りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

浅草演芸ホール5月中席夜の部

5/16(火)、浅草演芸ホール5月中席夜の部に行ってきた。
 
・小蝠 漫談
・とん馬「小言念仏」
宮田陽・昇 漫才
・歌春「鈴ヶ森」
・正二郎 太神楽
・蝠丸「昭和任侠伝」(「任侠への道」)
 
伸治師匠「まんじゅうこわい
なんて楽しい「まんじゅうこわい」なんだろう。
この噺がこんなに面白いなんて!と思ったのは、夢吉さん(今の夢丸師匠)のを見た時以来かもしれない。
あれがこわいこれがこわいと言われた時の兄貴分の反応がすごく楽しそうで、さらに理由を聞いてそれがくだらないダジャレだったりするのがもうばかばかしくて楽しくて。

まんじゅうをほおばるときのうれしそうな顔とうきうき弾む(ほんとに座布団の上で弾んでる!)様子が見ていてほんとに楽しい。
たのしくなさそう~にやる前座さんやニツ目さんは伸治師匠の「まんじゅうこわい」を見た方がいいよ(笑)!
 
蝠丸師匠「昭和任侠伝」(「任侠への道」)
「私が若いころは映画の全盛時代でして、時代劇や任侠映画を夢中になってみたものです。当時人気があったのは…」と「旗本退屈男」、「遠山の金さん」の話をたっぷり。

遠山の金さんはね、二つの顔を持ってるんですよね。遊び人の顔とお奉行様の顔。それで前半はまず遊び人で悪いやつが集まってるところに行くんですよね。そこでね、肩のところから背中にかけて桜吹雪のね、彫り物があってね、それをちらっちらっと見せるんですね。で、後半になって悪者をお白州に呼び出してね、悪者たちは最初しらばっくれるんですよね。そこで「遊び人の金さんが知ってるぞ」って脅すと「誰でしたっけそれは」って悪者がすっとぼけるんですよね。

そうすると奉行様が「この桜吹雪が見えねぇか」ってね、脱ぐんですよね。
でもね、桜吹雪見る前に気付かないのかって話ですよね。顔見てわからないんですね。悪者にはね。
子ども心に、悪いことをすると記憶力が悪くなるんだなって思ってましたね。
 
旗本退屈男」は「額にね、黄色い傷があるんですよね。まるで書いたみたいにね。で、その傷がいつまでたっても直らないんですね。よっぽど傷の治りが悪い人なんですね」。
蝠丸師匠の淡々として口調でこういうことを言われるともうおかしくておかしくて大爆笑。
 
「それからね。これはあんまり話したことないんですけどね。私、映画に出たことがあるんですよ。山田洋二監督がたまたま寄席に来ていてね、この役はあなた以外に考えられないって直々に電話がかかってきましてね」。
薬師丸ひろ子が出たという映画に出演したという蝠丸師匠。この話もおかしかった~。
 
「なんであたしがこういう話をいつまでもしてるかっていうとですね…今日やる噺、短いんです」。
そんなことを言いながら、がらっと声の調子が変わって落語へ。
うわっ!かっこいいっ!
なのにまた声を戻して「あのー落語に入りましたよ」と言うのがおかしい~。ほんとにこの師匠は自由自在というか…上手なのに「うまいだろ」っていうところが全然なくて肩の力がふわっと抜けていて素敵。
 
健さんの映画を見てすっかり健さん気分になって真似をしながら帰ってくる八百屋の息子。
「私なんかも一日中高倉健さんの映画を見てると映画館を出るときは目つきが変わっててね」と話していたまくらが効いていて、その姿が目に浮かぶ。
風呂屋へ行く時、後ろから女に声をかけられて、健さん気分でかっこつけて振り向いたものの、たんに手拭いを落としていたのを教えてくれただけだったり、刺青を入れようと彫り物師のところを訪ねるも、ちょっと触られただけで痛い痛いと大騒ぎ。
やっぱりムショに入らなきゃ!と八百屋でバナナを一本盗むのだが「お前、八百屋のせがれじゃねぇか!」とあきれられる。
 
…とにかく最初から最後までばかばかしくて、でも健さんになりきる様子がさまになっていて、楽しい~。
珍しい噺を聞けて満足満足。

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実はこの日、満員のお客さんだったんだけど、おじいさんおばあさんが多くていつも以上にざわざわした雰囲気。
私の隣に座ったおじいさんが、「寄席はこういうもんだ」と勘違いをしているのか、一緒に来ているおじいさんに「通」なところをアピールしたいのか、まくらにいちいち大声で野次を飛ばす。
「それじゃつまんねぇぞーーー」「いいぞーーーー」「〇〇じゃなきゃだめだぞーーーー」。
 
…場末のプロ野球じゃないんだから…。これがずっと続くのはとても耐えられそうにない…。帰ろうかな…と思いかけたんだけど、考えるより先に手が動き、おじいさんの腕をつかんで「シーッ」。
初めて寄席で他のお客さんに注意しちゃった。

おじいさん、酔っぱらってるわけでもなかったので、それから少し静かになってくれて、でも野次を飛ばしたくて仕方がなかったみたいで、前座さんが座布団を変えに来るたびに「いいぞーー」「がんばれーー」の野次を飛ばしていた。
 
人に注意するって本当に苦手なんだけど、素直なおじいさんでよかった…。
でもおじいさん、噺の最中には野次を飛ばせないからつまらなくなっちゃったみたいで、静かになったなと思ってみたら寝ちゃってた。
楽しみを奪っちゃってごめんね。