が素人の時に負けて悔しくてどうしても打ち負かしたかった相手だった。
ねぎらってくれる妻とは逆に「あれは関根名人が勝たせてくれたんだ」「関根名人の将棋には品があるけどお父さんの将棋にはそれがない」と三吉に言い切る娘。
そう言われて怒り狂う三吉だったが次の日妻に「あれが言ったことは本当だ」と認める。
それからまた年を重ね真に名人と呼ばれるようになった三吉。
関根名人の祝いに駆けつけ、二人は初めて腹を割って話をする。

講談にまったく詳しくない私でもこれがとても珍しい話だということはわかる。
将棋も勝てばいいというだけのものではなくて、それはきっと落語もそうだし講談もそうで…芸の道や生き方にもつながる話なんじゃないかなぁと感じた。
初めて見た貞水先生。こんな珍しい話を聞けて本当に来た甲斐があったというか…ラッキーだったなぁと思った。


口上(貞友先生:司会、琴調先生、貞寿先生、貞心先生、貞水先生)
司会の貞友先生が顔をあげてもよろしいですかと客席に声をかけてくれたおかげで、この間と違って顔を少し上げた貞寿さん。
表情が見られるのはとてもうれしい。グッジョブ!

琴調先生の優しさとユーモアに溢れる口上のあとの貞水先生。
今日は珍しい話をやって出来は決してよくなかったんですけどあれをやろうと思ったのには理由がありまして…。
というのは自分が真打になった時を思い出しまして…あの時は講談師の数が今よりもっと少なかったし、いわゆる「名人」と言われるような人たちの中に自分も入って行かないといけないということがとても嫌で、真打になんかなりたくないと泣きながらなりました。
この話を新劇で見た時に、これは講談にできるんじゃないかと思って作者の住所を調べて許可をもらいにいきました。
話をしてみると「私はそもそもあなたがどんな芸をやるかも知らないしそれで許可を出せというのは難しい。まずは講談にしてやってみなさい。見に行くから」と言われました。これはまずはやってみなさいと言って下さったわけでとてもありがたい言葉だった。
そしてその会にこの先生見に来てくださって、「これは全部で三巻まである長い話なんです。ぜひ全部やってください」と言って下さった。

口上が始まって顔をあげていた貞寿さん、貞水先生が「自分が真打になった時を思い出して」と言ったとたん、頭がぐっと下がった。
この日が真打披露目だから自分が真打になった時の気持ちを想いだしてこの話をされたと言われて涙がこらえられなかったんだろう。
私もなんか胸がいっぱいになって泣いてしまった。

挨拶を終えた貞水先生に隣に座った貞心先生が頭を下げてお礼をおっしゃっていて、本当に嬉しそうだったのが印象的で、本当に感動的だった。
そのあとに挨拶をされた貞心先生が貞寿さんに向かって「よかったな」と声をかけ、自分はとても明るく軽い挨拶をされたのも素敵だった。多分泣いている貞寿さんがそれ以上泣かないようにされたんだじゃないかな。

 

貞心先生「石川一夢」
これも初めて聴く話。
いいなぁ、こういう話を自分の弟子のお披露目の席でやる師匠って…。見るほどに好きになるなぁ。貞心先生。
あたたかくて柔らか味のある講談。好きだ。

貞寿先生「赤穂義士外伝 忠僕勝助」
自分の憧れの先生方はこうして口上に並んでくださってこれを幸せと呼ばずに何と言ったらいいのか。
私40過ぎて…ほんとに涙もろくなってしまって…泣かずにいれば大丈夫なんですけど一度泣いてしまうともうだめです。

そう言いながらも「講談には必ずダレ場というのがありまして。今日は…ダレ場です」と笑いに変えるのがさすが。
そして前回までのあらすじから「赤穂義士外伝 忠僕勝助」 。

城を明け渡した大石内蔵助が赤穂から山科に出発するところ。長年仕えていた勝助が挨拶に来て蔵助の形見が欲しいと言う。
勝助と話をしているうちに自分の日頃の行いや忠義から仇討をするだろうと世間で言われていることを知った蔵助が…。

地味だけど蔵助の魅力がたっぷり。とてもよかった。
あーあと2日も行きたいなぁ。昼間なんだよねぇ。くー。

f:id:mritu47:20170423194019j:plain

f:id:mritu47:20170423194040j:plain