りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

サーカス象に水を

サーカス象に水を

サーカス象に水を

★★★★★

大テントの中に鳴り響く、大歓声と拍手。いよいよ目玉の演目、象の曲芸がはじまった。と、異常事態を知らせるマーチが場内に鳴り響く!逃げ惑う客、脱走する動物たち―そのとき、ぼくは見てしまった。「彼女」があいつを殺すところを…。それから70年。93歳の老人は、移動サーカスで過ごした四ヶ月間を語り始める。芸なしの象、列車から捨てられる団員、命がけで愛した女性、そしてサーカス史上に残る大惨事のさなかに起こった、あの静かな「殺人」のことを。

何不自由なく育ち前途洋々たる未来が待ち受けているかに思えたジェイコブの人生は両親の事故によって一変する。
偶然飛び乗った列車はサーカス列車。どこにも行くあてのないジェイコブは獣医を目指していたことが幸いしてサーカスの世界に身を置くことになる…。

ジェイコブが23歳の時に体験した移動サーカスで過ごした日々と93歳になって老人ホームで過ごす現在が交互に語られる。
ジェイコブはロージーという象と出会い心を通わせる。 そして恋する相手、マーリーナとの禁断の恋。

友情、恋愛、そして搾取と暴力。
ドラマティックなストーリーに夢中になって読んだ。
過去も現在も決して幸せとは言えないのだが、子どもと孫に恵まれ幸せな時代があったことをうかがわせる語りにほっとした。そして再生を感じさせるラストも素晴らしかった。