くちなし
★★★★
別れた愛人の左腕と暮らす。運命の相手の身体には、自分にだけ見える花が咲く。獣になった女は、愛する者を頭から食らう。繊細に紡がれる、七編の傑作短編集。
表題作を読んで「え?前からこんな風な作風だったっけ?まぁ最近はこういうのが流行ってるからねぇ…」とちょっと失礼な感想を抱いてしまったのだが、「愛のスカート」でヒリヒリして「あ、すごく好き」と思い、「薄布」で「ぬおおおお」とひれ伏した。
ものすごくデリケートなんだけど凄みを感じる作品群。
「山の同窓会」も好き。
愛することのみっともなさ、揺るがさな、うつろいやすさ、わかりあえなさ。
自分の中のデリケートで弱い部分を時々ちくっと刺すような表現や描写があってドキドキした。