りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

11/19(月)、ミュージックテイトで行われた「林家きく麿独演会」に行ってきた。

・きく麿「お餅」
・きく麿「ベタ刑事」
~仲入り~
・きく麿「殴ったあと」

きく麿師匠「お餅」
地方の仕事に行ってきた時の話。
もう何度もそこで会をやらせてもらっているのでお客さんもすっかり馴染んで、中には楽屋に訪ねてきて「今日は何席やるの?3席?だったらそのうち新作は1席にしてくれよー。おれ、古典が好きなんだよ」などと言ってくるおじさんもいるらしい。
そして落語の後は打ち上げ。住職が気を使ってビールの小さい缶をお客さんに配り、それを持ってみんながきく麿師匠にお酌をする列ができる…。そ、そんなにビール飲めないから、みなさん自分で飲んで…。
打ち上げも2時間ほどで終了し数名だけが残り今度はカラオケ大会。住職が勝手に小林旭を3曲入れてしまい、歌わざるをえない…。
解散になったあとは一人、お世話になっているスナックへ。
そこには常連のおじいさんたちやちょっと気だるいお姉さんがいたんだけど、しばらくするとそのうち一人のおいじいさんが帰るところ。
お姉さんが「おごってくれてありがとね」と言って見送りに出たのだが、いつまでもドアが開いたままでなんだろう?と見てみると、そのおじいさんがお姉さんにキスをねだって唇を突き出してる!
お姉さんは「あのね…ビール二杯でチューはしないから!」ときっぱり。
ようやく諦めておじいさんが帰って行ったのだが、それを見てマスターが「あの人にはすごい特技があるんだよ。凄腕なんだよ」。
「いったいどういう特技?」と聞くと「嫌がらずにおっぱいを触らせてくれるお姉さんを見抜けるんだよ!」。
…いやいやいや、それは触らせてくれたとしても嫌がってないわけじゃないですから!と思ったのだが、しきりに感心しているマスター…。

…ぶわはははは!
きく麿師匠の旅のまくらって最高だな!!
そのお姉さんのことを「紅をさしてるいい女」みたいに言ったのもなんかツボだった。

そして末廣亭12月上席夜の部の初トリについて。
師匠にそのことを報告に行ったら「やったーーー!」と言って師匠が飛び上がって喜んでくれて、ああ、こんなに喜んでくれるんだ…とうれしかったというのが微笑ましい。
10日間休みなしで出るので毎日違う噺をかけたいと話しながら、やはり年末だし、自分も年末やお正月を感じさせるような噺もしたいな、と言いながら…口をくちゃくちゃするしぐさ。
うおおおー「お餅」だー。そうか、これがきく麿師匠における「芝浜」なんだ(笑)!

新作ってウケる時とウケない時の差が激しいから、寄席でかけるのって勇気がいると思うんだけど、特にこの噺は勇気いるだろうなぁ…。なんたって始まりがとても静か…。でもこれがもうたまらなく好き。この静かな始まりが。
きく麿師匠の落語の導入部分、すごく好きなんだ。「珍宝軒」「スナックヒヤシンス」「歯ンデレラ」。
え?なになに?どういうシチュエーションなの?どういうこと?ってわからずに、意味があるようなないような会話に引き込まれる楽しさ。そこがすごく落語らしい。
かみ合ってるようなかみ合ってないような二人の会話で、時々片方のおじいさんのテンションが少し上がって大袈裟な表現をすると、もう片方が冷静に「それ、違いますね」と即座に否定するおかしさ。
そして時折出てくる「ゴローさん」の名前。
なんかよくわからないけどその繰り返しが妙におかしい。
そして名前だけ出てきたゴローさんが登場してから、一気に上がるテンション。
ああっ、いいっ。面白いっ。これ、初トリの末廣亭でかけるのとっても勇気が必要そうだけど、お客さんにドンピシャ!ではまったら気持ちいいだろうなぁ。

きく麿師匠「ベタ刑事」
おおお、久しぶりに聞く「ベタ刑事」。
ベタとは、シュールとは、そしてナンセンスとは、という意味を問う新作。きく麿師匠にしたら珍しく理詰めの噺(笑)。
コワモテだけどお笑いについて褒められるとうれしくて顔がにやけてしまうベタ刑事がかわいい。
ベタだと激怒するベタ刑事が新米刑事に言う脅し文句が大仰だけどばかばかしくて大笑い。楽しかった!

きく麿師匠「殴ったあと」
同期の彩大師匠と旅の仕事に行ったときにできた新作という紹介から「殴ったあと」。
訳あり気な仲居さんが自分の訳あり人生を浪曲でうたうばかばかしさ。またこの浪曲が妙にうまくて、でも決してうますぎず…というこのバランスがたまらなくいい。
それを聞く上司と部下の関係性も絶妙。
わかっていても笑ってしまう。
これを末廣亭のトリで聞くことになるのかしら。楽しみ!