黒と青
- 作者: アナクィンドレン
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/07
- メディア: 単行本
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夫から暴力を受け続けていた妻が子供と二人で夫から逃げる。DVを受けていた女性を支援する女性の助けを借りて、名前を変えて過去を隠し、夫の影におびえながらも、なんとか新しい生活に順応していくのだが…。
題名の青と黒というのは、長い間ストレスにさらされつづけた子供は感情の一部分が麻痺状態になり、青と黒の区別がつかなくなる、というところから付けられている。
暴力を受けつづけていながら、なぜ夫のもとを去れないのか。それが子どもにどのように響くのか。そして、夫から逃れてめでたしめでたしではない現実。
とても細やかに描かれていて、すごい小説だと思う。
暴力を受けていることが恥ずかしい。
心ひかれる男性に出会っても、この人も女を殴るのだろうかと手を見てしまう。
自分は昔から安全なものではなく危険なものに惹かれてしまうところがあって、自分が夫に暴力をふるわせる何かがあったのではないか。夫から逃げたいけれど、食器棚に置いてあるお気に入りのマグカップでコーヒーを飲む、その心地よさから離れる勇気が出ない。
ああ、そうなんだろう。きっとそうだ。
主人公に深く共感できるだけに、読んでいて胸が苦しくなるような小説だ。