りつこの読書と落語メモ

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リスボンへの夜行列車

リスボンへの夜行列車

リスボンへの夜行列車

★★★★★

古典文献学の教師ライムント・グレゴリウス。五十七歳。ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語に精通し、十人以上の生徒と同時にチェスを指せる男。同僚や生徒から畏敬される存在。人生に不満はない―彼はそう思っていた、あの日までは。学校へと向かういつもの道すがら、グレゴリウスは橋から飛び降りようとする謎めいた女に出会った。ポルトガル人の女。彼女との奇妙な邂逅、そしてアマデウ・デ・プラドなる作家の心揺さぶる著作の発見をきっかけに、グレゴリウスはそれまでの人生をすべて捨てさるのだった。彼は何かに取り憑かれたように、リスボンへの夜行列車に飛び乗る―。本物の人生を生きようとする男の魂の旅路を描き、世界的ベストセラーを記録した哲学小説。

噛み砕くのに非常に時間のかかる本で私にしたら珍しくじっくり読んだ。

堅物で同僚や生徒から敬愛されている定年間近の教師グレゴリウスは、偶然手にしたアマデウというポルトガル人の書いた本に心を奪われる。
そこに書かれた言葉は彼の心を揺さぶり、今まで自分が信じて守ってきたものを放り出させるほどの力があったのだ。
アマデウについてもっと知りたいという思いからグレゴリウスは発作的にリスボンへの夜行列車に飛び乗る。
アマデウの足跡を追い関わった人々を訪ね彼の人生や思索をなぞりながら、自分自身の人生や生き方について考える。

アマデウの綴る言葉は哲学的で宗教的な下地のない私には理解が難しいものもあったが、彼の抱く矛盾や葛藤は理解できるし、自分自身に対してどこまでも誠実であろうとする姿勢は共感できるものがあったし、心に響く言葉も多かった。
人生の書として迷ったときや悩んだときに取り出して見直したいと思うような文章がたくさんあった。

哲学的な文章もあるが、物語じたいはミステリー仕立てになっていて、フィクションとしての魅力もたっぷり。
また最初はなんの魅力もないように描かれていたグレゴリウスだが、アマデウ所縁の人たちを訪ねる中で、彼らの悲しみに寄り添ったり一歩踏み込んでいったりもし、不器用だけど純粋で読み進めるほどに彼のことが好きになっていった。

世界各国でベストセラーとなったのも頷ける力作。