りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

2/26(月)お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十六回「亜米利加までも・・・」
~仲入り~
・さん助「手水廻し」
・さん助「人形買い」


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十六回「亜米利加までも・・・」
この日、鈴本で18時上がりの高座を終えて移動してきたさん助師匠。かなりお疲れの様子で、また先月のドッポの時と同様「打たれる時の斎藤」みたいな顔をしているので不安がつのる、るるる…。
鬼怒川温泉に仕事で行ってきた話などの立ち話の後、高座へ。

密会を重ねるお静と義松だったが、清蔵に踏み込まれて義松は川に飛び込んで逃げ、お静はすべての罪を女中のお常に被せ、清蔵も惚れた弱みからお静を受け入れて元の鞘に収まる。
しかし義松のことを忘れられないお静は、あれから義松はどうしているのか、どこにいるのかと思いを募らせている。

ある日、洗濯屋のお竹婆が奉公人と義松の噂をしているのを聞きつけたお静はお竹を呼んで問い詰める。
お竹から義松が隣家の質屋のお重と清蔵ができていることを聞いて強請に行ったことを聞いたお静は「もともと二人の仲には気づいていたけれど、そういう行動をとるとはさすが義松」と惚れ直す。
それを見たお竹が「あんなやくざ者にかかわらない方がいい」と言うと、「もともと泥を飲んできたあたしをなめるんじゃない。お前が清蔵に告げ口をしていることはとうにわかってる」とすごむ。

その夜、大川を一艘の怪しい舟が渡ってきて、お静が寝ている部屋へ泥棒が押し入ってくる。
ほっかむりをして顔を隠した泥棒は「有り金を全部出せ」とお静を脅す。
お静は「見込まれたのなら仕方ない」と金を差し出すと、泥棒はお静に猿ぐつわをはめ、連れて逃げる。
しばらくして舟の上で泥棒がほっかむりをとると、これが義松(←そうだと思ったよ!)。
お静が清蔵とよりを戻したことを聞いて怒り、金とお静の命を奪うつもりで押し入ったが、いざお静の姿を見るとまだ惚れていてそれができなかった、という。
それを聞いたお静は、自分もずっとお前に恋焦がれていた、殺されるのなら本望だ、と言う。
それならば自分と一緒にどこか遠くへ行き夫婦になって一緒に苦労してくれるかと尋ねる義松に、お前と一緒ならどこまででも行く、たとえアメリカまでも(←それがこのタイトルなのか!)と答えるお静。
二人は深川に舟を乗り捨て、木更津へ逃げる。

清蔵は泥棒の後を調べさせるがお静の行方はわからない。
また関係が明るみになったお常とも別れさせられてしまい、一気に二人の女を失ってすっかり意気消沈。
一時は栄華を誇った西海屋もどんどん左肩下がりになっていき、清蔵は裏長屋に引っ込み病を得てしまう。
3年寝込んでどうにか病は治ったものの、生きているだけの状態になってしまう。

…この後、木更津に行った義松とお静の物語に入っていくらしいのだが、なんと義松は親分になっていく任侠物へ…。
ほんとにこの物語がどういう展開になるのかさん助師匠にも謎らしい。
そして談州楼燕枝の筆致が、今回のように話がががっと展開するところではほんとにスピーディーに展開し、殺人や濡れ場のところはこれでもかとこってり詳細に書かれているらしい。

任侠かー。うへぇー(苦手)。
いやでもさん助師匠が今日の西海屋の出だしのところで「忍び寝(だったか?)を破られた二人」という表現にやたらと食いついて「こういう文章が私にはたまらないんです」と言ったり、西海屋を乗っ取った清蔵に敵討ちをする話じゃないの?!と戸惑ってたりするの、楽しい~。

さん助師匠「手水廻し」
噺が始まってすぐにうぉーーーっとなる。これは「手水廻し」!
「手水廻し」といえば圓馬師匠のがもうたまらなく大好きなんだけど、前回のドッポの帰りにこの会の常連のお客さんで「さん助さん、手水廻しやらないかなぁ」とおっしゃっていた方がいらしたのだ。
うおおーーー、確かにすごくさん助師匠に合ってる!いいよね!やってほしいね!持ってるのかなぁ?と盛り上がったんだけど、まさかその会話を聞いてたわけじゃないよね?!すごいすごい!

いやもうこれがめちゃくちゃ面白くて。
女中さんが部屋に入ってくるだけで面白いってなんなの?!
「ちょ、ちょぅずぅ?」も予想した通り素っ頓狂でおかしい。
和尚さんから「長い頭と書いて、長頭(ちょうず)」と教わり、引っ越してきたばかりの顔がながーい男を連れていくバカバカしさ。
そして「おらこの村に越してきたばかりで何か恩返しがしたかっただ」と言ってながーい頭を回すばかばかしさ。
さん助師匠が頭とあごのところに手をやって顔の長いのを表現しているのがまたおかしくておかしくて。
笑ったー。


さん助師匠「人形買い」
「こんな私でも稽古をつけてくれとお願いされることがあります。前座さんとかもあるんですが、自分より上の真打の師匠から言われることも」
さん助師匠がそういうと客席から「ええ?」と驚きの声が。
それに反応して「この話よそうかな…」と肩を落とすさん助師匠。
きゃー聞きたいー心折れないでー。

この間も「熊の皮」を教えてくれと言われまして。
稽古ってたいてい浅草演芸ホールの2階の6畳間とか協会の2階とか…狭いところで差し向かいでやるので、かなり恥ずかしいんです。
でも「稽古を頼まれたら全力でやれ。お客様を前にするよりもっと全力で一生懸命やれ」というのがうちの師匠の教えでして…。
なので全力でやったんです。
で、やり終わったらその師匠が「あ、ごめん。レコーダーが動いてなかった。もう一回!」

えええ?と思ったけど先輩ですから「わかりました」ともう一度全力で。
するとその師匠「うん。1回目よりよかったよ」

…稽古をつけられているのはどちらだったのか…。

それから前座さん…この間寿伴さんに「雑排」を頼まれまして。
上の師匠方に稽古を頼まれた時は「やっていただいて結構です」と上げの稽古はしないんですが、前座さんの場合は…私は見なくてもいいやと思ったんですが、自分に置き換えてみると…自分が前座の時、上げてもらわないとやりづらいんですね。やっぱり見てもらいたい。
だから寿伴さんには上げの稽古もしたんです。
そうしたらあの人はとてもまじめな人で…私が教えたとおりに…「ねこのこのぉーーーー」って真っ赤な顔をして再現するんです。それを見て「ああ、自分はこういう芸風だったのか」と…。

…ぶわはははは!!最高すぎる!!
そうなんだよ見たんだよ池袋で寿伴さんの「雑排」を。これは絶対さん助師匠から教わったんだ!と思ったからもうおかしくておかしくて。
その話を聞けて、ほんとにうれしかった。

そんなまくらから「人形買い」。
以前さん助師匠で聞いたことがあったはずと調べたら、Una様の夜の九時落語で聞いていたのだった。
あの時聞いたよりずっと面白くなってた。
そして講釈の先生とか占いの先生とか…難しい文句を全部覚えてるんだから、落語家さんってすごいな!と改めて感動。

おしゃべりな定吉がおかしかったー。小僧さんやるときのあのしゃくれ顔、反則だわー(←ほめてます)。

2席ともとても楽しくて、前回ドッポの時の「さん助師匠の内側からピカーっと明るい落語が早く聞きたい」という願いがかなってとってもうれしかった。