りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

湯島de落語 ぎやまん寄席 金原亭馬治・柳家さん助ふたり会

 7/3(月)、湯島天神参集殿で行われた「湯島de落語 ぎやまん寄席 金原亭馬治・柳家さん助ふたり会」に行ってきた。
 
・ぐんま「たらちね」
・さん助「やかん泥」
・馬治「阿武松
~仲入り~
・馬治「笠碁」
・さん助「質屋庫」
 
ぐんまさん「たらちね」
名前は聞いたことがあったけど見たのは初めて。
白鳥師匠のお弟子さんだからきっと強烈なんだろうと思って見ていたら、意外にもちゃんとした古典(失礼!)。なんだけど時々すごい寄り目になるのが妙に面白い。
そして最後の方に来て、えええ?そこで??というような絶叫。なんじゃそりゃ?!と思いながらも大笑いしてしまった。
 
さん助師匠「やかん泥」
「私、喫茶店に行くのが好きでして」とさん助師匠。
といっても高級な店には行かない。ベローチェとかドトールとかちょっときばってサンマルクとかそんなところ。
で、ああいう店には「季節限定」とか「イチオシ」のメニューっていうのがある。そういうのを注文したくなるんだけど、私がそういうメニューを注文すると必ず店員さんに怪訝な顔をされたり聞き返されてしまう。
この間も「季節限定バナナスムージー」というのを飲んでみたいと思って注文したら、店員さん…若くてすごくかわいい女の子が、私が「バナナスムージー」と言ったら、顎を突き出して「はぁぁ?!」。
思わず「アイスコーヒー」と言い直してしまいました。
いつか、バナナスムージーを飲んでみたい…。
 
…ぶわはははは。
見た目がおじいちゃんっぽいからそんなものを頼むはずがないと思われている?!
おもしろすぎる、そのエピソード。
 
そんなまくらから「やかん泥」。
「やかん泥」といえば、昨年の終わりごろにしきりにやっていたけど、ある時からなんか調子を落としたのか明るさとか楽しさがなくなってしまったように感じる時があって、ちょっとトラウマな噺。(あくまでも私が勝手に感じてるだけなんだけど)
それが昨日の「やかん泥」はとても楽しくて、特にあの親分が犬くぐりから入っていく場面のばかばかしさ!
「こうやって頭をドリルのようにしてだな」っていうセリフ、前はなかったよなー。
 
後から出てきた馬治師匠が「よくああいうことをできますね…使えるもの(ハゲ頭)は何でも使いますねぇ…」って言ってたけど、いやほんとに。ハゲ頭を武器にできるのはすごい(笑)。
 
弟分が兄貴分から盗んだ台所道具を受け取るところで「金だらい」を受け取った後の音を出すところがなく、あれ?と思ったら、また兄貴分から「金だらい」を受け取ったところで、思わず「また?!」と声が出てしまった…。他のお客さんも気付いたみたいだったんだけど「もう一回金だらいだよ。ここがライブの面白さ!」とさん助師匠が開き直ったので大笑いだった。
 
馬治師匠「阿武松
七夕が近いということで湯島天神には笹が飾ってあって「私とさん助さんも願いことを書いて飾りました」と言う馬治師匠。
「私の願いは…ハゲになりませんように。」
 
もう最近テレビをつけると必ずやってますね。「このハゲーーー」ってやつ。
もうほんとに勘弁してもらいたい。
そういうセリフをうちの女房にインプットするのは…。絶対使いますからね。
 
そう言って笑わせたあとに、「でも私とさん助さんの願いは1つかなってるんです。私もさん助さんも、”落語家になれますように”って同じように強く願っていたわけで、その夢はかなったんです」
 
…なんかどきっとしてちょっとじーんときた。
 
そんなまくらから「阿武松」。
ちょっと地噺っぽくご自身の前座時代のしくじりなどを噺の途中に混ぜていて、これがとても面白い。馬治師匠って結構独自にサゲを変えたり新作っぽいテイストを加えたり…そういうところも好きだなぁ。

長吉が素朴でかわいらしくて馬治師匠にぴったりで、武隈部屋を破門になってとぼとぼ歩いている姿が浮かんでくるよう。
宿屋の主人・橘家善兵衛もすごくあたたかくて優しくてでも実質的でいい感じ。

馬治師匠の語り口とこの噺がとっても合っていて、とてもきれいな落語。きれいだけど素朴であたたかくてとぼけた面白さがあるから、最初から最後までとても心地よく楽しい。

うーん。さん助師匠と馬治師匠、全然タイプが違う二人が全く違う魅力を見せてくれて、これはもうたまらん!この組み合わせを考えたお席亭、すばらしい。
 
馬治師匠「笠碁」
待ったをしてくれなくて怒り出すおじいさんも、昔のことを持ち出されて絶対待たない!と意固地になるおじいさんも、とてもかわいい。
 
喧嘩別れして退屈した二人のおじいさん。
その絶望ぶりがすごくおかしい。
忘れて行った煙管をお返ししてきましょうかと奉公人が言うと「これに最後ののぞみをかけてるんだ!」「この煙管がいまこの家で一番大切なものだ!」と怒りを沸騰させるのがたまらなくおかしい。
どんなに激しく怒っても全然怖くなくていやな感じが全然しないのは強みだよなぁ。
 
笠をかぶって通るところや、碁盤を出してくるタイミングなど、細かいところが違っていて、これは馬治師匠のオリジナルなのかな。
若々しくてかわいらしい「笠碁」だった。よかった~。
 
さん助師匠「質屋庫」
突然番頭さんが旦那に呼ばれるところから始まって、「んん?」と驚いていると、「こんな始まり方もあるんです。結構時間が押してるから」とさん助師匠。
ぶわはははは。
なんの噺かと思ったら「質屋庫」だった。

旦那が番頭に話す「質物に気が残る」おかみさんの帯の話、すごくおかしい。
そして次々自分の罪を告白するくまさんの言い訳もおもしろい。
怖がる番頭とくまさんが離れで待っているところも楽しくて、満足~。
 
