りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第205回大師寄席

11/27(日)、川中島明神社で行われた「第205回大師寄席」に行ってきた。

・市若「転失気」
・南なん「尻餅」
~仲入り~
・鯉栄「義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
・南なん「居残り佐平次


南なん師匠「尻餅」
「この間の雪の日は仕事がなかったんですよ」と南なん師匠。
「なかったからうれしかったですね。これが雪で出かけないといけないと大変ですから。そしてこういう雪の日でもいらっしゃるお客様いるんですよね。だから寄席も休みにならない。天皇陛下が亡くなったときでもいらしたお客様がいたんですから。そうですね。ちょうどこれぐらい。」そう言って笑顔で客席を見渡す。

あの時はレンタルビデオ屋さんのビデオが全部借りられちゃって棚が空になっちゃってね。
棚の中に一本だけ残ってたビデオがあってそれが『皇室アルバム』だったんですね。なにせテレビでそういうのばかりやってますから。

年末っていうと昔は餅をついたもんです。
今日もここに来るとき、商店街に餅つき大会のチラシが貼ってありましたけど。今はそういうふうにイベントとして餅つきをやることはありますけど、家庭で餅をつくことはなくなりました。
私が子供の頃はまだありましたね。
路地や庭で餅をつく風景が。

お正月、前座の頃は楽しみでした。お年玉をもらえるんですよ。ニツ目、真打、色物の先生方から。
でもニツ目にあがってからはあげる一方。それも定年がありませんからずっとあげ続けないといけない。
だからもう正月はうれしくないです。正月、4年にいっぺんくらいでいいんじゃないですか。年もとらなくてすむし。

そんなまくらから「尻餅」。
年末、おかみさんが旦那さんに「年末だっていうのにうちだけ餅をついてない」と文句を言っている。
長屋25軒あるけどどの家だって餅屋を呼んで餅をついてるのに、うちだけだよ。ついてないのは。」
そんなこと言ったって銭がねぇんだからしょうがねぇじゃないか」
「それが情けないっていうんだよ。なんとか工面して餅ぐらい用意したいよ」
「ほんとに25軒あって餅を用意してないのはうちだけか?じゃ、一軒につき2個もらってくればずいぶんな量が集まる…」
「くだらないこと言ってるんじゃないよ」

そんなに餅屋を呼びたいか。じゃおれがやろうじゃないか、と亭主。そのかわり、お前もちゃんと協力しろよ。
何のことかと思ったら、餅屋を呼ぶ演技をして長屋中にその声を聞かせようというのだ。

女房の半纏を奪って外に出た旦那。
「誰も見ちゃいないだろうな。見られたら気が違ったと思われる」とぶつぶつ言いながら餅屋の男、若い衆2名の声色を使ってえっほえっほ臼を運んできたつもりで、扉をどんどん叩く。
お前、本気でそんなことやろうっていうのかい?とあきれる女房に、「餅屋に酒を出せ」と言って湯呑に入れた水をがぶがぶ飲んだり、芸が細かい旦那。
しまいにはおかみさんに尻をまくらせて「ぺったんぺったん」やり始める。

もうどこからどこまでもばかばかしくて楽しい楽しい。
そもそも落語が一人で何役もやる芸なのに、その落語の中で主人公が3役を演じるというシュールさがたまらない。
餅をこねるしぐさやぺったんぺったんつくしぐさもすごく楽しくておかしい。最高だ~。


鯉栄先生「義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
おそらくあまり講釈を聞いたことがないお客さんばかりだったと思うのだけれど、爆笑のまくらでお客さんをリラックスさせ、メリハリのある話でお客さんをぐっと掴んだのがすごい。
兄と弟の別れのシーンにはすすり泣く声も聞こえてきた。
男らしくてかっこいい。素敵だー。鯉栄先生。


南なん師匠「居残り佐平次
吉原のまくらから入ったのですぐに「これは居残りだ!」と分かった。
私はもちろん間に合ってないので、と南なん師匠が言ったときに笑いが起きると、「みなさん、私のこの頭にだまされてやしませんか。そんなに年じゃないんですよ、私。若いんですから」。
…わははははは。

そんなまくらから「居残り佐平次」。
南なん師匠の佐平次はそんなに悪党っぽくなくて陽気で憎めないんだけど少しだけ掴みどころがなくて。
佐平次が若い衆に「お勘定」と言われた時に体をくいっとまげて「よしましょう!お金の話は」というところで、いつも不意打ちを食らって爆笑してしまう。
また居残りを始めてかっつぁんに取り入るところ。かっつぁんがすぐにデレデレしないところがいい。自分なんかが花魁の色じゃないって思っていて甘い言葉にはだまされねぇぞと思っているんだけど、次々持ち上げられるとまんざらじゃなくてしかめっつらをしたまま小遣いまで渡してしまうのが、いじらしくてたまらない。
主人に呼ばれて佐平次が自分は悪党で…というところも、どこかで聞いたようなセリフを並べて、悪党というよりははったりっぽくて嫌な感じがしない。

南なん師匠の描く世界が大好きだからもう安心して身をゆだねられる幸せ…。
やっぱり好きだ。南なん師匠の落語が。
川崎大師はほんとに遠かったけど、二席たっぷり聞けて大満足。行ってよかった!