りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

自殺

自殺

自殺

★★★★

母親のダイナマイト心中から約60年―伝説の編集者が、ひょうひょうと丸裸でつづる。大人気連載、ついに書籍化。笑って、脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります。

とても良かった。思っていたより軽くて思っていたより真摯な内容。
本気で自殺を考えている人がこの本を手に取ることはないかもしれないけど、少し弱っている人が読むととても励まされると思う。

末井さんの人生はかなり壮絶だ。
お母さんがダイナマイト心中をはかり田舎で白い目で見られたりいじめにあい工場勤めをしたもののすぐに逃げ出し東京に出てきてデザインや編集の仕事をして成功したかのように見えたが返しきれないほどの借金を背負ったり浮気をしたり果てはW不倫…。
しかしそれを赤裸々に書きながらもどこかあっけらかんとしていて明るくて軽いのが面白い。
こんなに壮絶でっせ!情念!という感じがまるでしないのだ。

末井さん自身は自殺をしようと思ったことは一度もないという。
だけど鬱病になって一緒に暮らす女性をも巻き込んで暗く沈んだり、生活が荒れて自暴自棄になったり。
キリスト教を信仰しながら、ギャンブルや浮気がやめられなかったり、借金の依頼を断れなかったり。 掴みどころがないというか、凝り固まっていないというか、ちょっといい加減でだけどなんか圧倒的にしんじられるというか…不思議な人だなぁ…。そんな人の言葉だから余計にすとんと胸に入ってくるのかもしれない。

自己嫌悪の無限ループにはまりがちな私には助けになる言葉がたくさんあった。
悪い状態も人に話したり吐き出したりして笑ってもらったり自分でも笑えればきっと大丈夫。今死のうとしてるのなら一晩待ってみて、朝会社や学校へ向かうのがいやで電車に飛び込みたくなったらその場から離れて反対側の電車に乗ってみて、という言葉が胸に残った。
逃げるのは悪いことではない。
自殺を真っ向から反対はしないと言っているけれど、自殺するほど思いつめることなんかないよ、と肩を叩いて言ってくれてるのだとおもう。
とても素敵な本なので、悩みがちな人たちにぜひ読んでもらいたいなあ。

ところで読書メーターで書いた感想をtwitterに流しているのだがそうしたらそれを末井さんにリツイートされてしまってびっくり!
ひぃーー。自分の書いた感想を作者が読むなんて思ってもいなかったー。どうしようー。
そしてさらに末井さんが私が以前見て「好き!!」と思ったペーソスのサックスを担当しているということもそこで初めて知ってさらにびっくり!じゃ私見たことあるんじゃん!
本を書いている人はみな雲の上の人と思っているので、とても驚いたのだった。