りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

喬の字改メ五代目柳家小志ん真打昇進襲名披露公演

7/11(土)、横浜にぎわい座で行われた「喬の字改メ五代目柳家小志ん真打昇進襲名披露公演」に行ってきた。

 

・左ん坊「子ほめ」
・さん助「黄金の大黒」
・喬之助「夏泥」
・さん喬「笠碁」
~仲入り~
・口上(さん助、小志ん、さん喬、喬之助)
・和助 太神楽
・小志ん「千両みかん」

さん助師匠「黄金の大黒」
おめでたい会にふさわしく「黄金の大黒」。
家賃を払ってない長屋の連中。子どもが3歳になったけどこの子が生まれて以来一度も払ってない、越してきた時に一度だけ入れたなどというツワモノたちの中、「すみませーーん。家賃ってなんですか?…まだもらってませーん」に笑う。腰は低いけど図々しいな、おい。

そして家賃の催促じゃない、ごちそうしてくれるらしいって聞いて、「すみませーん。ごちそうっていうとなんですか?普段食べられないものが出てくるんですよね?」
「そうだよ」
「ふだん食べられないっていうと…あつあつのおまんまの上にかつおぶし乗っけておしょうゆを垂らして…」
ねこまんまじゃねぇかよ!」

…何度か聞いてるフレーズなんだけど、なんかおかしくてゲラゲラ笑ってしまう。
そして長屋の連中のくだらない会話の中でぼそっと「今日は口上の司会なんだよ!人生で二回目なんだ!もう緊張して昨夜は一睡もできなかった!それどこじゃないんだ!」。

え、えええ?口上の司会をさん助師匠が?!それは嬉しい!!

大家さんのお宅に上がって飲み食いする場面の前で切ったけど、なんかとても楽しい「黄金の大黒」だった。

 

さん喬師匠「笠碁」
つまらないことで喧嘩をしちゃって出かける場所がなくなってしまったご隠居二人とコロナ禍で家にこもりっきりになってた日々が重なって、うっとなる。
私はこうしておそるおそる出かけて行ってはいるけれど、寄席や落語会に来る人の数は明らかに減ったし、特に老人の姿が減ったなぁと感じる。
そりゃそうだよね…。

おじいさんたちの意地の張り合い。
せっかく家の前まで来てくれているのにチラチラ見るだけで通り過ぎて行ってしまう。
目が合ってるのに「入れよ」と声をかけてくれない。
そんな苛立ちも「入りづらいんだろう。だったら入りやすくしてやろう」と気づいたことで溶けていく。

いいなぁ。
サゲの部分を少し変えて、より分かりやすく…伝えたいというさん喬師匠の想いが伝わってきた。
良かった。

 

口上(司会:さん助師匠、小志ん師匠、さん喬師匠、喬之助師匠)
見るからに緊張しているさん助師匠に見ているこちらもドキドキだったけど、大きな声でちゃんと立派にやりきった!(←母親目線)

さん助師匠:
小志ん師匠が見習いで入って来た時、自分は二ツ目になってお礼奉公中。丸1年を一緒に過ごしたけれど、彼はほんとによく気が付いて器用なので…私がめんどくさいなぁと思ってると「兄さんいいですよ、僕がやっておきます」。私が眠たいなぁと思ってると「兄さん、寝ててください。僕がやっておきます」。私がだるいなぁ…と思っていると…

「お前、何もやってないじゃないか!!」さん喬師匠の声が飛んで、大笑い。

(気を取り直して…)
それから彼の真打昇進が決まった頃に池袋演芸場だったか…袖で落語を聞いてたんですけど…ちょうどその時彼は「転宅」をやっていて…そうしたら彼の姿が消えて泥棒とお妾さんの姿が浮かんできたんですね…器用な彼がこうやって落語に取り組んで…彼の姿が消えて登場人物だけになって…器用なんだけど姿が消えて…

「何が言いたいんだよ!」今度は喬之助師匠の声が飛んできて笑ったー。

 

喬之助師匠:
ほんとはこの会は2月にやるはずだったんですがコロナ禍で延期になってこんな時期になりました。もう新しい真打も出てきていて「いつまで披露目をやってるんだよ!」と思われるかもしれませんが、そういう事情なので…。そしてこういう中、こうして足を運んで小志んの昇進を祝っていただいてありがとうございます。
よく我々「真打になるまで頑張ってね」とお客様に言われることがあるんですけど、真打というのは我々にとってゴールではなくスタート地点。
これからも小志んの名前を見たら寄席に入っていただいて拍手をあげてください。
良くない高座の時は「ふん!」でも構いません。それも応援になりますから。

…口上に上がる人数が少ないせいか、とてもまじめで心のこもった口上。じーん…。

 

さん喬師匠:
開口一番「さん助に司会をさせるんじゃなかった」に大笑い。
小志ん師匠が自分の鈴本のトリの芝居の時に「弟子にしてください」と通ってきたときの話。
断っても断っても毎日通ってきて幟のあたりで待っていて…その時はもうお弟子さんもたくさんいたし断っていたんだけど情にほだされてしまった。

彼に限らず最近の若い子は口調が全く落語の口調と違うのでそこから教えないといけない。
はっつぁんがご隠居に向かって「こんにちは」という…その「こんにちは」が全然落語にならないので苦労しました。
でも彼が偉いのはとにかくいろんなところに自分から出向いて行って「ここで落語させてください」とお願いして小さな会を幾つもやってきたところ。
そうやって繰り返し会をやる中で徐々に落語もよくなるし、お客様もついてくださる。

…さん喬師匠がそう言っているあたりで、小志ん師匠の涙腺が崩壊。
どなたか二ツ目さんが小志ん兄さんは師匠の口上で必ず泣く、それも泣く場所がいつも一緒って言ってたけど、きっと「ここ」だな(笑)。

撮影タイムもあってこじんまりしていたけど心のこもったいい口上だったー。

 

和助さん 太神楽
一人で登場の和助さん。私はこの方の太神楽が一番うまいと思う。
五階茶碗もやっぱりちゃんとできるんだね(笑)。抜扇の時、抜いた扇子が落ちてちょっとドキドキした!
土瓶の曲芸も見事。
それから和助さんらしく「太神楽やれると暮らしに役立つシリーズ」のバカバカしさもよかった。

自分の師匠である和楽師匠が小志んさんのことを気に入っていて「小志んを継いでくれたらいいなぁ」と語っていたというエピソードも。

 

小志ん師匠「千両みかん」
おっちょこちょいな番頭さんがドタバタするところ、若旦那が徹頭徹尾鷹揚なところが結構ちゃんとしていて説得力があった。

さんざん駆けずり回ってみかんを見つけて、みかんのために大旦那がポンと千両を出すところを目の当たりにして、自分との立場の違いをまざまざと見せつけられた番頭さん。
このサゲ、落語らしくて楽しいなぁと思う。

 

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