りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

フライデー・ブラック

 

フライデー・ブラック

フライデー・ブラック

 

 ★★★★

新人作家としては破格の注目を集め、一躍アメリカ文学界の最前線に立つ一人となったナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー。その視線は、ローカルな日常から近未来的なディストピアを照射し、全人類に根源的な問いかけを挑む。

音楽の世界ならケンドリック・ラマー(ラッパー初のピュリッツアー賞受賞者)やチャイルディッシュ・ガンビーノ(2019年度のグラミー賞受賞者)、映画・テレビの世界ならばジョーダン・ピール(『ゲットアウト』『アス』)やドナルド・グローヴァー(テレビドラマ『アトランタ』。チャイルディッシュ・ガンビーノと同一人物)など、新世代のアフリカ系アメリカ人クリエイターたちの感覚と呼応する、アメリカ文学界からのパワフルでシニカルでスリリングな一撃。

「ブラック・ライヴズ・マター」の過酷な現実に生きながら、日常SFともいえるようなシュールでストレンジな展開を生み出す想像力の豊かさやその筆力は、一度足を踏み入れた読者を引きずり込むような圧倒的な引力をもつ。

映像や音が浮かんでくるような臨場感のある物語体験と、根底に流れる強く深いメッセージ性を、身体で感じてください。

いまもまだこんなに差別があるの?と一昔前なら思ったかもしれないがBLM運動も記憶に新しくまぎれもなくこれが「今のアメリカ」なのだろう。

正義とは?人権とは?と憤りを覚えるが、コロナ禍で差別やヘイトがさらに激しくなってきていることは日本も同じ。
差別される側は悪目立ちしないように常に丸腰であることを周囲にアピールしつつ生きていかなければいけない。しかしそれが我慢の限界に達した時…。
表現がロックというかポップなので、残虐なシーンも過激な音楽とともに流れる映像のよう…。表現の仕方が見事だと思う。

「フライデー・ブラック」は消費社会に渦巻く暴力性をリアルに描き出していてぞくぞくした。「ジマー・ランド」のおぞましい光景をじっと見つめる子どもの視線が怖い。

辛い物語が多いけれどポップでブラックユーモアいっぱいなのでそれで浄化されてる部分もあるように感じた。
面白かった。