りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

西欧の東

 

西欧の東 (エクス・リブリス)

西欧の東 (エクス・リブリス)

 

 ★★★★

過去と現在、故郷と異国の距離を埋める

過去と現在、故郷と異国の距離、土地と血の持つ意味……〈BBC国際短篇小説賞〉および〈O・ヘンリー賞〉受賞作を含む、ブルガリア出身の新鋭による鮮烈なデビュー短篇集。
マケドニア脳梗塞で倒れた妻を介護する70代の主人公は、結婚前に10代の妻が受け取った恋文を偶然発見する。そこには1905年にオスマン・トルコ打倒を目指して義勇軍に加わった恋人の体験が綴られていた。
「西欧の東」 共産主義体制下のブルガリア、川によってセルビアと隔てられた国境の村に生まれた「ぼく」。対岸の村に住むヴェラへの恋心と、「西側」への憧れを募らせつつ成長する。ある日、姉が結婚を目前に国境警備隊に射殺され、家族の運命は大きく変わる……。
「ユキとの写真」 シカゴの空港で出会った日本人留学生ユキと結婚した語り手は、子供に恵まれず、祖国ブルガリア不妊治療を受けることを決意する。祖父母の家がある北部の村に滞在中、ユキは「本物のジプシー」を見てみたいと口にする。
いずれもブルガリアの歴史や社会情勢を背景とする、長篇小説のようなスケールのある読後感を残す8つの物語。その1篇「ユキとの写真」は、現在映画化が進行中。なお、著者自身が翻訳したブルガリア語版は母国でベストセラーとなった。

 

そういえばブルガリアの作家を読んだことがなかったかもしれない。

政権が不安定で社会体制が変わったり領土が奪われたり国が分断されたり。そんな中で希望を持って生き抜いていくことの難しさを感じる。

読んでいる間ずっと心がざわざわして気持ちが不安定になったのはなぜなんだろう。静かに見えて時々垣間見られる荒々しさや虚無感が正直あまり好みではなく、読むのに時間がかかったが、しばらくたってみると1つ1つの物語に印象的なシーンがあってそれが妙にあとをひく。