さん助師匠の「質屋庫」は二回ほど聴いたことがあったけど、ところどころはすごく面白いんだけど、爆笑にはつながらないというか、ちょっとごちゃごちゃっとした印象があった。
だから「あんまりこの噺は合わないのかも」と勝手に思っていたんだけど、これがすごく面白かったのだ。
噺ってどんどん変化していって前はそんなでもなかったのに面白くなったり腑に落ちるようになったりするんだなぁ。

今回は二席とも聞いたことがある噺だったんだけど、印象が違っていて新鮮だった。
 

池袋演芸場7月上席昼の部

7/1(土)、池袋演芸場7月上席昼の部に行ってきた。

・昇咲「子ほめ」
・鯉輪「初天神
・一矢 相撲漫談
・伸べえ「まんじゅうこわい
・米多朗「八問答」
・ひでや・やすこ 漫才
・夢花「蜘蛛駕籠
・寿輔「しりとり都々逸」
~仲入り~
・小天華 マジック
・小夢「鷺とり」
・蝠丸「宮戸川(上)」
東京ボーイズ 歌謡漫談
・圓輔「火焔太鼓」

鯉輪さん「初天神
前に上野広小路亭で見た時と同じ、客いじりと「やる気がない」発言に、心底がっかりした。
前の時もそうだったけど、前座さんの後一番目の出番なのだから、お客さんが噺の最中に入ってくるのは当たり前。そんなことでいちいち「入ってくるから忘れちゃった」とか言ってほしくないし、お客さんがみんな「今日はどんな寄席になるのかな」と緊張して見ているのだから、ちゃんとやってほしい。

あんまり先入観を持って見ちゃいけないと思っていたけど、あの時と同じようなふてくされた態度にほんとに腹が立ったし、おそらくそういう気持ちになったのは私だけじゃなかったみたいで、本人も「どんどんお客さんが引いていく」「お客さんが敵意を持った目で見てくる」と言っていて、そこまでわかっているのに何で同じことをするんだろうと思った。
やる気があって頑張ってる二ツ目さんがたくさんいるんだから、そんなに嫌なら寄席に出ないでほしい。
前座時代は「おもしろいな」と思っていただけにがっかり。ほんとに不愉快だった。

一応「初天神」を団子までやったけど、反感を持って見てしまったので、何も感じるところがなかった。ああいう態度はほんとに損だと思う。ま、余計なお世話でしょうけど。


伸べえさん「まんじゅうこわい
二ツ目に昇進したばかりの伸べえさん。鯉輪さんとは対照的にやる気いっぱいの弾けるような高座だった。

米多朗師匠「八問答」
楽しかった!こういう噺、大好き。
真打の師匠がこんなに真面目に頑張ってるのに、なんだったんだろう、あの態度は…とまた沸々と怒りがわいてくる…。ああ、もう忘れなきゃ。イライラするために寄席に来てるわけじゃないんだから。


寿輔師匠「しりとり都々逸」
出た!THE客いじり。
この日は最前列にお子さん(小学校3年生ぐらい?)がいたので、もう彼に話しかけるかける、いじるいじる。子どもっていじられるのすごーく苦手だと思うんだけど、この子はそうでもないみたいだったからよかった。
寿輔師匠の客いじりはお家芸みたいなもんだし、客いじり苦手な私から見ても「上手だな」と思うけれど、でもやっぱりあれを見て「いやだな」と感じる人はいるだろうし、腕もないのにそういうところだけ若い子が真似するのはどうかと思う。
ってまだ引きずってるな、鯉輪さんを…。やでやで。


蝠丸師匠「宮戸川(上)」
待ってました!の蝠丸師匠。会いたかったよー。うぉーん。
末廣亭と掛け持ちらしく、「私、体力がないものですから、一日1席が精いっぱいなんです。それが今日はもう末廣亭でやってきちゃったもんですから」。
とても長い噺なので途中までしか教わってませんと言いながら「宮戸川(上)」。
この師匠の語り口を聞いているとほんとに心が静まるしほっとする。ここにきてようやく私も鯉輪ショックから立ち直れた気がする。(時間かかりすぎ!)

東京ボーイズ先生 歌謡漫談
好きで好きで。「香港の運び屋」なのにやられっぱなしの菅六郎先生が大好き。


圓輔師匠「火焔太鼓」
トリの圓輔師匠が見たくて来たんだけど、広小路亭で大爆笑した軟膏のまくらからの「火焔太鼓」ほんとに楽しかった!

「お前さんは頭がアフガニスタンなんだから」「なんだそりゃ」「頭がタリバン」には大笑い。芸協っぽいくすぐりで最高すぎる。
品があって色気があっていいなぁ、圓輔師匠。よかった。

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事

 

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事

 

 ★★★★★

同時代作家を日本に紹介し、古典を訳し直す。音楽にまつわる文章を翻訳し、アンソロジーを編む。フィッツジェラルド、カーヴァー、カポーティサリンジャー、チャンドラー。小説、詩、ノンフィクション、絵本、訳詞集…。1981年刊行の『マイ・ロスト・シティー』を皮切りに、訳書の総数七十余点。小説執筆のかたわら、多大な時間を割いてきた訳業の全貌を明らかにする。  

村上春樹の翻訳した本はかなりたくさん読んでいて、特に初期の頃は出たら必ず買っていた。
何よりも自分が知らない「新しい作家」を読めるのが嬉しくて、今のようにネットで情報を得られない時代にはありがたい存在だった。

翻訳した本への思い入れや翻訳についての想い、柴田さんとの対談も楽しくて、読んでいてニコニコしてしまう。
村上春樹は誤りを指摘しても全く気を悪くしたり傷つかないから時間が短くてすむ、という柴田さんの言葉に感じ入る。

村上春樹ともなると柴田元幸に翻訳をチェックしてもらえるのかよ!と妬ましくも思うが、柴田元幸がこれほどまでに翻訳家として有名になったのは村上春樹のおかげという面もきっとあるだろうし、村上春樹のおかげで新しい作家が翻訳されるようになり活性化したことを思うと、やはりこの人の功績はすごい、と思う。

