楽園のカンヴァス
- 作者: 原田マハ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01
- メディア: ハードカバー
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ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間―。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。
文句なしに面白かった!
MoMAの学芸員ティム・ブラウンはある日自分宛の手紙を受け取る。差出人はコンラートバイラーの代理人。バイラーは名前は広く知られつつも誰もその姿を見たことがない伝説のコレクター。
そのバイラーが自分が所有しているルソーの名作を調査して欲しいというのである。
一介のアシスタント・キュレーターである自分にそんな依頼をしてくるわけがない。おそらく自分の上司で一文字違いのトム・ブラウンと間違えているのだろうと疑いながらも、ルソーを熱烈に愛しルソーの魅力を伝えたいと願っているティムはトムが夏休み中であることを言い訳にして、一人バイラーのもとを訪れる。
バイラーの邸宅を訪れるとそこには自分の他にルソー研究の第一人者である織絵という女性も招かれており、ある物語を読んでバイラーの所蔵するルソーの「夢をみた」という作品の真贋を見極めてくれと依頼される。
2人のうち優れた評をした方に「夢をみた」の権利を全て譲る、というのである。
まるで翻訳物(私の大好きな「風の影」や「螺旋」や「13番目の物語」などなど)を読んでいるようなスケールの大きさと臨場感!
ミステリー仕立てのストーリーもさることながら、物語の中で語られる作者不明の物語がいつまでもこの物語を読んでいたいと思うほど非常に魅力的で、登場人物がみな生き生きとしていて、絵画に対する愛が溢れていて、もう言うことなし。
先が気になってページをめくる手が止まらず、しかしこの世界から離れがたい。
こういう本に出会いたくて本を読んでいるのだ!と言いたくなる、素晴らしい作品だった。