妻が椎茸だったころ
- 作者: 中島京子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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オレゴンの片田舎で出会った老婦人が、禁断の愛を語る「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」。暮らしている部屋まで知っている彼に、恋人が出来た。ほろ苦い思いを描いた「ラフレシアナ」。先に逝った妻がレシピ帳に残した言葉が、夫婦の記憶の扉を開く「妻が椎茸だったころ」。卒業旅行で訪れた温泉宿で出会った奇妙な男「蔵篠猿宿パラサイト」。一人暮らしで亡くなった伯母の家を訪ねてきた、甥みたいだという男が語る意外な話「ハクビシンを飼う」。
5つの短篇を収録した作品集。第42回泉鏡花賞受賞!
面白かった!中島さんは何作か続けて読んでピンと来なくて、特に評判が高くて代表作ともいうべき「小さいおうち」が私にはちっとも響いてこなかったので、こりゃ私には合わないのだろうとしばらく離れていたんだけど、こんな作風だったっけ?
どの話も日常と異常のバランスが絶妙でたまらなくいい。
「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」
善意のかたまりのように見えたおばあさんの語る生々しい性。
しかしそれも語り手の英語能力が低いために本当にそう言ってたかどうかさえもあやふや。それだけにその出来事だけがリアリティがなくてふわふわしている。まるでアメリカの安っぽいドラマを見ているようなラストシーンがたまらない。
「妻が椎茸だったころ」
料理上手な妻の残した愚痴や自慢が散りばめられた料理ノート。
長年連れ添った夫婦でもお互いの全てをわかり合えていたわけではない。それでも残された料理ノートを手がかりに妻がこの世を去ってからようやく少しだけ妻の近くに行けたような夫が微笑ましい。
いい話にも思えるし、怖い話にも思える。
そのほかの作品も静かで不気味でほんのり優しくてどれも好き。
自分の予想を超えた何かを見たときに感じるゾッとするようなワクワクするような気持ち。私もそんな気持ちを誰かに抱かれてみたいかも。