眠れない夜にこの本を読んでいたら気持ちが静まって30分ほどで眠れた。ありがたい。

第2回北とぴあDE江戸噺

6/30(金)、北とぴあで行われた「第2回北とぴあDE江戸噺」に行ってきた。

・圓馬「代書屋」
・小柳「たちきり」
~仲入り~
・口上(小助六:司会、小柳、昇乃進、夢花、圓馬)
・昇乃進「七度狐」
・夢花「蜘蛛駕籠

圓馬師匠「代書屋」
この会、ネタ卸し&ネタ出しだったのだが、圓馬師匠だけ演目が「お楽しみ」になっていた。
これは…権太楼師匠の「代書屋」ですね…。寄席で権太楼師匠を見るとほぼ100%の確率で「代書屋」で、正直もう聞き飽きているので、できれば違う噺の方がよかったな…。でも間とかリズムは圓馬師匠独特のもので、そこは新鮮だった。ネタ卸しだったからこれからもっと師匠の色が付いてくるんだろうな。


小柳師匠「たちきり」
この噺が苦手でこの師匠も苦手で白目。すびばせん。


口上(小助六師匠:司会、小柳師匠、昇乃進師匠、夢花師匠、圓馬師匠)
口上もあるんだ!びっくり!
それだけこのチーム江戸噺をメンバーのみなさんが大事にしているってことなんだろうな。
前から気になっていたので見に来られてよかった!


昇乃進師匠「七度狐」
この噺、大好き。鳴り物が入って楽しい。
最後にちょっとトチって?しまっていたけど、楽しい高座だった。


夢花師匠「蜘蛛駕籠
ネタ出ししていた「蜘蛛駕籠」が自信がないと言って、ながーいまくら。先代の文治師匠の話とか自分が師匠をしくじった話とか。これがもうおかしいおかしい。話自体もおかしいし、噺に入らないでまくらをしゃべってるっていうのもおかしくて、途中から笑いが止まらなくなってしまった。

ようやく噺に入ったら、すごく楽しい「蜘蛛駕籠」で。なんだ、そんなにまくらを引き延ばさずにやればよかったのに!
ついでに終演時間が延びたおかげで、余裕で乗れてたはずのバスに間に合わず電車で帰る羽目になり、「おのれー夢花め!」と毒づいたことは内緒だ。

末廣亭6月下席昼の部・夜の部

6/29(木)、末廣亭6月下席に行ってきた。
この日は有休をとって昼から夜まで居続けのつもりで気合を入れて出かけて行ったのだが、朝9時45分ごろに着くとすでに15人ほど並んでいてびっくり!
平日だというのにこの行列はいったい…。
そして昼の部から夜の部へ居続ける人の多さ!普段なら私のようなよっぽどの人しか残らないのに、この日はほとんどの人が残っていた…!
これが落語ブーム、寄席ブームってことなんだろうか。
人が少ないのは困るけど、こんなにもしのぎを削る感じはいやだなぁ。しくしく…。


昼の部
・やまびこ「寿限無
・小んぶ「幇間腹
・あんこ「つる」&ゴジラかっぽれ
・一之輔「 鮑のし」
・志ん輔「稽古屋」
・圓丈「金さん銀さん」
・伯楽「 猫の皿」
・さん喬「短命 」
~仲入り~
・さん助「浮世床(洒落将棋)」
正蔵「新聞記事」
・小ゑん「銀河の恋の物語」
喬太郎「夢の酒」

小んぶさん「幇間腹
「カルテ取り」「スラッシュスラッシュドット汗」には毎回笑ってしまう。
針が折れたことを「お腹の中に針が宿りました」と手を合わせるのが最高にばかばかしい。


一之輔師匠「 鮑のし」
この日のお客さんが二階席まで満員で立ち見も出るほどですごい熱気のわりにほんとに笑わない。小三治師匠じゃなきゃ笑わないぜ!と粋がっているって感じじゃないんだけど、なんか思っていたのと違った?もっと面白くて笑わせてくれると思ってたのに…って感じ?
そんな中、一人悲鳴のような笑い声をあげる女性がいて、まわりがしーんとしているだけでそれはそれでまた変な目立ち方。それも笑う時に「〇〇って!」と復唱するので余計に…。
その女性を早速いじる一之輔師匠。「大丈夫ですか?」「そんなにおかしいっすか?」。
陰気なお客さんに合せたのか一之輔師匠もトーン低め。それでもかなり客席を温めていたのはさすが。


圓丈師匠「金さん銀さん」
この独特の雰囲気に圓丈師匠が不思議と合っていて、結構笑いをとっていた。圓丈師匠がおばあさんにしか見えなくなるこの噺。笑った。


さん喬師匠「短命 」
いいなぁ、さん喬師匠の「短命」。ご隠居に品があって。楽しい。


さん助師匠「浮世床(洒落将棋)」
おおお、ドッポで聞いて以来聞いてなかった「浮世床(洒落将棋)」。この重たいお客さんにこういう噺をぶつけてくるとは、さん助師匠はほんとにひねくれてるなぁ(←ほめてます?)。
なんかでも煙管の吸い口は吸い口、がん首はがん首でくっつけたわりに、二人の吸っている様子がまったくおなじだったような?やはりテンパっていたのか?(笑)
それも含めておかしくておかしくて。笑ったわー。


小ゑん師匠「銀河の恋の物語」
織り姫と彦星が年に一度しか会えないのはかわいそうと言うけれど、星の一生は人間とは比べ物にならないほど長い。星の寿命を人間の寿命に換算してみると、この二人は3秒に一回会ってる計算になるから、むしろ会いすぎ!というまくらには笑った笑った。
「銀河の恋の物語」前から生で見たいと思っていたのでうれしくてうれしくて。織り姫が気が強くて蓮っ葉なのが最高におかしかった。


喬太郎師匠「夢の酒」
声もかなり出にくそうでかなりお疲れのご様子。この芝居が終わって少しは休めるといいなぁ…。
最近南なん師匠がよく「夢の酒」をやられているけど、同じ噺でもこうも印象が違うものなのか。喬太郎師匠の「夢の酒」はお花さんの悋気がかなり激しく、また大旦那も二人の喧嘩の原因が「夢」と知った瞬間「死ねーーー」っと叫ぶ。
どちらが好きかは、好みの問題なんだろうな。


