りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

瀧川鯉昇独演会第7回「・・・・・(ムムムムム)」

6/27(木)、道楽亭で行われた瀧川鯉昇独演会第7回に行ってきた。
前回行ってあまりにも最高だったので道楽亭での独演会は絶対行こうと思っていたのだ。
目の前で鯉昇師匠が3席たっぷりやってくれるなんて夢のようじゃないか!

・持参金
・日和違い
〜仲入り〜
明烏

今日もいつものように還暦、脱力、公務員オチの話から。
お見合いを80回したという話になって、17回目のお見合いの話に。

当時鯉昇師匠の師匠である春風亭柳昇師匠は女性に大人気で「柳昇ギャルズ」という女性ばかりのファンクラブもあったくらい。「柳昇ギャルズ」は20代のかわいい女性で編成されており、当時20代の鯉昇師匠にちょうどいいお年頃。
その中にひときわきれいな女性がいてモデルの卵だったのだが、柳昇師匠は彼女がお気に入りだったのでそばに置いておきたかったのか、鯉昇師匠にお見合いを薦めてきた。
あんなきれいな女性と?と思ったのだが、実際にお見合いをしてみると非常に質素な女性でデートでも喫茶店に入りたがらない。
じゃどこに入るかというとロッテリアで80円のミルクを飲む。
美しい上に質素で堅実で、こんな女性と一緒になれたら…と鯉昇師匠がほわわんとなっていると、彼女が自分には東京で世話になっている人がいるのでその人に会ってほしいと言われた。

その人の許しが出ないと結婚の話は進められないというので、ドキドキしながら訪ねて行ったのだが、それがなんと…某M氏。
立派なお屋敷で彼女はそこに住んでお手伝いのようなこともしているらしい。
行ってみるとM氏は不在でその父親が待っていた。

「あなたの紹介状を見せてもらいましたが、噺家というのは世間的に信頼できない職業ですね。彼女の両親にも相手が噺家というのは言いづらいし、倅としても受け入れられない。どうしても彼女と結婚したいのだったら、噺家をやめて私の会社に入ることが条件です」と。
柳昇師匠のところに行ってそう言われたと告げると、「そうか。噺家はそんなに信用できない職業か…。じゃお前、あの会社に入る?入らないと結婚できないんだろ?でもお前が噺家やめたら姉弟の縁もなくなっちゃうなぁ」と。
自分はようやく二つ目になれたし師匠とも別れたくないし噺家をやめたくはありません、と言うと、じゃ仕方ないなこの話はなかったことに、ということになった。

そのちょうど1週間後に、あの記事がでた。
それを見た柳昇師匠が「社会的に信用ならないのはおめぇのほうじゃねぇか!」と怒った、という話。

衝撃的な話を淡々とする鯉昇師匠。
「この17回目のお見合いを境に、私はお見合いに身が入らなくなりました」って、わはははは。
そして始めた噺が「持参金」。

不精な男のところに友だちが以前貸した5円を返してくれとやってくる。
仕事もないし借りるあてもないしで途方にくれていると、長屋の吉兵衛さんが訪れて、お前結婚する気はないか?と言う。
俺みたいなところに嫁に来てくれる人なんて言ったら傷があるんでしょ?というと、「おお、察しがいいな」と吉兵衛さん。
どういう傷なんだ?と聞くと、この女性、年は男より8つ年上で、体が横に広がっていて、眉毛がこう一本つながっていて、その上噂話が好きで…。
で、この女性に傷があってな。

「え?今のが全部傷じゃないんですか?」
「ああ、今までのは傷じゃないよ。傷だと思ったかい?この傷っていうのはね、この女性今妊娠8か月なんだ」
「いやぁさすがにそれはいやです、お断りします」と言うと「なんだ、いい話だと思ったんだがな」 どこがいい話なんだ?と言うと、「この人には持参金が5円つく」
「5円の持参金?ちょっと待って!じゃもらいます。その人もらいます」

この女性の造詣がたまらくおかしい。眉毛が一本つながっている理由を丁寧に説明するんだけど、それがおかしくておかしくて。
オチも含めてかなりブラックなんだけど、鯉昇師匠に毒がないのでまるで嫌な感じがしなくて、ただただひたすらおかしかった。

2つ目は「日和違い」という噺。これも初めて聴く噺だった。
ぼろ傘しか持ってないから雨が降るかどうか知りたいという男。降るならこの傘を持っていくより仕方ないが、降らないならこんな汚いものを持って歩きたくない。
天気予報ができるやつはいないかと探すと、同じ長屋に占いの先生が。占いの先生なら天気ぐらいわかるだろうと行ってみると…。

あっさりした噺だけど、なんかかわいくて面白かった。

仲入り後は、教わったけどめったにやらない噺をやります、と「明烏」。
確かに鯉昇師匠が若旦那の噺って…聞いたことがないような。
鯉昇師匠の「明烏」は、もてもての若旦那よりとほほな源兵衛と多助の方にスポットが当たっているような感じがして、そこが鯉昇師匠らしくてよかったな。