りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん喬師弟九人会夜の部

10/19(土)、よみうり大手町ホールで行われた「さん喬師弟九人会夜の部」に行ってきた。

・さん助「三人旅ーびっこ馬ー」
・左龍「三人旅ーおしくらー」
喬太郎「笑い屋キャリー」
~仲入り~
・さん喬「幾代餅」
・小志ん「御神酒徳利」


さん助師匠「三人旅ーびっこ馬ー」
私今年初めてにっぽん丸に乗りました、とさん助師匠。
観光じゃなくて仕事ですよ。
毎日最前列に座って「待ってました!」と声をかけてくださるお客様がいらして、それが毎回同じ男性。「待ってました!大統領!」とか毎回掛け声を変えてくださるんですけど、最後もう言うことがなくなっちゃったんでしょうね。
最後の日には「待ってました!…将軍様!」。
…ぶわはははは。

その夫婦が実は隣の部屋で、エレベーターで会ったりするとめちゃくちゃ褒めてくれるんだけど、二人になると「たいして面白くなかったな」とか「今日はまぁまぁだったな」とか…毎日批判にさらされていた、というのにも笑った。

そんなまくらから「三人旅ーびっこ馬ー」
おお。田舎の馬子の本領発揮か(笑)。
江戸っ子が無尽に当たって大騒ぎ。そんなもんで銭もうけやがって!とおやじには怒られるわ友だちにはバカにされるわ。
じゃその金で吉原の大門を閉めちまえ!と言われて「それは…閉まらないかもしれねぇな」。
当たったのが十両というのがおかしい。
じゃその金で旅にでも出ようじゃないかということになり、でも自分たちは旅慣れないから誰か慣れているやつを誘おうと、くまさんも一緒に行くことに。
何日も歩いているうちにくたびれてきてもう歩きたくないという泣き言が出てきて、それなら馬に乗ろうじゃないか、ということになり、旅慣れたくまさんが「あそこに馬子がいるけどこちらから声をかけると足元を見られるから声を掛けられるのを待とう」。

馬子さんに声を掛けられた時の「あーーなんだ?」のわざとらしさと「へたすぎだろう!」がおかしい。
それから馬の上に乗ってあたりの風景を見渡すところ。いいなぁ。ちゃんと風景が浮かんでくる。
余裕が出てきて、あ、そういえば3つ目の馬が見えないぞと言うと馬子さんが「3つ目のはびっこ馬だから」。
びっこ馬に乗ってる男のぎっこんばったんが激しくて、自分で「やけくそでやってるんじゃないのか」と言うのがおかしい。
そしてこの馬が意外と感が強くて…というエピソードになった時、馬が棹立ちになって崖の下に真っ逆さま。
「ちゃんと助けたんだろうな」
「ああ、助けたよー。客だけ」

…ん?客を助けた?んだったら普通じゃねぇ?と思ったら、「助けたよ、馬だけ!!馬!…間違えちゃった」。
ぶわははははは!

間違えも含めておかしかったー。ってそうじゃなきゃさん助ファンなんてやってない(笑)。楽しかった。


左龍師匠「三人旅ーおしくらー」
まくらなしで3人が宿を探すところから。
おおおお!「三人旅」のリレー!ああっ、こういうことをしちゃうからさん喬一門はたまらない。うれしいー。
宿に入って足を洗ってくれる宿屋のねえや。
「ああ…思い出しちまった」と涙。
「うれしいねぇ。田舎の恋人の足に俺の足が似てるのかい?」と聞くと「田舎に残してきた牛に似てるんだ」に笑う。
それから宿のあがって飯が先か風呂が先か、これが聞き取れなくて何度もやりとりをするのがおかしい。江戸っ子だから聞き返したりできなくて「あーーなるほどね」と3人が3人ともかっこつけるおかしさ。
せっかくだからお楽しみを…と頼んだところ、女の子が2人しかいない、と。
それは困るよ、おれたち3人なんだから。そこをなんとかと頼むと、「一人だけ都合できなくはないけど年増だけど…」。
「いいよいいよ色は年増に限るんだから。あ、待て待て。それっていくつ?」
「米寿の祝いが済んだところ」。

その後の兄貴分の嘘にまんまとひっかかった男があくる朝むくれているのもおかしいけど、それでもちゃんとお礼にご祝儀を渡すのも楽しい。
やっぱりこういう「見栄」ってすごい大切だよなぁ。今の日本人にはそういう見栄がなくなっちゃったからぎすぎすしちゃってるのかもしれないなぁ。

楽しかった。
この二人のリレーで「三人旅」見たことあったよなと思ったら、にぎわい座で見ていた。

 

喬太郎師匠「笑い屋キャリー」
高座にあがるなり「いやぁいまの三人旅のリレー、よかったすねぇ!」「だなぁ。こういうの嬉しいよなぁ。俺たち前座だけどこういうの見られると、ああ、噺家っていいなぁって思うよなぁ」。
いきなり噺に!しかもちゃんと前の落語からの流れで。

浅草演芸ホールで前座を勤める二人。
朝からお客さんが2階席まで入り、前座の時からどっかんどっかん!
なんだこれは?どうしたんだ?とみると、1階の客席の真ん中に外国人の女性。この人がものすごいウケるもんだからそれがまわりに波及しているのだ。
しかし実はこの女性にはある目的があり、この人が客席にいるおかげでお客が徐々に減っていき、落語家はみんな心が折れて壊滅状態に…。

…次々登場する落語家さんの物まねや「いつものネタ」が入ったり、毒気もたっぷりで、もうおかしいおかしい!
普段寄席に行っている人ほど細かいあれこれがツボでたまらないのだ。

いやぁひっくり返って笑った。楽しかった~。最高~。


さん喬師匠「幾代餅」
穏やかで上品な「幾代餅」。
親方が嘘をついたと怒る清三に親方が語って聞かせるシーンにはちょっと涙が出てしまった。優しさ…。
仲入りの前の破壊的な大爆笑を一度しっとり落ち着かせて、今年真打に昇進した弟子に花を持たせるって…素敵だったな。