夜の部
・一猿「弥次郎」
・小はぜ「道灌」
ひびきわたる 漫談
・辰乃助「たらちね」
・小八「夏泥」
・世津子 曲独楽
・萬窓「蔵前駕籠」
・歌之介「勘定板」
・正楽 紙切り
・小燕枝「宗論」
・権太楼「代書屋」
~仲入り~
・三之助「転失気」
・扇遊「権助芝居」
正雀「鴻池の犬」
仙三郎社中 太神楽
小三治「野ざらし


小はぜさん「道灌」
重たいお客さんに、前座時代にやり倒していた「道灌」を淡々と。素敵。


萬窓師匠「蔵前駕籠」
タクシーに乗ったら運転手さんがラジオで落語を聞いていて「私、落語好きなんです」。
ちょっとからかってやろうと思い、落語家であることを隠して「落語ってどういうものですか」「どこが楽しいんですか」と聞くとあれこれと教えてくれる。落語も一席話してくれと言うと、これが実にうまくて…。

まくらから噺への流れ、そして噺に入ってからも最初から最後までなんかもうすごく良くて、きゃーー!ってなった。
明るくて軽くてでもどっしりしていてリズムが良くて間がよくて…好き好き、この師匠。
自分のブログを検索したら、前に黒門亭で一度見ていて、その時も「好きだ!」と書いていた。
もっと見てみたい。また好きな噺家さんが増えてしまった。

 
 歌之介師匠「勘定板」
この日一番うけてたかもしれない。なんだこういうのが好きなのか、今日のお客さんは。ちっ。(←感じ悪いねわたし。すびばせん。)
 
 小燕枝師匠「宗論」
最高におかしかった。小燕枝師匠がこんなバカバカしく「宗論」をやられるとは。でも息子が他の人がやるような変な「〇〇なのでありまーす」という激しく誇張した話し方じゃなく、いやらしさがない。
楽しかった!

小三治師匠「野ざらし
仲入りから入ってきたお客さん(立ち見)はわりと陽気で徐々に盛り上がる中、待ってましたの小三治師匠。
選挙の期日前投票に行ったというまくらからの「野ざらし」。
落語ブーム寄席ブームの台風の目のような満員の末廣亭で、ちょっとノリノリででもいつもの「野ざらし」。くーー、かっこいいっ!
 
小三治師匠が終わって末廣亭を出ると写真を撮ってる人が大勢。twitterにもたくさん投稿されていて「昼と夜たっぷり見られて幸せ」「至福の時間」とかつぶやいている人もいたけど、ほんとに~?ほんとにそう思った?そのわりに笑ってなかったじゃーん、そうつぶやきたかっただけじゃないの~?と思ってしまった私だった。
居続けってよっぽど好きじゃないとしんどいと思うんだよなぁ。特に「え、えええ?」っていう芸人さんもいるからさ。
私の隣の席に座った老夫婦も、朝から晩まで頑張ってたけど、夜の部ではおばあさんの方がもうあくびしっぱなしだった。そりゃしんどかろう。あんなせせこましいところに12時間もいたら。
反対側に座った女性も途中、いびきかいて寝てたからなー。
ま、ほどほどがよいのではないかと。(お前が言うな!という噂も)
 

ぼくの死体をよろしくたのむ

 

ぼくの死体をよろしくたのむ

ぼくの死体をよろしくたのむ

 

 ★★★★

 彼の筋肉の美しさに恋をした“わたし”、魔法を使う子供、猫にさらわれた“小さい人”、緑の箱の中の死体、解散した家族。恋愛小説?ファンタジー?SF?ジャンル分け不能、ちょっと奇妙で愛しい物語の玉手箱。

日常だけど私がいる「ここ」とは違っていて、そこにとても惹かれる。
登場人物たちの感じ方も自分とは少し違っていて、「ほぉ」と驚くのだがそれがとても楽しい。

全体的に体温低めで静かだけど、うちに秘めた情熱や狂気がチラリと見えるところが好きだな。

特に好きだったのは表題作、「土曜日には映画を見に」「スミレ」。

さん助ドッポ

6/28(水)、お江戸両国亭で行われたさん助ドッポに行ってきた。

・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第九回「舞扇のお静(後編)」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・さん助「化け物使い」

さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第九回「舞扇のお静(後編)」
いつものように立ち話から。

「私、ついに火鉢デビューしました」とさん助師匠。
なんでも末廣亭の楽屋というのはとても狭く、火鉢を囲む一畳ぐらいのところに真打が座っているらしいのだが、そこは昭和の名人と言われる師匠たちも座っていた場所でそこに座れるようになるには30年かかる、などと言われている。
さん助師匠ももちろんまだそんなところに座る気などなく、若手と一緒に立っていたらしいのだが、正蔵師匠が「さん助さんもこっちに座りなさい。あなたももう真打なんだから」と声をかけてきてくださった。
そう言われて固辞するのもおかしいかと座らせていただいたのだが座っているのが喬太郎師匠、正蔵師匠、小ゑん師匠という錚々たるメンバー。もう肩身が狭いのなんの…。

…ぶわははは。所在無く座るさん助師匠の姿が目に浮かぶけど、寄席で出番をもらってそんな経験をしているって…すごいなぁ。よかったねぇ…と目を細める私たち。

そんなまくらから「西海屋騒動」第九回「舞扇のお静(後編)」。
腰元となって京極壱岐守の屋敷に入ったお静はほどなく小畑左一郎といい仲になる。
人目を忍んで逢瀬を重ねる二人。お静は左一郎に自分を連れて逃げてくれと言う。
ある月の美しい夜、左一郎はお静を連れて品川の奥番場で髪結いをしているお米のもとを訪ねる。左一郎とお米は同じ乳母の元育った身の上で、お米は左一郎を歓迎する。
しかしお米の夫、三吉は、美しいお静の姿に悪だくみをする。

