りつこの読書と落語メモ

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私はあなたの記憶のなかに

 

私はあなたの記憶のなかに

私はあなたの記憶のなかに

 

 ★★★★

角田ワールド全開!!待望の小説集。「父とガムと彼女」初子さんは扉のような人だった。小学生だった私に、扉の向こうの世界を教えてくれた。「猫男」K和田くんは消しゴムのような男の子だった。他人の弱さに共振して自分をすり減らす。「水曜日の恋人」イワナさんは母の恋人だった。私は、母にふられた彼と遊んであげることにした。「地上発、宇宙経由」大学生・人妻・夫・元恋人。さまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語。「私はあなたの記憶のなかに」姿を消した妻の書き置きを読んで、僕は記憶をさかのぼる旅に出た。(ほか三篇)

誰かのことを好きになったり憎んだり、好きだったわけではないけどいつまでも引っかかっていたり、何度別れても忘れられなかったり…それは相手によるものというよりは自分の気持ちの問題なんだと思う。
自分がどういう人間で何に憧れどうなりたいのか、どうなりたくないのか。今どういう状態にあるのか。
なにかしら満足しきれていないからこそ誰かのことを強烈に好きになったり憎んだりする。
結局相手と自分ではなく、どこまでも自分ありきなんだな。最初から最後までほんとはずっと「ひとり」なんだ。

そんなことを「猫男」「神さまのタクシー」「空のクロール」を読んで感じた。

好きだったのは「父とガムと彼女」「水曜日の恋人」「おかえりなさい」。これらには、「ひとり」の私が少しだけ誰かと混じりあえる、そんな瞬間が描かれているように感じた。

壮絶な虐めを描いた「空のクロール」は好きな話じゃないけどずっと忘れられそうにない。
酷い場面よりも、なぜか美しい場面が印象に残っている。

表題作の妻は、現実の自分をもっと見てほしかったのかあるいは記憶の中に閉じ込めてもらいたかったのか。ほんとは探してほしいのか、探してほしくないのか。読む人によって答えは違うような気がする。