火宅の人
★★★★★
「チチ帰った?」「うん帰ったよ」「もう、ドッコも行かん?」「うん、ドッコも行かん」「もう、ドッコも行く?」「うん、ドッコも行く」女たち、酒、とめどない放浪。崩壊寸前のわが家をよそに、小説家桂一雄のアテドない放埒は、一層激しさを加えた。けれども、次郎の死を迎えて、身辺にわかに寂寞が……。二十年を費し、死の床に完成した執念の遺作長編。〈読売文学賞・日本文学大賞受賞〉
面白かった~。
主人公の桂一雄はまぁひどい男でこれがほぼ実話であるならば作者自身たいがいなクソ男だと思うけど、溢れんばかりの生命力と破滅的な生き方とそれらを俯瞰して見つめる冷徹さにクラクラする。
男の身勝手な論理を振りかざしもするけど、悲惨な末路も余すことなく描くところに、真っ直ぐさと優しさ、潔さを感じる。
露悪的なところもあるけど羞恥心もあって、深刻な中にユーモアがあるのが好きだ。
上巻の渡米した頃のところが読んでいて一番焦れたけれど(恵子とのことを清算しようと思って渡米したくせに嫉妬に狂って狂言自殺(の真似)?!また別の女?!牛乳と焼酎のチャンポン?!)、それが後半に効いていて、小説としての面白さを倍増させているのも凄い。
他の作品も読みたいし、壇一雄のことももっと知りたい。