次の日から突然具合が悪くなった左一郎はそのまま寝付いてしまう。
どんな医者に見せても具合が良くならない左一郎を心配したお静が願掛けに行くと、そこにやってきた三吉。
左一郎を治すには高麗人参を買うしかないのだがそれは非常に高額。お前、左一郎のために1年だけ女郎になる気はないかと持ちかける。
愛する左一郎のためにならなんだってやります、とお静。
では自分に付いて来いと、三吉はお静を八王子の遊郭に売り渡してしまう。
一方、何も知らない左一郎はお静が三吉と駆け落ちしたと思い、ますます病が酷くなり、お米から「これこれこういうわけで」と聞いたものの、そのまま死んでしまう。

ある年、江戸を地震が襲い焼け野原になったと聞いたお静は左一郎が心配で足抜けして一人江戸へ逃げてくる。
そこらじゅうの人に左一郎の消息を尋ねるがわからず、特に左一郎がいるはずの品川はひどい被害。一人呆然と空を見上げるお静。空には二人で屋敷を出た時と同じ、美しい月の姿があった…。

…って、おい!
また二人で家出したとたん患いついちゃったよ!左一郎は三吉に毒を盛られたのか?
そしてお米は自分のん旦那のことを「うちの旦那は人情にあつい人だから」と言っていたけど、どこがやねん!大悪人やんけ!

それにしてもきれいだとすぐに遊女に売られちゃうから大変やね。
そしてこんな目にあったお静は人間不信になって誰もかれも騙して不幸にしてやるぅーと大悪女になるのだろうか。

まぁとにかくちょっと気を抜くと次々悪人が出てくる「西海屋騒動」なのであった。


さん助師匠「胴斬り」
わーい、また「胴斬り」が見られたー!
落語らしいシュールな噺でほんとに大好き。私の好きな噺No.1は「だくだく」なんだけど、それに続くのが「胴斬り」「ぞろぞろ」なんだよー。
斬られて身体が真っ二つになってるのに「だからお前がふらふらしてるから…まじめに働けよ」と言う友だちに、変わり果てた姿に「ぎゃーーー」と驚きながらも「そうやって飲んでふらふらしてるから」と文句を言う奥さん。
それまでふらふらしてたくせに、身体を斬られてからは、上半身と下半身でそれぞれまじめに働く、っていう状況のシュールさよ。

あの指で下半身を表現するところのばかばかしさがたまらくおかしくて最高だった。

噺をし終わった後にさん助師匠が「私、この噺が大好きでして。芸協の師匠に教わりたくて、真打になるのを待って教わりに行った」と言っていて、わーーさん助さんもこの噺好きなのね!とうれしくなっちゃった。


さん助師匠「化け物使い」
今まで聞いたことがあるのと違う「化け物使い」で、帰る時にお客さんが「あれは誰に教わったの?」とさん助師匠に聞いていて、「扇橋師匠です(聞き間違いでなければ)」と答えていた!うわーーー!

権助は旦那の人使いの悪さに「もうこれ以上辛抱なんねぇ」とお暇をくれと申し出る。
旦那は働き者の権助をとても重宝に思っていて「給金はお前が欲しいだけやるから残ってくれ」「お前がいなかったらわしはどうやって暮らせばいいのか」と言う。
そう言われて権助は「わしもあんたを一人にして故郷に帰るつもりはない。実はいい屋敷を見つけた」と言って化物屋敷を紹介する。

夜な夜な化け物が出てきて用事をしてくれる屋敷があると聞いて「そいつはいい」と喜んだ旦那。権助に手伝ってもらって引っ越し。その晩から、毎日いろんな化け物が出てきて…。

旦那は人使いは荒いけれどとてもいい人で、権助のことも「ありがとう」と言って送り出す。
もともと化物に用事をしてもらうつもりでいた旦那は、化物が出てくると待ってました!と用事を言いつける。

旦那に意地悪なところが全然ないから見ていて嫌な気持ちにならなくていいなぁ。
楽しかった~。

すべての見えない光

 

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

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 ★★★★★

孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド―。時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描き出す。ピュリツァー賞受賞の感動巨篇。ピュリツァー賞受賞(小説部門)、カーネギー・メダル・フォー・エクセレンス受賞(小説部門)、オーストラリア国際書籍賞受賞、全米図書賞最終候補作。  

素晴らしかった。

フランス人の盲目の少女マリーとドイツ人の孤児ヴェルナー。
マリーに盲目でも生きていく力を与えた父は密告によって捕らえられ、事情もわからないままマリーは、疎開先のパリで怯えきった叔父と戦火を耐えなければならない。
一方ヴェルナーは並外れた頭脳のおかげでナチスドイツの技術兵として軍隊入りする。

何の接点もない二人がラジオで繋がる。
ささやかな幸せが夢が未来が希望が戦争によって壊されていく。彼らのひたむきさが戦争の残酷さをより際立たせている。

暴力が支配し密告や裏切りが多発しなんの罪もない尊い命が奪われていくのを目の当たりにしながらも、自分の身を守るために何もできなかったとしても…自然や音楽や物語に慰められ、何もかもを奪い取られることは決してない。

真っ暗な世界を生きるマリーの強さに打たれた。

第23回中野新橋寄席

6/26(月)、八津御嶽神社で行われた第23回中野新橋寄席に行ってきた。


・小はぜ「やかん泥」
・今松「粗忽長屋
~仲入り~
・今松「抜け雀」

 
小はぜさん「やかん泥」
今松師匠の会の前方に小はぜさん!
こちらの会では決まった二ツ目さん何名かでローテーションしているようなので、これからは定期的に小はぜさんが出るのかな。うれしい~。って喜ぶわりにこちらの会におじゃまするの2年ぶり。主催の方は感じがいいんだけど、コアなファンの人にはなんとなく歓迎されてない感じがするので行くのに勇気がいるんだな…。

