りつこの読書と落語メモ

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私のなかの彼女

私のなかの彼女

私のなかの彼女

★★★★★

男と張り合おうとするな。みごとに潰されるから。祖母の残した言葉の意味は何だったのだろう。全力を注げる仕事を見つけて、ようやく彼に近づけたのに、和歌と仙太郎の関係は、いつかどこかでねじ曲がった。心血を注いだ渾身の長篇小説。

読んでいてしんどくて作家でもない私がこんなにしんどいのだからこれを書く角田さんもしんどかったろうてと勝手に妄想しそれでも書く角田さんが好きだ!と叫ぶ、こういうめんどくさい読者がきっと私の他にもいるはず、と思う。

相手が自分より明らかに下でいるうちはいろんなことを教えたり応援したりするけど、相手が自分より上を行き出すと途端に面白くなくなって無自覚に相手の才能を潰そうとするこういう男っているいる!
もうそんなやつ蹴散らして進んでいきなさいよ!と思いながら、本当に途中イライラしながら読んだ。

しかし長年付き合った男をこんな風に解釈して悪意を浮かび上がらせるのも作家の業なのかもと思わせる描写もあって、角田さんはこんなふうにいろんなことを犠牲にして書いてきたのかなぁと思ったりすると、まあよくここまで書いたなぁ角田さんも相当すごいなぁと思うのだ。
世間知らずだった和歌が旅で目覚め「書きたい」という気持ちが強くなるところや賞を逃したり受賞にこだわったりするところなどは、以前読んだ角田さんのエッセイを思い出した。
作家を主人公にした時点で自伝的な要素があるのではと思われることは覚悟の上だろうし、それでもこれが私小説ではなく小説たるところに角田さんのドスコイ力を感じる。 すばらしい。