りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

県民ホール寄席 春風亭一朝独演会

7/30(水)関内ホールで行われた「県民ホール寄席 春風亭一朝独演会」に行ってきた。
「県民ホール寄席」だから県民ホールでやると思い込んでいた私。
初めての場所だったのでナビを見ながらも迷いに迷って駅から6分とあったところを15分以上かかってようやく到着。しかもあれ?工事中?入口はどこ?
建物をぐるっと回って入口にたどり着いてみるとロープが張られていて、ひえええ!!
まままさかとチケットを出してみると県民ホールじゃなく関内ホールと書いてある!
この時点ですでに開演時間。

関内ホールってどこにあるのさと検索してみると、ここから徒歩15分とある。電車に乗ってひと駅戻るより歩いたほうが早そうだ。(迷わなければ…)
というわけで、またナビを見ながら関内ホールを目指す。幸いなことに(?)来るときさんざん迷ったおかげで方向は把握できていたので、今度は迷うことなく15分で関内ホールに到着。
着いた時には汗だくだくでイアリングも片方落としていたけど、ホールに入ったら開口一番が下がるところだった。
とりあえず一朝師匠には間に合った!

・一朝「宿屋の富」
〜仲入〜
・一朝「淀五郎」

「宿屋の富」
一朝師匠の独演会は初めてだったんだけど、まくらで先代の正蔵師匠のエピソードをたっぷり。これがもう楽しい楽しい。
末廣亭の出番が終わって帰ろうとすると雨。当時前座だった一朝師匠が伊勢丹に傘を買いに行ったのだが、値段も手頃と思って買って帰ってきてみるとおひとり様サイズのちょっぴりしか開かないタイプ。これじゃだめだから買いなおして来いと言われ再び伊勢丹へ行き普通の傘を買ったのだが、当時で三千円と結構なお値段。戻ってきて広げて帰ろうとすると雨が止んでて、師匠に「お前はくび!」と怒られた…。 人気者だった小朝師匠がバレンタインにチョコレートをたくさんもらって楽屋に持ってきた時に、一朝師匠に言われてアーモンドチョコを正蔵師匠に渡すと「ありがと」と言って食べ始めた師匠。食べ終わってアーモンドを口から出して「種が入ってました」。

語り口というのもあるんだろうけど、昔の師匠って趣があるというか味があっていいなぁ…。
存在そのものが「落語」だなぁ。

一朝師匠の「宿屋の富」は初めて。
一文無しが自分は金持ちだと宿屋の主人に語るエピソード。語りすぎずあっさり目なのがいかにも一朝師匠らしくていい。
また富の札を買わされて一文無しになってしまったとぼやくところも、「ま、いいや。これで当分宿代の催促もされないだろう。食べるだけ食べてそのままずらかっちゃおう」と軽くてかわいい。

富札の発表会場で男たちがわいわいやっている光景も軽妙で楽しい。
自分は二等が当たると言う男の何度も繰り返す妄想がいかにもバカバカしくて楽しい。
そして一文無しがやってきて自分の番号と一等の番号を見比べるところもなんともいえないおかしさに満ちている。
鯉昇師匠の「宿屋の富」はシュールな不思議さに満ちているのに、一朝師匠の「宿屋の富」は江戸前っぽい軽さがあって、噺家によって噺の印象ってこうも違うものかと思うと、落語ってほんとにおもしろい。

「淀五郎」
一朝師匠の「淀五郎」は前にテレビで見たことがあったのだが、本当に素晴らしかった。
芝居がかりなところがこれみよがしでないのにすごく雰囲気があってかっこいい。
教えてくれない親方も嫌味なくカラっとしていて意地悪さがない。
そしてなんといっても中村仲蔵の包み込むような優しさが一朝師匠と重なってじーん…。
淀五郎の芝居を見ているシーン。なにも喋らずタバコを吸っているしぐさをしながらじーっと見つめる。落語でこんなふうに沈黙が続くのを初めて見た気がする。
これじゃいけませんよと言いながら諭すように事細かく教えてくれる仲蔵の人柄が素敵。
そして最後のシーン。花道に親方の姿が見えず慌てる淀五郎が落語的で好きだなぁ。芝居と落語が重なる最後のセリフがたまらない!

のだが、なんとここで我慢しきれず(?!)後ろに座ったおじいさんが一朝師匠と声を合わせてセリフをご唱和。
え、ええええ?こんなのあり?!席が近いゆえに一朝師匠の声よりじーさんの声の方でさげを聞いちゃったよ。(がっくし…)
気持ちはわからないじゃないが、さげのご唱和は家だけにしていただきたいよ、ふんとにもう…。