ここの会場はとても立派な神社で高座の後ろに祭壇があるんだけど、「私がここにこうして座りますと…なんかありがたい感じがしませんか」「私も初めて来た気がしないんです。なんかこう故郷に帰ってきたような…」と小はぜさん。
…確かにすごいお坊さん感!
でもそんな言葉とは裏腹にとても緊張気味の小はぜさん。
そうだよねぇ。今松師匠、気難しそうだし、さらにそのお客様も一筋縄ではいかなさそうな…。
でもとってもまじめできれいな落語をやる小はぜさんだから、きっと今松師匠のお客様にも可愛がられる…と、思うよ!(南なん師匠風に)
 
緊張気味のまくらから「やかん泥」。
まくらは危なっかしかったけど落語に入ったら落ち着いた(笑)。
親分と一緒に「仕事」に行けるのがうれしい新米泥棒。提灯を持って行こうとしたり、財布を忘れたからちょっと戻ってとってきます!と言ったり、あれやこれやを親分に問いただすのがおかしい。
あんまりうるさいから親分にポカリとやられて「私、暴力で人を黙らせようっというのが一番嫌いなんです」と本気で怒り出すのも、なんか小はぜさんらしくて楽しい。
小はぜさんの「やかん泥」、何回か見ているけど、見るたびにすっきりしてきている印象。
よかった。

今松師匠「粗忽長屋
聞き飽きた噺も今松師匠がやられるともう全然違っていて最初から最後までなんともいえず楽しい。

なんだろう。どこからどこまでも「落語」で、この世界観がとても落ち着くというか居心地がいいというか。肩の力を抜いてふわっと身を委ねる幸せ。
すごく考えられて落語をされているのだろうけど、それを聞いてる側に感じさせないというか、客に負担を強いないんだよな。

いいなぁ、今松師匠の落語の世界って。幸せとしかいいようがない世界。好きだ。


今松師匠「抜け雀」
粗忽長屋」も「抜け雀」も今松師匠がやりそうにないイメージがあったので意外。でもこれがまたとても良かった。
余計な言葉や台詞が一つもなくても、絵師の職人としての厳しさや気難しさ、気まぐれさがじんわりとにじみ出ている。
それに対する宿屋の主人の人の好さ、正直さがまたとてもいい。

お殿様に頼まれても売らずに絵師を待っていた主人に「お前にやるよ」とケロッと言うところ、今松師匠と絵師が重なって見えた。
何か特別なくすぐりが入っているわけじゃないのに、誰とも違う世界。

 

百年の散歩

 

百年の散歩

百年の散歩

 

わたしは今日もあの人を待っている、ベルリンの通りを歩きながら。都市は官能の遊園地、革命の練習台、孤独を食べるレストラン、言葉の作業場。世界中から人々が集まるベルリンの街を歩くと、経済の運河に流され、さまよい生きる人たちの物語が、かつて戦火に焼かれ国境に分断された土地の記憶が立ち上がる。「カント通り」「カール・マルクス通り」他、実在する10の通りからなる連作長編。

★★★★

ベルリンの街を「あの人」を待ちながら歩く。詩人の亡霊と対話をしたり目に留まる人や物に思いを巡らせ、不穏な歴史や未来を目にしながら…。

なんとなくゼーバルトの「アウステルリッツ」を思い出した。

多和田さんらしい言葉遊びも多く、時々ぷっと笑いたくなるんだけど、でも私ぐらいの知識では理解できなかったりおもしろさが分からなかったりするところも多く、読み終わるまで時間がかかってしまった。

最後の方まで読むと私が待っている「あの人」が誰かがわかり、わからないで読んでいた時よりももっと寂しくなった。

 

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/24(土)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。

・金太郎「天狗裁き
~仲入り~
・夏丸「懐かしのCM」
・夢花「二人旅」
・コントD51 コント
・富丸「?(幼稚園のかわりに老人園みたいな噺)」
・伸治「だくだく」
・南玉 曲独楽
・南なん「寝床」


夏丸さん「懐かしのCM」
今日もきもちよ~く歌う夏丸さん。隣の列に座ったおじいさんが、最初は不機嫌な感じで聞いていたのに、徐々に身を乗り出してきて、本当に嬉しそうに一緒に口ずさんでいるのが微笑ましかった。
またしても自分の武器を自由自在に使いこなす夏丸さんを見たなぁ。寄席の夏丸さん、いいなぁ。でも独演会で緊張感いっぱいで大ネタをやる夏丸さんも見たくなった。

夢花師匠「二人旅」
店のおばあさんが、ダメなときのさん助師匠のようなエキセントリックすぎる人物像…。ってこれじゃどちらにも失礼になっちゃうか。
夢花師匠、大好きなんだけど、早口すぎて聞き取りずらいのと、エキセントリックに走りすぎるところが少し残念。

富丸師匠「?(幼稚園のかわりに老人園みたいな噺)」
4日連続で毎日寸分たがわぬ同じまくらで、笑いがおこらないと「お分かりにならない方がいる」「分からない人は置いて行きますよ」。
ダジャレがわからないわけじゃなくおもしろ…もごもご。
毎日置いて行かれっぱなしだった。


伸治師匠「だくだく」
しーんとなってしまった客席を、出てきただけで和ませる。この芝居、ずっとこれを目撃し続けているなぁ…。ここに伸治師匠が入っていてほんとによかった。
「待ってました!たっぷり!」と声がかかると「嬉しいですねぇ。そんなこと言っていただけると。でも私のこの出番ね、ひざ前っていうんですけどね、たっぷりはできないんですよ」とにっこり。

そしてそんなまくらから「だくだく」。
大好きな噺を大好きな師匠で聴ける幸せ。あれこれ言われては「おまえねぇ…」「しゅーっと出てる、そのしゅーっとは描けないよ」とあきれながら笑う「先生」が素敵。
楽しいだけじゃなくて幸せな気持ちになれる。最高。


