りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

林家きく麿新作落語塾Vol.3

6/11(水)、さばの湯で行われた林家きく麿新作落語塾Vol.3に行ってきた。
GWに浅草演芸ホールで見たきく麿師匠がめちゃくちゃツボで、新しくできた落語友だちをいい会があるよ!と誘って行ったのだった。

・撤去します
・こぶし君
〜仲入り〜
・だし昆布

「撤去します」
新作落語が特別に好きというわけじゃないので、好きだなとおもう噺とうーん…とおもう噺があるんだけど、きく麿師匠は結構ドンピシャかもしれない。なんだろう。ストーリーをなぞっているだけの平たい感じがするともうだめで「これは落語…?なのか?」とむずむずしてくる。でもなんかこうぴたっとハマると、終始大爆笑じゃなくても話が多少破綻していてもサゲが微妙でもいいのだ。
会話だけでおかしい。そういう意味では古典もそういうふうに聴いているのかもしれない。

就職が決まってそのお祝いをやってやるよと友だちに声をかけられた男。
盛り上がってさあ帰ろうと思うと自転車が撤去されている。仕方なく自転車を受け取りに行くのだが…。

もうよくわけがわからないんだけど、妙にリアルでおかしい。
確かにあの撤去された自転車を受け取りに行く所って普段だったら目につかないような不思議な場所にあって、いる人たちも心あるようなないような独特な雰囲気で、そこだけ時間が止まっているような感じなんだよなぁ。
取りに行くのと一緒に働くのとで係りの人の印象が変わるのが、ああこういうことあるなぁ、とリアル。 タイトルも秀逸で好きだわー。

「こぶし君」
新しく小学校で担任を持つことになった先生。クラスには一人問題児がいるけれど困ったときは学級委員の玉置くんに任せればいいから、と校長に言われる。
玉置くん…?玉置浩二?とすぐに思ったのだが、浩二じゃなくて宏だった(笑)。
話しかけても答えないこぶし君だが、玉置くんの流れるような司会だと話し始める。いや、話しはしない。歌い始める。
パニック状態になった新米教師がこぶし君の両親を学校に呼び出すと、これがまた強烈な両親で…。

流暢な司会と妙にこなれた歌。きく麿師匠の歌がまた妙にうまいのがめちゃくちゃおかしくてゲラゲラ笑い通しだった。
一緒に行ったお友達は前の日に寄席で同じ噺を見たと言っていたんだけど、打ち上げの時にあれは文左衛門師匠に「こぶしくんが見たい」と言われてやったのだ、と。
あとから上がったペペ先生はさぞやりにくかったろう…。

「だし昆布」
この会はお客さんからお題をもらってきく麿師匠がそれを盛り込んだ新作落語を作って次の会で披露をするという趣向。そういう趣向に今まで特に興味をひかれることはなかったんだけど、これがもうめちゃくちゃ面白くて大爆笑だった。

お題は「コタツ、将軍、かっぱ、出汁、ホワイトチョコ」。
こんな無理矢理なお題からこんなに面白い落語を作ってしまうなんて、天才かもしれない…。いや本当は血の滲むような苦労をして…こんなん無理だよーできるわけないよーと七転八倒して作ったのかもしれないけど、すごいよすごい。なんか歴史的な瞬間に立ち会えたような感動。って大げさ?わははは。

男が一人で黙々と何かを作っている。
そこへ奥さんがやってきて「どう?」と聞くと「ねぇ、これ…どうしてもコタツじゃないとだめ?」
もうこのセリフだけで大爆笑。なになになに?コタツでなに?
「だめよ。コタツじゃないと」
「いやでもさぁ。ずっと座っててこうやってかき回していて…腰も痛くなるしさぁ…。コタツじゃなくても」
「だめなの!!」

場面が変わって今度はどこのお店。店の主人がお客の奥さん連中に責められている。
「あの出汁まだ手に入らないの?」
「困るのよ。あれがないと。」
「ここのところ家に帰ってこなくなってた主人があの出汁を使うようになってからやっぱり家はいいなぁって家に帰ってくるようになったの」

なになになに?あの旦那がこたつでとってる出汁がそんなに人気なの?
そこへ奥さんがやってきて、店の主人にもっとお金を払うから出汁を大量生産してくれと迫られる。
「いえ無理です、それは」と煮え切らない奥さん。
そしてその奥さんが訪ねて行った先には…。

ああ、もうだめだ。思い出してもおかしくて笑ってしまう。
そのあとの場面がめちゃくちゃ秀逸なんだけど、なにも知らずに聞いて驚いて大爆笑したあの幸せな瞬間を思い出すと、これ以上書いちゃいけない。こんな誰も読んでいないブログでも…。

一緒に行った友だちもこの噺にハートを射抜かれてその後の打ち上げの席でも「主人が家に帰ってくるようになったっていう一言がすごい効いてた」とかあれこれ分析していて、おかしかった。
一つ一つの世界が小さいところ、場面が変わると立場が入れ替わるところ、会話だけで空気が変わるところ、なんか私が思うところの落語らしい落語でまじでハートを射抜かれた…。すばらしい。
これぜひ寄席でもかけていってほしいな。