ブロークバック・マウンテン
- 作者: E・アニー・プルー,米塚真治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/02/17
- メディア: 文庫
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何かを挑んでいるかのように薄い本。薄い上に字も大きい。フツウだったら「なんじゃこりゃ」と思って手にもとらないのだが(本は厚いほどうれしいタイプ)、アニープルーとくればあなた…。
しかも薄さに反してこれがまたすごい小説なのだった。いやはや、アニープルーってほんとに…。
アニープルーといえば「シッピングニュース」。これは今まで読んできた本の中でもベスト10に入るくらい大好きな小説。だからアニープルーの他の作品も翻訳される日を心待ちにしていたのだ。
しかしその次に読んだ「アコーディオンの悲劇」。これにはヤラれてしまった。「うっひゃー。ヤラれたー!」(にこにこ)の方じゃなくて、「だだだだみだ。これはだみだ…」(がーん)の方のヤラれ…。
「シッピングニュース」と打って変わって、暴力的で悲劇的で無機質なトーンについていけず挫折…。
で、私にとってのアニープルーは「ハートウォーミングな小説を書く人」から一気に「一筋縄ではいかない作家」になったのであった。
これは薄いし字も大きいしとても読みやすい小説だ。
しかし内容はかなり衝撃的だ。私はどういう内容なのか全く知らずに読んだので、度肝を抜かれたというかかなりショックを受けた。
以下、ネタバレ。
イニスとジャックという二人の若者がブロークマウンテンで野営をしながら移動放牧をするという仕事を得る。両方とも雇い主のアギーレに「行き場のないチンピラども」と蔑まれるような身なりの若者だ。
二人きりで番をするうち打ち解けるようになり、心が通うようになる。そこまではわかるのだ。
しかしこの二人がある晩一線をこえ愛しあうようになるのだ。
私はゲイの小説を好んで読んでいた時期があったので(というか一時期アメリカの小説ってほとんどがゲイを描いたものだったような気がする)、ゲイは段珍しくもないのだが、この二人は全くそういう気配がなかったから読んでいてとても驚いたのだ。
読み進めるうちに、ジャックの方にはもともとそういう自覚があったのかもしれないと思わせる記述があるが、主人公のイニスは全くノーマルな男。
そういうことってあるんだ?と驚きもしたし、いやしかしそもそも恋というのはそういうものだよな、と納得もした。
この二人のたどる運命が実に悲しい。悲しいけれど美しい。
今でもこういう偏見や差別があるのか?と驚いたが、解説を読んだら実際そうらしい。うーん…そうなのかもなぁ…。
アン・リーが監督したという映画も見てみたいなぁ。