りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会 習志野文化ホール

7/15(火)、習志野文化ホールで行われた柳家小三治独演会に行ってきた。
18時半開演でこの場所となるとさすがに会社帰りには行けないので有休をとる。そういえば昨年も有休とって来たなぁということに駅を降りて気がついた。最近いろんな所に小三治師匠を見に行っているからどこがどこなのかよくわからない。

柳家一琴真田小僧
柳家小三治「天災」
〜仲入〜
柳家小三治「馬の田楽」

小三治師匠「天災」
鈴本演芸場で子ども寄席というのがありまして、と小三治師匠。
通常の寄席や落語会では子どもは入れないことも多いので、この企画は面白い。
子どもに寄席を楽しんでもらおうという企画なので、子ども無しの大人だけでは入れない。必ず子供をつれてないといけない。つまり子どもに保護者になってもらわないといけない。そこが面白いと言いながら「ただそれだけのおはなしなんですが」とつまらなそうな顔をする小三治師匠。こういうことを面白いと思うところが面白いなぁ。

親子というのは長い付きあいですからいろいろありますと言って「天災」。小三治師匠の「天災」好きなんだよなぁ。
ああ言えばこう言う、気に入らないとすぐに手が出る八だけど、目を三角にして怒ってるというよりはちょっと面白がっているようなところがあって憎めない。
嫁を殴ると「嫁をぶつならあたしをおぶち」ってばばあが「こういう形」で出てきやがって、と泳ぐような仕草と芝居がかった言い方がおかしい。

べにらぼうなまる先生のところから帰るときに「おれが謝ったってことは言わねぇでもらいたい」と頼むのも面白い。
帰ってから長屋の夫婦喧嘩があった家に行って、ことごとく間違った「天災」をやるのがかわいらしく、楽しい。

小三治師匠「馬の田楽」
北海道で行われるばんえい競馬の話。これは前に志木で聞いたことがあったので「これは馬の田楽だな!」とすぐにわかった。
このばんえい競馬の話がとても面白い。
「こんなに」おおきな足をした馬が砂で作られたコースを重い荷物を背負わされて走らされる。砂だから歩きにくい上に、意地の悪いことにそれが山になっている。どんなに強い馬だってその山を前にするとすぐには登り始めない。山を見上げてはぁっとため息をついて息を整える。それを馬方が「ここ」というタイミングでムチを打って馬を励ます。ムチといっても馬を叩いたりはしないで地面を叩く。それをかわいそうだと言う人もいるけれど、馬方と馬には強い絆があって脅して走らせるのではなく励ましているのだ、と。
そんなまくらから「馬の田楽」。
この泥臭くてちょっとユーモラスなばんえい競馬のまくらが効いていて、田舎道を重い荷物を背負わされてきた馬とそれを励ます馬方の姿が目に浮かんでくるのだ。

馬方と田舎の人たちとの噛み合わない会話だけの噺なのだが、もうその情景が浮かんできてなんともいえず幸せな気持ちになってくる。
子供がいたずらをして馬が逃げて行って馬を案じて馬方が必死に探しているんだけど田舎の人たちはのんびりマイペースでおばあさんは耳が遠くてトンチンカンだし酔っ払いはやたらとご機嫌で話がまわりくどくて。噛み合わない会話がたまらなくおかしくて愛おしい。
小三治師匠の「馬の田楽」は本当にすごいところに行っちゃってる。人間国宝もむべなるかな。
でも「そういうことを目指して落語をやってないんでね」と顔をしかめたあとで、「聞かされたとき…とってもうれしかったんですよ」とにかーっと笑い、そのあとで「でもなんでうれしかったんだろう」と真顔に戻る。そんな小三治師匠が本当に好きだ。