りつこの読書と落語メモ

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フェリシアの旅

 

フェリシアの旅 (角川文庫)

フェリシアの旅 (角川文庫)

 

 ★★★★

男は車のミラーから彼女を凝視していた。映っていたのは、十七歳の少女フェリシア。連絡先も告げずに去ってしまった恋人を捜すためにアイルランドからイギリスにやってきた。何の手がかりもなく。車の男ヒルディッチは、町工場の食堂の責任者。だが彼には知られざる性癖があった。天才的な嗅覚で家出娘たちを捜し出し、巧妙に助けの手をのべ、感謝され、そして―殺す。男は偶然の出会いを演出し、静かに、だが確実に、彼女を追いつめていく―。アイルランドの実力派による同名映画の原作。  

 

サスペンスタッチなストーリーにこれがトレヴァー作品なの?と驚きながら、前半は「もう読むのやめようかなぁ…」と腰が引けながら読んだのだけれど、最後まで読むと驚きの着地が待っていて、ああやっぱりトレヴァーなのだなぁと思う。

早くに母に死なれ100歳になる祖母の介護や家事を一手に引き受けている少女フェリシア。その彼女が恋をして恋人に会うために家出をする。
そこで彼女が出会ったのが表向きは気のいい食堂長だが実は恐ろしい闇を抱えた中年男ヒルディッチ。

純粋なフェリシアがヒルディッチの罠にはまっていくのが読んでいて苦しくて、また彼女が不実な恋人にしか「未来」を見ることができないのもかわいそうで、読んでいて息苦しくなる。

一方ヒルディッチの方は表と裏の顔を使い分け、実に巧妙にフェリシアをとりこんでいくので、彼の目的はなんなのか、どんな恐ろしい結末が待っているのかと読んでいたのだけれど、最後まで読むと彼への印象が少しだけ変わってくる。

フェリシアがたどり着く境地に驚きつつも彼女の旅はまだ始まったばかりなのだとも思う。