りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

瀧川鯉八独演会 ちゃお2

7/29(日)、内幸町ホールで行われた「瀧川鯉八独演会 ちゃお2」に行ってきた。

・かけ橋「馬大家」
・鯉八「青菜」
・南なん「夢の酒」
~仲入り~
・鯉八「かくあるべし」
・鯉八「ワレワレハ」


かけ橋さん「馬大家」
わーーー、小かじさーーん。
ニツ目になって「売れてやるぜ」という野心を燃やしているように見えていた小かじさんがいつのまにか落語協会を脱会していて本当に驚いた。
何か月か前にその小かじさんが柳橋師匠のところに入門したらしいと聞いていたけど、こうして前座さんとして高座に上がる姿が見られて、よかったよー。
しかも十八番の「馬大家」。なんとなく最近そんなに高座に上がってないのかなという感じがしたけど、喋っているうちにどんどん調子が上がってくるようで、よかった。がんばれ~。


鯉八さん「青菜」
CDのまくらからまさかの「植木屋さん、ご精が出ますな」。
ええええ?鯉八さんが「青菜」---?!
「青菜」と見せかけて新作なんでしょ?と思っていたらこれが本当に正真正銘「青菜」。
ああ、でもそうだ、鯉八さんって古典落語が好きなんだった。毎月神楽坂の会に通っていた時、よくそういう話をされていたっけ。

前半はほんとにちゃんとした古典そのままの「青菜」。
もちろん鯉八さん風味ではあるんだけど、でも驚くほどさらっと江戸前

「俺もやってみてぇなぁ」と家に帰って、おかみさん。これが…植木屋さんの顔を見るなり「…はぁぁぁ…」と大きなため息。
「遅いじゃないか」とかそういう文句をがなり立てるんじゃなくて「…はぁぁぁ」ってため息つくのがいかにも鯉八さんらしくて大笑い。
そしてこのおかみさんと植木屋さんとの会話が絶妙。
「お屋敷の奥様はお前と全然違う」と言われておかみさんが「…比べないでっ!!あたしとお屋敷の奥様と比べないでっ!!」。
そういわれて「悪かったよ。比べないよ。比べない!」。
その後、「奥様がこうやって手をついて…比べてないよっ比べてるわけじゃないよ!」のおかしさ。
そして「疲れた疲れた」言って気だるそうだったおかみさんが「たつんべが来た!お前やってくれないか」と言われると「やる!!面白そうだから、やる!!」。
「押し入れに入ってくれ」「入る!!面白そうだから、入る!!」。

サゲが少し変えてあったけど、ちゃんとしてるけどでもちゃんと鯉八さんらしい味付けの「青菜」だった。よかったー。
鯉八さんの古典聞いたの初めてだったかもしれない。


南なん師匠「夢の酒」
「私は小南の弟子で、よく師匠をしくじりました」で、「夢の酒」だ!とわかる南なんファン。
今回は前に聞いたことがないしくじりエピソードが二つ。
北海道に仕事に行ったとき、飛行機に乗って忘れ物に気が付いてスチュワーデスさんに止められるのも聞かず飛行機を飛び出してロビーへ。忘れ物を見つけて飛行機に乗るまで離陸できず迷惑をかけてしまった。自分だけじゃなく師匠までも他のお客さんから「おめぇがこのまぬけの親分だな」と白い目で見られた。
師匠に「ばかやろう、お前はいったい何を撮りに行ったんだ」と言われ「ビニール傘です」と答えたら師匠の怒りがさらに燃え上がり、飛んでる間中小言。飛行機の中の小言はいけません。逃げ場がありませんから。

…ぶわはははは。
制止されるのもきかず飛び出す南なん師匠が目に浮かぶ…。
それからもう一つはインコ事件。これももうインコをどうにか鳥かごに戻そうと格闘する南なん師匠が目に浮かんでおかしい~。

そんなまくらから「夢の酒」。
お花に夢の話を聞かせてくれと言われてばか正直に向島の女がどんなに美しくて色っぽかったか、惜しい切れ場だったかを事細かく話してしまう若旦那。
夢の話とわかっていながらやきもちをやいて取り乱してしまうお花さん。
そしてあきれながらもお花の言うことを聞いてやる大旦那。
南なん師匠の「夢の酒」は特に大旦那のやさしさが独自で大好き。

夢の人に会いに行ってください、いますぐ、と言われて「はいはい。わかったよ。これでいいのかな?」とすぐに会いに行ってくれる大旦那。
意見してやらなくちゃと思いながらも、家にあげられてお酒と聞くとつい「いや、冷やはだめなんです」と言わずにいられない酒飲みらしさがかわいらしい。

余計なギャグとかそういうのいらない。「夢の酒」は南なん師匠のが一番好きだな。


鯉八さん「かくあるべし」
素晴らしい完成度。
それだけじゃなく、まくらで言ってた「パラレルワールド」の話。
もし自分が前座のころに「お前も新作やらない?」と声をかけられていなかったら…今頃古典に精進して「青菜」をやってたかもしれない…。
ああ、その「青菜」を一席目にやってくれたんだね。ということはあれは一つのパラレルワールドの入口だったのかも。うわーー。

「かくあるべし」
ほんとにすごく独自でスピード感があってグルーブ感がある新作。かっこよかった。


鯉八さん「ワレワレハ」
初めて聴く噺。ネタ卸しだったみたい。

相談者が入ってくるとすでにうんざり気味の回答者。
「で、今日はなんですか?」と聞くと、相談者の女性。
私見たんです。」
「ああ、またですか」
「またってなんですか?」
「ああ、…続けてください」
「仕事の帰りに夜道を歩いていたら、空にぽつっと光るものがあって、なんだろうと見ていると…それがだんだん大きくなってきて…UFOだったんです」
「ああ、やっぱりまた…それでどうしました?」
「そこから降りてきたのが…人間みたいなんだけど背が小さくて目玉がぎょろっとしていて色が灰色の…宇宙人だったんです」
「はいはい、それで?」
「それでその宇宙人が言うには…」と言って、喉のところを叩きながら「ワレワレハウチュウジン」

宇宙人なんかいないんですよ。UFOだって存在しない。
それをキレ気味に論理的に説明する回答者。
質問者を帰すと、上の方に向かって「〇〇さん。だからさっきから言ってるでしょ。もう宇宙人を見たっていう人は通さないで。その質問をする人は通さないで。わかった?聞いてる?」

次に入って来た男性。
「で、今日はなんですか?」
「私、見たんです」
「ああ、またですか」

質問者の話が全く同じとところと微妙に違うところの加減が絶妙におかしい。
そしてどう転んでいくか予測のつかない楽しさ。
すごいっ。

内幸町ホールいっぱいのお客さんの前で堂々とした高座。新しいお客さんがいっぱいだった。すごいな、鯉八さん。