りつこの読書と落語メモ

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まるでダメ男じゃん!:「トホホ男子」で読む、百年ちょっとの名作23選

★★★★★

坊っちゃん』『カラマーゾフの兄弟』『シャイニング』etc.etc.ジコチュー型から尻軽タイプまで、数々の傑作小説に登場する「ダメ男」たち。不朽の名作に、こんな楽しみ方があったとは!

内省的で理屈っぽくて多弁でそのわりになに言ってるか分からないのは私が頭が悪いからなのね、と思っていた文学作品も、豊崎社長の手にかかれば、非常に分かりやすくどれも興味深く読んでみたくなる。
カラマーゾフの兄弟」も「舞姫」も「ガラスの動物園」も、出てくる男たちを「こんなにダメ男!」と笑わせながらも、根底には書くひと、作品へのリスペクトがあるから、不快感を与えないのだと思う。

「ボヴァリー夫人」の旦那、「ガラスの動物園」の家に招待された憧れの君、まさかこの人たちを「ダメ男」として切り取るとは!
そういう視点から読んだことがなかったから、とにかく「不幸」「悲劇」として鬱々とした気持ちになっていたけれど、そうか!ダメ男だったのか、奴らが!と目からウロコである。

笑えるフレーズもたくさん。

わかります、あなたの気持ちはわかります。あなたの母は非道い。だが、しかし、あなたはしつこい。

そういうの、あるある。日本の男の書く私小説のしつこさよ。いい年したじじいがまだ母親への恨みを捨てきれずにいるのかよ!もうええやろ!と言いたくなること、結構あるだけに「我が意を得たり」とスッキリ爽やか。

そして何を読んでも決してキライになれない西村賢太作品、これを読んでなるほどと納得。敬遠されがちな文学作品をダメ男という視点から切り取ることでスッキリ分かりやすく紹介しているのはさすが。

読んでみたくなったのは
森鴎外舞姫
マリオ・バルガス=リョサ「小犬たち」
藤枝静男「空気頭」
川崎長太郎「抹香町」