エソルド座の怪人
- 作者: G・カブレラ=インファンテ・他,レイモン・クノー,ナギーブ・マフフーズ,若島正
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/03/31
- メディア: 単行本
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「棄ててきた女」に比べると私には読みづらく感じる作品が多かった。難解っていうほどじゃないんだけど、ぴたっとくる作品があんまりなかったような…。あくまで私のシュミの問題だけど。
フランス、イタリアから、東欧、ラテン・アメリカ、台湾やエジプトに至るまで、世界の鬼才が集う短篇集。ナギーブ・マフフーズ「容疑者不明」、ヨゼフ・シュクヴォレツキー「奇妙な考古学」など全11編を収録。
好きだったのはロバートソン・デイヴィスの「トリニティ・カレッジに逃げた猫」。こういうばかばかしい話、好き。若島さんによる作者の解説も相まって、他の作品も読んでみたいと思った。
好き嫌いは別として度肝を抜かれたのはレイモン・クノーの「トロイの馬」。これは久々の「なんじゃこりゃ」だった。え?なになに?って何度も行を戻って読み返してしまったよ。
バーで深刻な話をしている男女がいるんだけど、そこに割って入ってくるのが馬。はぁ?馬?でもそれほどみんな驚いてないみたいな、でもちょっと怯えてるような。で、この馬がなんかちょっとずれている。いやそもそも馬だからずれてるのもしょうがないんだけど、でもそのずれようが、なんかちょっと理解できる感じのずれようなのだ。
女が馬に「あなたフィヌムなの?」と尋ねると、気を良くした馬が「フィヌムじゃないです。誰だと思います?」と聞いてくる。そんなこと聞かれてもわからないから知らん振りしていると「だめ、だめ」「他のことしゃべっちゃだめ。誰だか考えなきゃ」「さあさあ、いいですか?有名な町といったら?ほらっほらっ」としつこい。
こういう人いるよねー。「幾つだと思う?」とか「(血液型)何型だと思う?」とか聞いてきて、「違う!」「惜しい!」とか言ってしつこいの。あーーー。うるさいっ。そもそもあんたのことそんなに興味ないよ!もういいよ!ってぴしゃっとやりたいけど、相手は馬だしなぁ…。
で、男が女に小声で「そんな年なら馬はくたばっちまうよ」とささやくと、この「くたばっちまう」になぜか馬は激昂してしまって、おごってくれるはずだったジンフィズを全部一人で飲んじゃうの。
変だー。なんか変だよー。なんじゃこりゃー。でもなんかこのずれてる感じ、すごくよくわかる。もちろんバーでいきなり馬にこんな風に話しかけられたことはないけれど、こんな風に突飛で得体が知れなくて、話しかけられたくないなぁと思っているんだけど話しかけてきて、どうでもいいような謎かけをしてきたりして、なんか怖いような面倒なような気持ちで適当に相手をしているんだけど、結局のところ最後は怒らせてしまう、みたいなことってなんか経験したことあったよなぁ…。もしかしてあれは馬だった?
なーんて気分にさせてくれちゃう小説。
作者は「地下鉄のザジ」を書いた人。ああ、読んだことあるよ、これ。そんな変な話だったっけ?
そもそもこの本を読もうと思ったのは表題作「エソルド座の怪人」が読みたかったからなんだけど(「○○の怪人」というタイトルに弱い)、これはだめだった…。全然受け付けなかった…。リズムとか文体とかがなんかだめで。私向きではなかったようだ。