りつこの読書と落語メモ

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異国の出来事

 

異国の出来事 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

異国の出来事 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

 

★★★★★

 南仏の高級別荘地、自由奔放な妻はおとなしい従順な夫を召し使いのようにあしらっている。しかし…夫婦の中に潜む深い闇を描く「ミセス・ヴァンシッタート の好色なまなざし」、一人の青年を愛した二人の少女が三十年後にシエナの大聖堂で再会する「娘ふたり」他、父と娘のきまずい旅、転地療養にきた少年とその 母と愛人、新天地への家出、ホームステイ先での淡い恋、など様々な旅をめぐって静かな筆致で精密に綴られる普通の人々の“運命”と“秘密”の物語。日本オ リジナル編集による傑作選、全12篇収録。

トレヴァーってこうだったよなと思っているより甘く覚悟してるより苦い物語たち。
旅に出て違う自分のように振る舞ったり全く別の人間になれるような気がしたり…でもどこへいっても自分は自分でそこから逃れることはできない。

少女だったころに滞在した屋敷、そこの主人と一回だけ行ったドライブ。指を触れあうことさえなかった二人の間に生まれた火花が伝わってくる「版画家」。
これ、好きだなぁ。何も起こらなかったのにお互いの気持ちが確かにわかってそれを一生引きずって生きていく。習慣のように思い続けることの甘やかさと苦さと。


結婚生活の苦い出来事を描いた「家出」。
これはひどいなぁ。でもわかるなぁ。あってもおかしくない。こういうこと。謝り続ける旦那がリアルすぎてもう…。

父娘の反転が見事な「ザッテレ河岸で」。これもすごくよかった。
最初は娘の視点で父親のことを見ているんだけど、父親の視点から見るとまた違っていて。

 

どれも良かった。やっぱりトレヴァーはいい。