南なん師匠「寝床」
噺家はいろんな習い事をします。
私も習いました。最初は小唄。お師匠さんが女性でね、まぁまぁきれいな方で。習ってたんですけど「個性的な歌い方ですね…」と言われ、そうこうしているうちに師匠が患ってしまって、やめました。
次が長唄。これも女性の師匠。ここでも「なんでそんな歌い方なんですか」と言われて…そうこうしているうちに師匠が患ってしまって、やめました。なぜかあたしが習うと師匠が患っちゃうんですね。
その次に行ったのが踊り。ここの師匠は気の強い人でね、ものさしで背中をぴしーっと叩いてくるんですよ。「そうじゃない!」ってんで…。そうしてるうちに、あたしの方が患っちゃいまして…。

そんなまくらから「寝床」。
長屋を一回りしてきた清三を待ってる旦那が声慣らしをちょこっとするだけで、ものすごくて笑える。
清三さんが次々言い訳をするんだけど、それがとても怯えていておかしい。一方の旦那はどんどん顔が険しくなっていく。
言い訳を出し尽くした清三に旦那が「お前は?お前はどうなんだ?」と言う時の顔がわなわなしていてめちゃくちゃおかしい。
こりゃまずいとなって番頭が旦那にあれこれくすぐるようなことを言うと「え?〇〇みたい?それは誰が言ってたんだ?」と身を乗り出す旦那。

長屋の人たちが集まってきて料理を食べているところ。「酒飲んで神経を麻痺させなきゃ」「義太夫が始まると食べ物の色も変わっちゃうから今のうちに食っておかないと!」と大慌てなのがばかばかしくて笑ってしまう。

そして実際に旦那が歌いだすところ…想像以上の迫力でおかしすぎる…。もう南なん師匠がひたすらバカバカしく攻めてくるこの噺、楽しい!!

最初から最後まで笑い通しだった。幸せ!

末廣亭6月下席昼の部

6/24(土)、末廣亭6月下席昼の部に行ってきた。


・緑助「つる」
・喬の字「出来心(前半)」
・ストレート松浦 ジャグリング
・天どん「ハーブをやっているだろ!」
・馬遊「牛ほめ」
・小菊 粋曲
・あんこ「初天神ウルトラマンかっぽれ」
・志ん輔「宮戸川(上)」
・にゃん子金魚 漫才
・圓丈「ランゴランゴ」
・伯楽「猫の皿」
・アサダ二世 マジック
・小里ん「棒鱈」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・一風・千風 漫才
・種平「忘れ物承り所」
・小ゑん「吉田課長」
・紋之助 曲独楽
喬太郎「極道のつる」

 

緑助さん「つる」
面白くしよう、笑わせてやろうというのはわかるんだけど、そのせいで散漫な印象。確かに面白くもなんともない噺なんだけど、普通にやれば笑いが起きるところも起きないのは、間がよくないからだと思う。
ってえらそーにごめん。でもうけよううけようとする前座さんは苦手。


天どん師匠「ハーブをやっているだろ!」
出囃子が流れてきて「え?天どんさん?!」。どうやら一之輔師匠の代演らしい。
二階席まで満員のお客さん、なんかそんなに笑わないなぁ…という印象だったんだけど、天どん師匠の自虐的なまくらで笑いがどんどん起きてきて、そのまくらの続きのような「ハーブをやっているだろ!」で大爆笑に。
すごいすごい。それまでの重たい空気をがらっと変えた!ちょっと鳥肌もんだった。


圓丈師匠「ランゴランゴ」
「台詞を忘れちゃうんだよ」と目の前に釈台を置いて…。
前は苦手だった圓丈師匠、最近好きになってきた。
シュールで面白い噺だなぁ。タイトルだけ聞いたことがあって前から聞いてみたいとおもってたんだ。
「えーっとどこまでいったかな」と台本をめくるのも落語の一部みたいでおかしかった。


伯楽師匠「猫の皿」
いつも自分の本の宣伝をするから好きじゃなかったんだけど、「猫の皿」がすごくよくてびっくりしてしまった。
茶店で休んでいる時の景色が目に浮かんできて、そこで目にした猫の皿、店の主人とのやりとり。さらっとしていてでもとても落語らしくて素敵だった。


さん助師匠「胴斬り」
ずっと聞きたいと思っていたさん助師匠の「胴斬り」にようやく遭遇!わーーい!
好きなんだよねぇ、この噺。
辻斬りにあって、上半身と下半身が真っ二つになってしまった男。上半身が天水桶の上に乗っかって「どうにかしないと」と困っていると友だちが通りかかり、声をかけるとびっくりしながらも家に連れて帰ってくれる。
上半身をおんぶして下半身と手をつないでってその状況も相当シュールなんだけど、そうなりながら「おめぇ、いつまでもぷらぷらしてるからこういうことになるんだぞ。ちゃんと働け」って説教するっていうのがおかしすぎる。
そして家に帰ってきてからの奥さんの反応も、ぎゃーーって驚きながらも「お前さんが酒飲んでいつもふらふらしてるからだよ!」って…。そっち?!

上半身、下半身別々に奉公に出て、両方の様子を見に行く友だち。
下半身の方が就職先でバカに評判がいいのがおかしい。
そして下半身が話をする様子を、人差し指と中指のちょこちょこした動きで表現するばかばかしさったら!

いやぁ楽しかった!


種平師匠「忘れ物承り所」
この代演はうれしい。

物忘れが激しくなった。もうなんでも忘れちゃう。数字なんか全然覚えていられないので電話番号も覚えてられない。電話番号は携帯に入ってるからそれを見ればよさそうなもんだけど、名前も忘れちゃってるから何をどう探していいかわからない。

…ぶわははは!おかしすぎる!
肩の力が抜けたゆる~いまくらがすごく楽しい。なんか芸協の師匠みたいだな、このゆるさ。

忘れ物も多くなったというまくらで、あ、「忘れ物承り所」だな、とわかる。種平師匠、この噺率が高い。他の噺も聴いてみたいな。


小ゑん師匠「吉田課長」
楽しかった!
バーコードとあだ名のついた吉田課長が、単身赴任先のアメリカから心機一転!とばかりに金髪のカツラをかぶって帰国。
もうそのハゲネタのおかしいことったら。
上の方が薄くなって、サイドの髪を上に持って行ってふわっとさせるしぐさがもうおかしくておかしくて。
またその言い草が(「本来あるべき場所に戻してやっているだけだ!」)最高。

