りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第24回おたこん落語会 夢吉ドリーム◎サークル 三笑亭夢吉独演会〜夢丸前夜〜

3/7(土)、「味工房 一酔万笑」で行われた「第24回おたこん落語会 夢吉ドリーム◎サークル 三笑亭夢吉独演会〜夢丸前夜〜」に行ってきた。

・「のめる」
・「両泥」
〜仲入〜
・「薮入り」

「のめる」
いつものように笑顔で出てきた夢吉さん。
最前列の真ん中の席が空いているのを見て「みなさんご通家でいらっしゃいますね。そこを避けて座られるとは。そこが一番唾が飛ぶんです」。
幼稚園児や保育園児の前で落語をやったときのまくらから「のめる」。
夢吉さんらしい明るくて楽しい高座。

「両泥」
自分は新潟から出てきて入門したんだけど、自分ではたいして訛りはないと思っていたけどそうではなかったみたいで。
師匠に「権助魚」という噺を教わって、師匠の前でやってみせたとき。
師匠がぽつりとつぶやいた。「おかしいなぁ。始めたときは権助ひとりだったんだけどな…。最後になったら権助が3人になっちゃった」。
それで訛りが抜けるまではしばらくこの噺は禁止になった、と。
「両泥」は初めて聴く噺。面白かった〜。
芸協の若手の噺家さんは一味違う噺をもっていて、いいなぁ。

「薮入り」
落語家になりたいと言ったとき、「お前には向いてない」と反対した父親
師匠には「お前は長男か。家は商売をやってるのか?公務員?そうか…」と入門を許してもらいその時には反対していた父親も一緒についてきてくれて頭を下げてくれたけれど、それ以来実家に電話をしても一言も喋らず電話を切られていた。
それが二つ目になったと実家に知らせるとすぐに父親が電話をしてきてくれて「よく頑張ったな」と言ってくれた。あの時は本当にうれしかった。
そんなまくらから「薮入り」。
奉公に行った息子が帰ってくる前の晩、眠れない父親
待ちわびすぎてカリカリきて、ようやく帰ってきたのに息子の顔をまともに見られない。
悪い風邪にかかって弱気になって息子を呼び戻そうとしたときに、奉公している他の子に気を使って見舞いを我慢した息子を手放しでほめる父親
息子を思う父親の気持ちと父を慕う子どもの心が胸に染み入ってきて、泣いてしまった…。すごくいい「薮入り」だった。

噺が終わって頭を下げた夢吉さん。追い出しの太鼓を止めて話し始めた。
私もこの会にいく前に、他の師匠のつぶやきで夢丸師匠がこの日の朝にご逝去されたことを知った。
え?そんな日に独演会?大丈夫?と心配していたのだけれど、いつも通りの明るい夢吉さんだった。でも仲入りの後に出てきたとき、目と鼻が赤くなっていて、ああ…やっぱり…と思っていた。

主催者の方から、延期にしてもいいですよと言ってもらったけれど、おかみさんに話をすると「師匠が生きてたら絶対に行きなさいと言ったと思うよ」と言われ、自分もそう思ったので来ました、と。
正直ちゃんとできるか自信がなかったけれど…と言うけれど、いやいやほんとにいつも通りの明るくて楽しい高座だった。
最後にこんなことを言わない方がよかったのかもしれませんが、そういうわけで今日の打ち上げにはでられません、本当に申し訳ありませんと言って頭を下げる夢吉さんにもう涙涙涙。
師匠も真打になった夢吉さんを見届けたかっただろうなぁと思うと本当に悲しくなるけれど、純粋で誰からも愛される夢吉さんがこうやって一番辛い時に一人できちんと高座をつとめたことを知ったら、きっと心の底から喜んでくれるだろう、と思う。