頼むから静かにしてくれ(2)
- 作者: レイモンドカーヴァー
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/03
- メディア: 新書
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とりあえず読んでどれだけいいと思ったかを後からでも一目でわかるようにと、こうやって★をつけているんだけど、これってかなりアバウトだ。
なぜならこれは読んだときのコンディションにかなり左右されるからだ。内省的な小説を読みたいと思っているときだったか、ものすごく濃ゆ〜い物語を求めている時だったか。集中して読める環境にあったのか、忙しくて細切れにしか読めなかったのか。
で、レイモンド・カーヴァーは特に読んだときのコンディションによって印象が異なる作家なんじゃないかと思っている。(あくまでも私にとって、だけれど)
初めてカーヴァーを読んだのは何年前になるのか。そのときは海外に「こういう」作家がいるということに驚いて夢中になった。短編小説がこんなに面白いものなんだと知ったのも、カーヴァーのおかげかもしれない。
しかしその後私は翻訳本に目覚め、どんどん「新しい」外国の作家の本を読み漁っていって、そのうちなんとなくカーヴァーが物足りなく感じるようになってきた。
誰の小説だったかなぁ。ふたりジャネットだったっけ。カーヴァーを「辛気臭いうじうじした男」みたいに揶揄している文章があって、「ああ、あっちではそういう扱いなんだ?」とちょっと思ったりしたこともあり、「なんかぐじぐじしててあんまり好きじゃないかも」と思っていた時期もあった。
でも久しぶりに丁寧に読み返してみたら、やっぱりいいんだなぁ、カーヴァー。日常の中に潜んでいる狂気とか嫌な感じとか情けなさとかうまくいかない感じとか、そういうのを書かせたらこの人の右に出るものはいないんじゃないか、と思う。
そして今「じっくりモード」だった私には、村上春樹の解説とともにゆっくり読むというのが、実に楽しかったんだなぁ…。
「他人の身になって考えること」これ良かったなぁ。夫婦で、家を貸してくれていた老夫婦を訪ねるという話なんだけど、にこやかに出迎えてくれた彼らだったんだけど、ふとした瞬間に見せる狂気に近い激しさがとてもリアルで面白い。ああ、こういうのわかるなぁとぞくっとくると同時に笑いたくもなる。まるで自分がその場にいたようないたたまれなさとおかしさが体感できて、かなり好きだなぁ、これ。
物事がなんだかこんがらがってきてうまくいかないと感じている男が、妹に押し付けられた子犬をこっそり捨てる「ジェリーとモリーとサム」も秀逸だ。この子犬が厄介者なんだ。とにかくまずこいつを捨ててそこから始めよう。そう思って家族にナイショで捨ててしまうんだけど、その後の後悔、それも頭をかきむしりたくなるほどの後悔。そしてこのラスト。なんかすごーくよくわかるんだなぁ。私もこういうことしそうだよ、ほんと。この主人公、私だよ。
「頼むから静かにしてくれ」これもリアルだったなぁ。この妻も夫も両方とも私のことだ、と思った。
やっぱりこのシリーズは全部揃えておくべきだな。老後の楽しみに。