りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家さん助の真夏の夜の夢

8/6(土)赤坂峰村で行われた「柳家さん助真夏の夜の夢」に行ってきた。
この日は昼間日暮里のスケスケ落語会に行き、その後こちらの会というダブルヘッダー。最初はスケスケは無理かなとあきらめていたんだけど、日暮里と赤坂って意外と近い!ということに気づいて両方行くことに。
しかしほんとに時間ギリギリ。しかも圧倒的な方向音痴。ナビが「目的地に到着しました」と告げてもまだ店が見つからない。ぎゃーーどこーーー!!と焦った焦った。どうにか間に合ったのでよかった。

・さん助「宮戸川(上)」
・さん助「もぐら泥」
・さん助「宮戸川(下)」

さん助師匠「宮戸川(上)」
例によって立ち話。福岡に行った時、主催者さんが気を使って人気の店に連れて行ってくれたんだけど定休日。そういうこともあろうかと人気NO2の店に行ってみると、仕込みのため遠方に行っているため臨時休業。
「仕込みのため遠方へ」というのがツボだったらしいさん助師匠。
いいですね。わたしも使ってみたい。自分の落語会の会場に「仕込みのため遠方へ行ってるためお休みします」。

そんな立ち話から座布団に座った途端「宮戸川(上)」。さん助師匠がこの噺をやるイメージがなかったのでびっくり。でもさん助師匠だからもしかして通しでやるような予感が…。
寄席でよくやられているのとはかなり違う。
はんちゃんが叔父さんのところに行こうとするんだけどお花ちゃんに「あそこは結構さびしいところで怖いわよ」と言われて「怖いよ…一人で行きたくないよ」とはんちゃん。「だったら私も一緒に行ってあげる」と言って手をつないで行くとか、またおじさんの家の戸を叩いて開けるのがおばさんだったりするのも他の人では聞いたことがない。
二階で二人きりになってからの展開もあっという間だったので、おお、これはやっぱり通しでやるんだな、と確信したところで、噺を途中で止めて「あの…これ通しでやるんですけど、後半はかなり陰惨です。」とさん助師匠。「話し始めて、ああこの感じはこれをやるところじゃなかったなと気づいたんですけど…やりますよ!もうやっちゃいます!でも続けてやるとしんどいので途中でちょっと違う噺をはさみます」と。

さん助師匠「もぐら泥」
8/8(月)1時からのラジオ深夜便でさん助師匠の「もぐら泥」が流れるらしい!
でも後から気づいたんですけどこの噺ってしぐさが多くてその間沈黙になっちゃうんです。ラジオに向かない噺でしたね…。今からやりますからこれを頭に入れて起きていられたらラジオ聞いてください。1時なので起きてるの大変かもしれませんが。そこまで頑張って起きていても私の落語を聞いたら寝ちゃうかもしれませんが。

そんなまくらから「もぐら泥」。
確かにしぐさと沈黙が多いので、これをラジオでやったのかとおかしくてしょうがない。
間に別の噺をはさんで上下通しでやるってどうよ?と一瞬思ったのだが、これすごくよかったかも。なんか笑ってその後の陰惨な展開への覚悟ができたというか。

さん助師匠「宮戸川(下)」
下は前に一度か二度聞いたことがあるだけだけど、聞いているとどんどん怖い顔になってしまう。浅草にお参りに行く途中で急な雷雨が来て小僧が店に傘を取りに行っている間に近くで雷が落ちてお花が気を失ってそこをならず者が通りかかる。最初は介抱してやろうと思った二人の男、じっくりとお花を見ているうちにひとりが「こんな女と一生涯寝ることはできない」と言い出し、二人で人気のないところに連れて行って介抱してからなぐさみものにしてやろうということになる。
お花の行方がわからなくなり探しても探しても見つからずついには諦めて弔いを済ませた半七。たまたま乗った船に同乗してきた男が自慢話のようにしてお花を二人で犯したあげく殺した顛末を話し始めるのだが、これがなんか今まで聞いたのとは印象が違っていた。
この男は前にお花の実家の船宿で船頭をしていて、きれいで誰にでも優しいお花のことを悪からず思っていた。自分が襲おうとしている女がお花だとわかり、お花さんにそんなことはできない!と思うのだが、そのお花がバカにしたようにケタケタと笑ったので、屈折した気持ちに火がついて殺してしまった、と。
ここまで聞いてこの男は自慢話をしたかったのではなく、自責の念にかられて精神の均衡を崩しているのだ、ということがわかる。

そしてこの話を半七が聞いたところで芝居調になるのだが、いやぁ…かっこよかった、これがもうびっくりするほど。さん助師匠のたらーと流れる鼻水も気にならなくなるほどに(笑)。
そしてサゲも変わっていて、これがまた独特の後味を残す。良かった、というだけじゃなくて、ちょっとぞくぞくっと…。

こういう陰惨な噺って好きじゃないんだけど、面白かった。やっぱりさん助師匠って文学的なんだな。そこに私は惹かれるのかな。