雪の階
★★★★★
昭和十年、春。数えで二十歳、女子学習院に通う笹宮惟佐子は、遺体で見つかった親友・寿子の死の真相を追い始める。調査を頼まれた新米カメラマンの牧村千代子は、寿子の足取りを辿り、東北本線に乗り込んだ―。二人のヒロインの前に現れる、謎のドイツ人ピアニスト、革命を語る陸軍士官、裏世界の密偵。そして、疑惑に迫るたびに重なっていく不審な死。陰謀の中心はどこに?誰が寿子を殺めたのか?昭和十一年二月二十六日、銀世界の朝。惟佐子と千代子が目にした風景とは―。戦前昭和を舞台に描くミステリーロマン。
素晴らしかった!
最初から最後まで好みで夢中になって読んだ。読んでいる間、谷崎を読んでいるときのような楽しさがあった。
内容は決して軽くないんだけど、どこかユーモアがあってふっと笑ってしまう部分がありつつ、ミステリー的な要素もあり、時代や身分の違いによる部分を楽しみながらしかし政治や人間のありようは現代につながるものもあるなぁと考えつつ、物語の波に巻き込まれる楽しさ。
文章もとても美しくてそこも読んでいて大変楽しかった。
奥泉作品の中では「鳥類学者のファンタジア」が飛びぬけて好きなんだけど、これも同じぐらい好き。よかった!