りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

グランド・ミステリー

グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)

グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)

★★★★

昭和16年(1941年)、真珠湾攻撃の只中に、榊原大尉が不可解な服毒死を遂げた。加多瀬大尉は未亡人となった志津子の依頼を受け、その死の真相を追いはじめたが、突然志津子が姿を消した。長編ミステリーロマン。

戦争物が苦手なので、これはだめかも…と及び腰で読み始めたんだけど、読み進めるうちにどんどん物語に引き込まれていった。
最初は話に転んでいくのか読んでいて分からず、????になりながら、それでも登場人物が非常に魅力的で生き生きしていて、時に「ぷぷっ」と笑ったり、じーん…と涙しながら、読んでいた。

が、中盤以降、激しく物語が展開していき、おおお、そうきたか!(←なんのこっちゃ…)
とにかくこれは前提知識なしで読んだ方が楽しめると思う。
読書の喜びを十分に感じさせてくれる小説。と言っておきたい。

以下ネタバレ。

























奥泉さんだからおそらくSFチックなのでは?という期待を持って読んでいたんだけれど、やはりその期待は裏切られなかった。

中盤から、前半で死んだ榊原大尉が生きていたり、範子が木谷中尉と結婚していたり、本の引用があったりして、だんだん物語がねじれてくる。
そして主人公の加多瀬は、謎の死を遂げた榊原大尉の真相をさぐるうちに、別々の場所で起きていた出来事が徐々につながりを持ち始め、独身ライフをエンジョイしているだけのように見えていた範子の恋愛話もだんだんきな臭くなってくる。
このあたりは、SFというよりはミステリーっぽい。

歴史物、SF、ミステリーの要素があって、友情や恋愛やそれぞれ生き方の葛藤もあり、非常に盛りだくさん。
ただ、風呂敷を広げるだけ広げて、最後はちょっとぎゅぎゅっとまとめちゃったみたいな感じがしないでもない。