りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

12/18(水)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第三十三回「大団円」
京都からどうにか逃れた義松は馬に乗って江戸へと向かう。
馬子に向かって「そろそろ昼食にしよう。ここいらでうまい店はあるか?」と聞くと馬子は「それならば大磯にある 平野屋 (だったか?)という旅籠がいい。3年前にできた旅籠だがめしはうまいし安いし、主は情け深い人だし、なによりおかみさんがいい女」と言う。
いい女と聞いて義松が「それはどういう女だ?名前は?」と身を乗り出すと馬子は「あんたいい女と聞いて急に身を乗り出して来たな。うちの馬と一緒だな」と笑いながら「お静といって、なんでも女郎あがりらしい」。
お静と聞いてはっとする義松。
それじゃその平野屋 に行って休もうじゃないか、と話す。
 
馬子には金を渡し、義松はその晩平野屋に泊まる。
帳場の隣の部屋ではこの宿の主と女房が差し向かいで座っている。それを覗いた義松が驚いた。
主の方はなんと清蔵!
二人が話しをしているのをしばらく覗いていた義松だったが、頃合いを見計らって大声を出して部屋に上がっていく。
自分が女郎屋に売ったお静に向かって「俺の帰りをこんなところで待っていたのか」とうそぶき、清蔵に向かっては「俺が女郎に売った女を勝手に見受けしやがって」とすごむ。
ついに清蔵 と義松の悪人対決!(ちょっと二人の見分けがつかない!)
さんざん言い合った挙句義松は「わかった。お静を返せとはもう言わない。そのかわりここに置いてくれないか」と言う。
清蔵が「了見を入れ替えて奉公しようって言うのか?」と言うと「そんなわけねぇだろう」と義松。
この辺りに家を構えて白いもん(女のことらしい)でも連れてきてこれからは遊んで暮らすから、その金を寄こせ、と言う。
清蔵が「お前になんでそんなことをしてやらなきゃいけないんだ」と言うと、義松は清蔵が今までしてきた悪事を並べ立てる。
 
西海屋の主を殺し、その妻お貞を自分の女房にしたくせに、お静に入れ込んで、お貞を蹴り殺し、二人の子どもだった松太郎は嘉助に金をやって殺させることにした
自分は何もかもこの目で見て知っている、と言う。
「証拠はあるのか」と言うと「自分が見たことが何よりの証拠だ」と言って、現場にいた者でないと知りえないことを言うと、清蔵は「それがどうした」と開き直る。
開き直って自分がしてきたことを言い募る清蔵。
言い終わったところでいきなり戸が開き、そこには二人の侍が。
それが四郎治と松太郎。
 
四郎治は名前を名乗り、松太郎が敵討ちに来たことを告げる。
証文もあると聞いた清蔵は松太郎に向かって「今までどこでどんな(酷い)暮らしをしてきたんだ」とバカにしたように聞く。
松太郎は 嘉助が自分を和尚(花五郎)に預け、そこで大事に育てられたこと、そののち 四郎治の元へ行き剣術の指南を受けていた、と答える。
 
いよいよ松太郎が剣を抜くと、懐に入れていた小刀で応戦しようとした清蔵だったが、腕の違いは歴然としていて、清蔵は斬り殺される。
それを見てお静がそっと逃げ出そうとすると、四郎治(だったか?)が手裏剣を投げて、それが首にあたりばたりと倒れるお静。
それを見て義松がやいやい言い出すと、「ちょっと待て」という声とともに入って来たのが、なんと花五郎。
義松に向かって「今お前は仇討とはなにごとだ!と言っていたが、それならばお前も父親の仇を取れ」と言う。
義松がなんのことだ?と聞くと、和尚は今までのいきさつを語る。
自分の父を殺したのが和尚だったことを聞いて呆然とする義松。刀を構え、斬りかかる…と思いきやその刀を自分に向け腹を斬る。
そして語りだす。
 
最初に預けられたところで自分はそこの家の本当の子どもであった重太郎にたいしてひがみを抱きひねくれて育ち、そののち辰五郎に預けられたが、実はそれが自分の母親を殺した男で、それも知らずにその二人と一時期は愛人でもあった妹も殺したこと。
その後も悪事を重ね人を殺し流れ流れてここまで来たこと。
和尚は自分を西海屋に送り込んでくれた恩人。確かに自分の父を殺した仇だが、父が相当な悪党であることは聞いた。
だから和尚を斬ることはできない。自分で自分を斬るのが自分にはぴったりな末路だ。
そう笑いながらも、「でも一つだけ頼みがある」と義松。
自分の兄である重太郎を探してこれだけは言ってほしい。義松は自分で自分を斬って死んだ、と。それだけは…。
 
そう言っていると「ちょっと待て」と声がして戸が開いて現れたのがなんとその重太郎本人。
会った時になぜ義松を捕まえなかったのか、そのことを自分はずっと後悔していた、と語る 重太郎 。
花五郎を殺さずに自分を斬りつけたということはようやく改心したんだな、と言う。
「兄さん…」と満足そうな義松はこれで心残りはないとばかりに刀を引こうとするがその力がすでにない。それを見た 重太郎は自らその刀で義松の腹を切る。
そして手裏剣が当たって倒れていたお静が目を覚ましこれも改心して死亡。
 
そののち、松太郎はこの平野屋の主となりそれを売却した金で清蔵、お静の墓を建てる。
また四郎治は兄の元へ。
嘉助は和尚のもとへ行き出家する。
めでたしめでたし。
 
…いやぁーーー見事に全てがおさまったのだ。
ありえないほどのイッツアスモールワールドぶりで平野屋に人が集まる集まる。
「ちょっと待った」で花五郎が出て来た時は思わず「出た!」って声が出ちゃうし、お静に手裏剣が飛んだところでは思わず「ぶわはっ!」と笑っちゃうし、重太郎が出て来た時は「また出たっ!」と思って、おかしくておかしくて。
笑うところじゃない!!と思って、必死に笑わないように我慢するんだけど、肩が震える震える。
必死に自分をぎゅうううううっとつねって声が出るのを我慢。
まさか西海屋でこんなに笑えるとは思わなかった。
 
いやでも最後まで聞いてほんとによかった。
ちゃんと全部が回収されていったし、なによりも何がしたいんだかわからなかった義松が自分のことを振り返って改心したのはよかった。
結局悪人の両親から生まれ父を殺され自分を連れて逃げようとした母を殺され…その因縁だったんだな、とようやく納得。
そして最後に残ったのはこの噺ではほんとに数少ない貴重な「善人」。
それならそうともう少しそちらにスポットを当てるとかー、義松にもう少しこう迷いや弱さがあったりとかー、そうしたらもう少し感情移入できたかもしれないのにな、とも。
 
それにしてもやりきったさん助師匠、すごい。
読みといたあらすじをまとめて製本したらほしいですか?の言葉に、わーー!と拍手。
「ま、まさかこんな反応が返ってくるとは…」とご本人は驚いてたけど、欲しいに決まってるー!
あーーでもこれで両国亭でのさん助ドッポはひとまず終わり。
終わっちゃったの寂しいーーー。この会、ほんとに毎回楽しみだった。会自体の雰囲気もそうだし、Unaさんとさん助師匠の雰囲気もよかったなぁ。
とりあえず次回は2020年5月4日(月)、深川江戸資料館(清澄白河)で「さん助ドッポ」。

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