最初から最後まで大笑いだった。


喬太郎師匠「極道のつる」
「つる」で始まって「極道のつる」で終わるという集大成感がたまらない。
もう喬太郎師匠がキレキレで極道の親分、若頭、爆発的にバカな若い衆、とやるのがたまらなくおかしい。
「じゃーーーと飛んできて、るっととまる」って…天才か(笑)。

笑った笑った。最高だった。

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/23(金)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。


・夏丸「代書屋」
・夢花「そば清」
・マグナム小林 バイオリン漫談
・富丸 漫談
・伸治「ちりとてちん
・南玉 曲独楽
・南なん「居残り佐平次

 

夏丸さん「代書屋」
「代書屋」といえば権太楼師匠なので、それと違う「代書屋」だとすごく新鮮。
突き抜けたバカもうまいんだな、夏丸さんって。

途中、五木ひろしの歌が入って、それがもう無駄にうまいしフルコーラスだしおかしくておかしくて。
夏丸さん、自分の魅力をフル活用だなー。すごい。


マグナム小林先生 バイオリン漫談
時々色物にこんな風に代演がはいるといいなー。毎日まったく同じネタが続くとさすがに笑えなくなってくるので…。


伸治師匠「ちりとてちん
今まで見た中で一番楽しい「ちりとてちん」だった。もう伸治師匠もノリノリで、自分も一緒になっていたずらに参加している気分。
存在だけで客席全体を和ませてくれて、毎日噺を変えてくれて毎日面白いって…。たまらん。


南なん師匠「居残り佐平次
南なん師匠の「居残り佐平次」は何回か見ているけど、前に見た時と違ってるところがあって、ああ、師匠、いろいろ変えて試してるんだな、と思う。

最初、仲間を連れて品川に繰り出すところでは近所の若い衆の兄さんっぽい雰囲気を出している佐平次が、居残りを始めて店の若い衆を煙に巻くところでは胡散臭い感じに。それが店で居残りとして働き始めると、人懐っこい憎めない感じになって、大旦那に呼ばれたところではまた胡散臭くなり、最後の若い衆とのシーンではちょっと詐欺師っぽくなる。

この噺、いつも見終わると、結局佐平次ってどういう人だったんだろうなぁ、と考えてしまうんだけど、南なん師匠の「居残り」を見ていると、答えなんていうものはないのかもしれないな、と思う。

そのなんともいえない後味がとてもよかった。

私をくいとめて

 

私をくいとめて

私をくいとめて

 

 ★★★★

黒田みつ子、もうすぐ33歳。一人で生きていくことに、なんの抵抗もない。だって、私の脳内には、完璧な答えを教えてくれる「A」がいるんだから。私やっぱり、あの人のこと好きなのかな。でも、いつもと違う行動をして、何かが決定的に変わってしまうのがこわいんだ―。感情が揺れ動かないように、「おひとりさま」を満喫する、みつ子の圧倒的な日常に、共感必至!同世代の気持ちを描き続けてきた、綿矢りさの真骨頂。初の新聞連載。  

え?これが綿矢さん?と戸惑うほど、いつものピリピリと張りつめたような緊張感がなく、かわりにゆったりしたユーモアで満ちている。

逼迫したタイトルと裏腹に、どこにでもいるような「おひとりさま」のアラサー女子の日常。
唯一おや?と思うのは、彼女が脳内で話しかけるAという名をつけたもう一人の自分の生々しさ。それだってそれほど異常なことではないように思えるのだが、でももう一人の自分とは思えないほど客観的だったりかけてくることばが的確だったりするのがちょっと面白い。面白いのと同時にちょっと怖くもある。

居心地のよい自分の安全な領域を飛び出す主人公にエールを送りつつ、でもこれから先(アラサーの先)の人生の方がますますしんどくなるわけで、またAが必要になるかもね、とも思う。

酷評も多いようだけど、私は好きだったな、この作品。

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/22(木)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。


・夏丸「英会話」
・夢花「そば清」
・コントD51 コント
・富丸「?(スチューワーデスがどうしたこうした…)」
・伸治「お菊の皿
・南玉 曲独楽
・南なん「笠碁」


夏丸さん「英会話」
この噺、あんまり面白い噺じゃないなぁと思っていたんだけど、すごく面白かった!
まくらでもちょっとシュールなダジャレみたいのを連発していて、その流れからのこの噺で、この昭和チックな嘘英語が力が抜けてて楽しいのだ。

夏丸さんって自分の会だとなんかデリケートな傷つきやすい感じがするけど、寄席で見るとふてぶてしいくらい堂々としていて、そのギャップが素敵だ。


伸治師匠「お菊の皿
もうほんとに毎日この位置に伸治師匠!という喜びをかみしめる。出てきただけでぱーっと明るくなる。こういう師匠、協会にはいないよなぁ。

お菊さんをきゃーきゃー言いながら見に行って喜んでる若い衆と楽しそうな伸治師匠が重なってもう楽しい楽しい。
大好き。(←なんか毎日同じこと言ってる気が…)


南なん師匠「笠碁」
すごくよく笑うお客さんでその客席と南なん師匠の「笠碁」が気持ちよくマッチして楽しい楽しい。

おじいさん同士の意地の張り合い。
笠をかぶってポストのところで考え込んでいるおじいさんと、来てくれてうれしいのに怖い顔をして煙草を吸うおじいさん。
その顔がもうおかしくてかわいくて大笑い。

南なん師匠もとても楽しんでやっているのが伝わってきて、この一体感が最高だー!と思う。
南なん師匠って、お客さんが陽気だとか陰気だとかそういうのを超越している感じがあって、かといってお客さんの事をまったくなんとも思ってなくてちゃんと感じていくれていて、その孤高な感じと温かさがたまらなく好き。

寄席の後、落語のお友だちと二人で飲みに行き、南なん師匠はなんていいんだ!と語り合いながら飲む幸せ。
酔っぱらって終電なのに全然手前の駅で降りてしまいタクシーで帰ることになったのはちょっと余分だった。とほほ。