おまえじゃなきゃだめなんだ
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/01/05
- メディア: 文庫
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ジュエリーショップで、婚約指輪を見つめるカップルたち。親に結婚を反対されて現実を見始めた若い二人と、離婚を決めた大人の二人。それぞれの思いが形になる光景が胸に響く「消えない光」他23編。人を好きになって味わう無敵の喜び、迷い、信頼と哀しみ、約束の先にあるもの―すべての大人に贈る宝石のような恋愛短編集。
アンソロジーでもテーマの決まった短編集でも必ず期待にこたえる角田さんは本当に出来る作家だよなぁといつも思う。
前半は、さすがにこれぐらい短くて物語に「縛り」があるとこれぐらいが精一杯なんだろうな、なんて失礼なことを思っていたのだが、表題作の素晴らしさ!このタイトルで山田うどん!意表をついているだけじゃなくものすごーく身につまされる。すごくいい。
うどんが。鼻水のせいで味がわからなくなり、ティッシュを取り出して鼻をかむ。うどんをすする。うどんが。こんなうどんが、「おまえじゃなきゃだめだ」と言われているのに、私は。私ときたら。
若いときは気づかなかったのだ。私のことなんか、だれも見ていないということに。だれかと比較することなく、だれにどう思われるかなんて気にすることなく、自分のことだけにせいいっぱいかまけていればよかったのだ。どうしてわからなかったのだろう。
「芙蓉館 御殿場市三ノ岡」もめちゃくちゃ秀逸だ。
もう最後のシーンのおかし悲しさはたまらない。何度読み返しても笑ってしまう。
「スカイビル十四階 横浜市西区高島二丁目」もおかしい。
「エマ・ヌマタ的」のたまらないおかしさ!子どもだからこそ敏感に感じる恥ずかしさの表現が秀逸だ。
やっぱり角田さんは最高だわ。角田さんの長編はヘヴィなものが多いので、短編のこの気楽さは楽しい。