異国のおじさんを伴う
- 作者: 森絵都
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/10
- メディア: 単行本
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思わぬ幸せも、不意の落とし穴もこの道の先に待っている。どこから読んでも、何度でも、豊かに広がる10の物語。誰もが迎える、人生の特別な一瞬を、鮮やかにとらえる森絵都ワールド。
アーヴィングでよれよれになったので、森絵都さんの短編で箸休め。
これが期待以上によかったのだなぁ。
10篇収められているのだが、1作目の「藤巻さんの道」でヤラれる。
仕事ができて気配りができて笑顔が素敵な藤巻さん。
彼女に自分のお気に入りの「道」の写真集を見せて、好きな「道」を聞いてみると、藤巻さんは彼女のイメージからは程遠い荒んだ道を指差した。
一体彼女のどこにこの道を選ぶような一面があるのか。一気に彼女に惹かれ、付き合い始めるのだが…。
深刻に見えてそれに終わらないところがたまらない。
この意外性がいいっ!と心をぐわしっと鷲づかみにされる。
「夜の隙間を埋める」の異国感もとてもいい。
この不条理な感じ。でもふっと心が通じる感じ。
何気ない日常の中でふっと空気が変わり上を向く瞬間を切り取るのが、とても上手いなぁ。
最後にあっと驚く「思い出ぴろり」も良かった。
一番良かったのは表題作かなー。
もらってしまった大きなビアード・マン。とほほなようだけど、とほほじゃないんだなぁ。むしろかけがえのないお宝を手にしたのだ、たぶん、きっと。
とほほを宝物にする力を私たちは持っているのだ、きっと。
10篇がこれで終わるところがなんとも言えずいい。